2023年10月10日午前8時30分ごろに発生した「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の障害。全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は復旧に向けた対応を実施しているが、11日午前11時時点で解消のめどは立っていない。

 全銀システムは東京と大阪の2カ所のセンターで並行運転し、システムを構成する各種装置や通信回線などをすべて二重化してある。顧客に影響が出るシステム障害が発生するのは1973年の稼働以降、50年間で初めてとなる。

 今回、不具合が生じたと考えられるのは、金融機関が全銀システムに接続する際に使う中継コンピューター(RC)のプログラムだ。送金元の金融機関から送金先の金融機関に対して支払う「内国為替制度運営費(旧銀行間手数料)」の設定などをチェックする機能に不具合が生じたと見られる。

 きっかけは保守期限到来に伴い、10月7~9日の3連休中に14の金融機関で実施したRCの更改だった。全銀システムは平日朝から夕方までの取引を処理する「コアタイムシステム」と、平日夜間や土日祝日の取引を担う「モアタイムシステム」がある。今回、更改したのはコアタイムシステムで金融機関が接続するRC。モアタイムシステムには影響がなかった。

 コアタイムシステムのRCを更改した14の金融機関のうち、11の金融機関で不具合が発生した。コアタイムシステムのRCは各金融機関に2台ずつ設置されていたが、2台とも不具合が生じ、冗長構成がうまく機能しなかった。全銀ネットは10日午前9時30分ごろ、ベンダーのNTTデータとの協議を経てRCのシステムをリブートしたが、不具合は解消しなかったという。

全銀システムの構成。コアタイムシステムに接続する中継コンピューター(RC)を更改した14の金融機関のうち、11の金融機関で不具合が発生した
全銀システムの構成。コアタイムシステムに接続する中継コンピューター(RC)を更改した14の金融機関のうち、11の金融機関で不具合が発生した
(出所:全国銀行資金決済ネットワークの資料を基に日経クロステック作成)
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 全銀ネットは10日午後2時30分から代替手段による対処に着手。具体的には、全銀システムが備える「新ファイル転送」や、LTO(Linear Tape-Open)テープの持ち込みによって処理するようにした。モアタイムシステムを利用する金融機関は同システムを使っても送金を処理できるという。

 RCの不具合に見舞われた金融機関は10日早朝から異例の対応に追われた。ある金融機関の担当者は「代替手段への対応による負担に加え、お客様の不安解消や時間制限を踏まえた対応が窓口業務で必要になる。負担は相応にある」と話す。