プロダクトマネジメントの感想~プロダクトオーナーはもっとチームの外のユーザに寄り添うべき
「プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける」を読んだ。
色々気づきがあったのでメモ。
「プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける」で気づきを得たことは3つある。
1つ目は、プロダクトオーナーはスクラムのチームとプロセスを外しても、スクラムに依存しない存在であり続けること。
この本では、いろんな観点や具体例から、プロダクトオーナーに必要とされる能力を描き出している。
プロダクトオーナーは、戦略に基づいてプロダクトの方向性を決めて、プロダクトを具体化する。
ただし、その実装方法まで関わらない。
2つ目は、悪いプロダクトマネージャーの典型例が面白いこと。
プロダクトマネージャーは、プロダクトのみにCEOではない。
ウェイターのように、ステークホルダーや顧客から何が欲しいのか注文を受け、開発リストを作るだけの人は、プロダクトマネージャーではない。
こういう人は、どうやって、優先順位を着けるべきか、という質問ばかりする。
それこそが彼の仕事なのに。
プロジェクトマネージャーの経験をたくさん持っている人が、その意識のままであっても、プロダクトマネージャーではない。
プロジェクトマネージャーは、いつ、という納期に責任を持つ。
プロダクトマネージャーは、なぜ、というプロダクトのビジョンに責任を持つ。
アジャイル開発では、プロジェクトマネージャーの責任はチームの中に分散され、管理責任そのものがメンバーに権限移譲されるので、プロジェクトマネージャーという存在はチーム内では不要になる。
プロジェクトマネージャーの経験が詳しくても、プロダクトマネージャーの仕事も役割も違うのだから、ビジネスや顧客、マーケット、組織を意識したマインドセットが必要になってくる。
3つ目は、SAFeを批判していること。
SAFeでは、プロダクトマネージャーはプロダクトオーナーのマネージャーであり、外部にいるユーザとの対話や管理に責任を持つ。
そして、プロダクトマネージャーは、プロダクトの要求やスコープを定義し、それをプロダクトオーナーに渡す。
SAFeのプロダクトオーナーは、内部に目を向けて、開発チームと一緒に、プロダクトバックログを作成して、その優先順位を決定することに注力する。
このやり方では、プロダクトオーナーはユーザーから切り離されて、顧客の問題を理解しようとしないから、効果的な解決策を提示できない。
プロダクトマネージャーからプロダクトオーナーへ、WF型開発のように、要求や要件が上から落ちてきて、それを詳細化していく役割に準じてしまう。
プロダクトオーナーは、そもそも、落ちてきた要件が本当に作るべきものなのか、検証することも許されていないからだ、と。
確かに、SAFeでは、複数のスクラムチームがアジャイルリリーストレインによって、リリース時期を同期させるように開発を進める。
そこでは、プロダクトオーナーもスクラムマスターも、アジャイルリリーストレインという満員電車の中に組み込まれていて、彼らが自発的に、自分たちが作っているもの自身を疑ったり、検証したりすることは推奨されていない。
そういう意味では、SAFeはトップダウン式の開発スタイルであり、スクラムの精神からズレている部分もあるのだろう。
スクラムを理解する時、プロダクトオーナーという役割は正直理解しにくいと思う。
スクラムマスターの役割は、アジャイル開発を進めていくと、そういうファシリテーターのような役割が必要になることは体験できる。
しかし、プロダクトオーナーの役割は、アジャイル開発以前に、顧客やマーケットの要求や組織のビジョンを元に、どんなグランドデザインを描いてプロダクトに落とし込むか、という別のスキルが要求されるので、難しいと感じる。
SAFeのプロダクトオーナーのように、上から滝のように落ちてきた要件を拾い集めて、優先順位付けすることが彼の役割ではないのだ。
プロダクトオーナーの役割が曖昧になりやすい理由は2つあると思う。
1つ目は、スクラムの誕生時には、スクラムマスターと開発チームは存在していたが、プロダクトオーナーが存在していなかった背景も絡んでいるのではないか。
実際、「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術」では、サザーランドがスクラムを生み出した時、スクラムマスターと開発チームでアジャイルに開発を進めた経験があったが、その後の経緯から、プロダクトオーナーが生まれた、という文章があった。
2つ目は、市谷さん著作「正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について」の通り、高速にアジャイルに開発できることと、ユーザの価値を最大限に活かすような製品をリリースすることは別次元の話だから。
アジャイル開発プロセスを実践できるチームであっても、プロダクトのビジョンやプロダクトの方向性が間違っていれば、ゴミを高速に出しているのと同じ。
正しいものを作ることと正しく作ることは違うよ、と。
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