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 社会や企業で重要な役割を担うミッションクリティカルシステムを支えるインフラをどう維持していくのか。クラウドという新しいインフラがあるにもかかわらず、基幹系システムの多くは従来のインフラ上に残ったまま。止めないことばかりが重視され、データセンターに技術者を常駐させ、人手で管理する昔ながらの運用が続く。基幹系に積極投資がなされ、最新技術が入り、インフラが光り輝く日は来るのだろうか。

 ミッションクリティカルシステムの将来を考える「M:C One協議会」に参加する、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の東智之フェロー、日鉄ソリューションズ(NSSOL)の大城卓フェローに本音で話し合ってもらった。

 M:C One協議会は富士通、NEC、日本IBM、CTC、SCSK、NSSOLなどのメンバーが参加し、ミッションクリティカルシステムをより良くするために、問題点の共有と解決策の議論を進めている。本連載は情報発信の一環である。

(聞き手:矢口 竜太郎=日経クロステック/日経コンピュータ)

お二人は共にフェローという肩書です。何をするのでしょうか。

東: 私は長年、情報システムの保守や運用といったところでサービスを提供する仕事をしてきました。その経験を生かし、クラウド、データセンター、セキュリティー、マネージドサービスについて最新技術の評価と新サービスの企画・推進を担当しています。さらに次世代エンジニアの育成、お客様や市場への情報発信も手掛けています。

大城: 長年培ってきた人脈を活用して、様々な最新技術を提供する企業に直接ヒアリングしたり、海外も含めて様々なカンファレンスに参加し技術情報を収集したりしています。所属先に合うと思える製品や提供者があればしかるべき部署の人間に紹介する。リサーチと言えば良いのでしょうか。特定のお客様あるいは特定のプロジェクトを担当しているわけではありません。

日本のミッションクリティカルシステム、特にそれを支えるインフラについてフェローならではの話をお願いします。顧客と直接やりとりするライン職ですと言えないことが色々あるでしょうから。

東:フェローになり、所属先だけの課題だけではなく、国内の同業他社が抱える課題にも積極的にかかわりを持ち、業界全体として顧客への対応力を高められないか、ということを意識しています。ミッションクリティカルシステムは悪しきレガシーあるいは塩漬けなどとネガティブなワードで語られがちですし、実際、課題多き領域です。M:C One協議会の呉越同舟、つまりライバル同士が商売の話はせずにミッションクリティカルシステムの将来を考え、言いたいことを語り、前向きに進めるようにしたい、という趣旨には大賛成であり、できる限り本音を申し上げます。

大城:フェローになったから言うことが変わるわけではないので一貫して感じていること、考えていることをお話します。

「クラウドは使えない、まだそれを言いますか」

M:C One協議会は基幹系と呼ばれるミッションクリティカルシステムをクラウドに移行するにはどうしたら良いかを検討してきたのでしょうか。

東:もっと広範囲に色々なことを議論していますが、クラウドをどう使うかについても相当話をしてきました。

 クラウドについては「まだそれを言いますか」と思うことが時折あります。最近になってもお客様から「このシステムはミッションクリティカルだからクラウドに移行できない。そのことを君たちは分かっているよね」と念を押されたという話を耳にします。

 移行できないとすると従来のやり方、技術者を運用の現場に張り付けて維持管理を24時間365日する、いわゆる「24×365」にならざるをえない。「本当にそれでいいのですか」と問い返したくなります。

大城:まったく逆の相談もあります。先日のM:C One協議会でも話題になりました。「このミッションクリティカルシステムをクラウドに載せたい。ただし現行通りで」といった話です。

東:「またそれを言いますか」と返したいところです。

現場の営業担当者としてはなかなか言えないでしょう。

大城:現行通り、とおっしゃるときの現行とは何かによるでしょう。主にアプリケーションを指すのでしょうが、運用は入っているのかいないのか。アプリケーションだけではなく運用ポリシーも一切変えずにパブリッククラウドに載せてくれと言うのであれば正直、困ります。

ちょっと分からなくなってきたのですがミッションクリティカルシステムはクラウドに載せたほうがいいのでしょうか、それとも無理なのでしょうか。