皆さま、こんにちは。久しぶりにパートナー無しの岩城の独演会(笑)です。

 今回のテーマは「目利きになろう」です。

 いろいろな分野で「目利き」といわれる人たちがいます。専門的な知識を持ち、本物と偽物を見分ける自分なりのアルゴリズムを確立した人、とでも言いましょうか。

 聞くところによると骨董の世界では、新人を育てるためにはひたすら本物を見せるそうです。そうすることによって自然に真贋を見分ける眼ができる。すなわち「目利き」が誕生するというわけです。

 残念ながら、カテゴリーが多岐にわたり、また、玉石混交のウェブの世界では本物だけを見続けることは困難ですから、同じような目利き育成方法はとれません。しかしながら、自分が意識して良いサイトを見て、注意深く情報を集め、それを多面的に検証することによって「目利き」になっていくことは可能だと思います。

 一言で「目利き」といってもWebの世界は多様ですから、私なりの「目利き」というものを考えてみました。

技術やサービスの「目利き」になろう

 まず始めは技術やサービスの目利きになることから始めましょう。

 ウェブの世界の変化は早く、新しい技術や表現、サービスがめまぐるしく登場し、そしていくつかは消えてゆきます。後で良く考えてみると、最初から不要なものに振り回されていただけなのかもしれないと思うこともあります。

 もちろん、その技術が現在存在しないからといって不要なものだったとは言い切れず、その技術がベースになって発展し今の技術があるという重要な位置付けの技術だった場合もありますね。

 でも、できれば無駄なことはしたくありませんから、安易に新しい技術などに振り回されないための目利きになるのはどうすればいいのでしょうか。

 それには、とにかく新しい技術やサービスに先入観を持たずに、積極的に接してみるポジティブな姿勢が必要だと思います。そして、それらを評価する自分なりの基準を確立するということが重要です。

 そのためにはWebを活用して情報を得るのが一番で、技術関係の情報メディアやブログ、2ちゃんねるなどにも有益な情報が多くありますから、そういう情報に多く接しているうちに自分なりの目利きの基準が出来てくると思います。

 もう一つ、技術やサービスの「目利き」の立ち位置として忘れてならないのは言うまでもなくユーザー視点の重要さです。発信する側がいくら素晴らしいと思っていてもユーザーには興味を持ってもらえない場合もあるからで、そのためにも自分で多くのサイトに接していろいろな技術やサービスを試して、それを自身がユーザーとしての立場で評価できるようになることが必要です。

意味の「目利き」とはなにか

 最近ではコンテンツの表現もリッチになりました。

 動画やフラッシュの普及が大きく貢献しているわけですが、その技術を自社サイトに使う時に目利きであるかどうかが問われます。

 サイトのトップにフラッシュのムービーがあり、そばに恥ずかしそうにskipボタンが付いていることがよくあります。「お急ぎの方はどうぞ」というわけです。確かにコンテンツと関係の無いムービーが延々と続くのはたまらないものです。だからといってすべてを見る人の裁量に任せてしまうのは、それが意味のある存在だということを、自ら放棄していることにならないでしょうか。

 このフラッシュが「意味」を持ってコンテンツと密接に関係しているものであれば話が違ってきます。

 例えば情報をよく見てもらいコンテンツであれば、トップページからの誘導をスムースにするようなナビゲーション機能を持ったフラッシュが考えられるでしょう。

 また、ロゴや商品のキャッチフレーズを目立たせたいのであれば、そういうものを強調した表現で意味を持たせることができます。さらに、他のメディア、例えばTV-CMなどがあるのなら、メディアの連動性を高めたフラッシュの使い方があります。

 要するにトップページの「役割」を明確にして、それにふさわしい「意味」を与えてあげれば良いのではないでしょうか。ちょうど、映画や芝居に似ていますね。役どころに適確な俳優を選び、ふさわしい衣装で、演技をつけ、必要な役者が意味のある動きをする。そういう良い芝居をつくる監督や脚本家のような人が「目利き」ということになります。

 これは、資生堂の「マジョリカ・マジョリカ」のサイトです。今年のカンヌのサイバー部門の金賞を取りました。
http://www.shiseido.co.jp/mj/chapter14/index2.htm

 こちらは、ユニクロのグローバルサイトです。
http://www.uniqlo.jp/uniqlock/index.html?permalink=world

 表現テイストでは対照的な両サイトですが、どちらもデザインが良い芝居を演じ、ブランドにふさわしい「意味」を感じさせる世界観を持っています。制作はどちらも外注でしょうが、クリエーティブに意味を与え、適確なプロデュースができる「目利き」が企業内にいるということでしょうね。

体験が「目利き」をつくる

 最近日本語版がリリースされたせいもあって、セカンドライフhttp://jp.secondlife.com/が話題になっています。話題になっているという意味は、それ自体が「面白い、凄い!」ともてはやされ話題になっているということでもありますが、「巷で言われているほど凄いもんじゃないんじゃない?」、という論調もあるという意味もあります。これはどちらも間違いではないと思います。

 セカンドライフをメディアと考えるかどうかですが、ある程度の集客があり、サービスが展開され、広告もされているという意味ではメディアなのですね。 その場合には、多くの人が集まるマスメディアとして捉えると参加者数の「○○百万人」といった側面が強調されます。

 しかし一方で、その中のどのくらい比率の人達がアクティブに参加しているのかという視点から見れば、おそらくマスメディアとしての資格は無いでしょう。つまり、少数ではあるが積極的に参加する人達がいて、その人達が「体験」するコミュニティと考えると、それならそれで良いじゃないか、という事になります。

 使いにくさやPCへの負荷が話題になっています。これも多くの人が使うことを想定するとハードルが高いようですが、少数の習熟したユーザーはそれほど問題視していないと思います。

 私個人としては、その力以上にもてはやされてしまって、セカンドライフ自体が戸惑っているんじゃないかと思っているくらいです。(笑)

 当初は、少数のオタク(実は岩城も初期ユーザーでした!)のための深夜のエンターテイメントとしてスタートしたものが、急に脚光を浴びてしまったといったイメージですね。

 これからセカンドライフに参加しようとしている企業があるとすれば、これらの点を客観的に把握し、どういう目的で参加するのかを明確にしておく必要があります。良く分からずに「風評」だけに動かされては必ず失望する日が来るからです。

 こういうこともネットで情報を集め、自分で体験し判断することによって「目利き」としての判断力がついてくるわけです。私自身がセカンドライフを「体験」してみた事によって、皮膚感覚として正しい判断ができる「目利き」になったと思っています。

数字の「目利き」になろう

 インターネットがテレビや新聞などの他のメディアと異なる最大の要素は詳細なログが取れるということだと思います。

 しかし、ログは基本的には数字の羅列ですから、そこから役に立つ情報を掘り起こすノウハウが必要です。また、得てして必要な情報が大量のログに埋もれてしまって役立てられないこともあります。

 自社サイトの運営にあたっては、ログを他部門に提供するにせよ、あるいは自分で利用するにせよ、その中から必要な情報を選択し、分かりやすい指標に置き換えることができる「目利き」である必要があります。

 自分で仮説を立て、ログを分析し、それらを元に新たな仮説を立てて自らの知見を磨いていくことが重要です。

「目利き」のパートナーを見つける「目利き」になろう

 目利きになるために一番難しいのがクリエーティブの分野だと思います。私はデザイナーなのでこの分野の「目利き」としてはある程度のレベルにあると(勝手に)思っていますが、サイトの運営者の皆さんはいろいろなバックグラウンドをお持ちだと思うので、不慣れな面もあると思います。

 Webの世界は幅広いですから、クリエーティブに限らず多くの要素があり、それらすべてに「目利き」になるなどということは現実的には不可能です。ですから、そういう場合に必要になるのが相談相手で、あなたやユーザーの立場に立ってアドバイスをしてくれる良きパートナーを見つけることができる「目利き」になること、それが実は一番重要なのかもしれません。

真の「目利き」になろう!

 さて、あなたはどのような「目利き」になれるでしょうか?

 「目利き」になるということは、物事を正しく客観的に評価できるということでもありますが、一方で人の言うことを鵜呑みにするのではなく、自分なりの判断基準を持つということでもあります。

 そうです!これまでの私の言っていることも、鵜呑みにしてはいけないということなのですね。(笑)

 企業内に一人でも多くの真の「目利き」が育って、互いに切磋琢磨しながら仕事をすれば、将来の企業サイトのレベルが格段に上がっていくと思います。