パリ,国立図書館の展示場に自動めくり巨大本が立てかけてあった。高さ2メートル,厚さ30センチはある本のページが次々と開いてゆく。だれもいないのに学者の肖像画や望遠鏡の図版そして解説の文章が現れては消える。どうやら古い天文学の教科書のようだ。
パリ国立図書館展示ブース |
本物の書物ではない。本の見開きの形をした木製の立体スクリーンだった。見開きページをだれかがめくり,その動きと本のページをビデオカメラに撮り,それをスクリーンに投影しているだけ。仕掛けは単純だが,その迫力に観客の眼が釘づけになる。
芸術作品だったら鑑賞するだけでもいい。だが科学技術の展示には見学者に解説を読ませる工夫が必要だ。その解説を古典的な書物の形式をとりながら,不思議で魅力にあふれる大きなページに編集すれば,読むというより楽しく眺める気分にさせられる。暗い展示会場で解説を読む苦痛を楽しみに変えるデザインにこれほど魅力的な解答があった、とは驚きだった。