相殺フィードバックを再考
システム思考で出てくる相殺フィードバックをメモ。
【参考1】
学習する組織 - ごろにゃ~の手帳(備忘録)-パーソナルMBA的な
(引用開始)
強く押せば押すほど、システムが強く押し返してくる
よかれと思って行った介入が、その介入の利点を相殺するような反応をシステムから引き出す現象である。
私たちは誰もが、相殺フィードバックに直面するのはどんな感じか知っている。
押せば押すほど、システムが強く押し返してくる――つまり、物事を改善しようと努力すればするほど、 さらに多くの努力が必要に思えてくるのだ。
(引用終了)
【参考2】
組織は「苦労」や「一生懸命努力すること」を美化してはいけない。 | Books&Apps
(引用開始)
MITスローン経営大学院のピーター・M・センゲは著書「学習する組織」においてこの現象を「相殺フィードバック」と呼ぶ。
多くの企業が、自社製品が突然に市場での魅力を失い始めるとき、相殺フィードバックを経験する。企業はより積極的な売り込みを推し進める―それが今までいつもうまく言っていたやり方だ。宣伝費を増やし、価格を下げるのである。
こう言った方法によって、一時的には顧客が戻ってくるかもしれないが、同時に会社からお金が流れ出ていくので、会社はそれを補うために経費を切り詰め、サービスの質(例えば、納期の早さや検査の丁寧さ)が低下し始める。
長期的には、会社が熱心に売り込めば売り込むほど、より多くの顧客を失うことになるのだ。
(中略)
私が見た現象は、サービスの質を改善せず、全員を「テレアポ」と「飛び込み」などの労働集約的な仕事に邁進させる、というやり方だったが、上と全く結果は同じであった。顧客は流出し、人材は会社を辞め、競合にシェアを奪われたのだ。
(引用終了)
相殺フィードバック: プログラマの思索でも書いたが、IT業界は相殺フィードバックによる問題発生が多い。
たとえば、過去に直したバグ修正が、今の障害の発生原因になっている。
たとえば、以前下した判断や意思決定が、今回の問題の発生原因になっている。
その時は良かれと思ったことが、実は場当たり的な対応であって、より一層症状を悪化させた。
僕の経験上、相殺フィードバックという症状は、ソフトウェア開発で非常に発生しがちと思う。
従来のソフトウェア開発の現場では、元請けのPMと下請けのプログラマが混成チームを形成するが、彼らは顧客と切り離されているので、顧客からのフィードバックを得るタイミングが最初と最後のフェーズしかない。
だから、現在の意思決定がどんな影響を及ぼすのか、想像できない。
僕は、相殺フィードバックをなくすには、システム思考に出てくる因果ループ図のような発想方法よりも、ランダム比較化実験を使って行動経済学の知見を導き出す手法の方が効果的ではないか、と直感している。
最初から、相殺フィードバックにはまらないような意思決定を下すのは難しい。
できれば、傷が浅い程度の失敗は許容できる時期に、2つの意思決定をランダム比較化実験で試して、人間の行動や集団行動がその後にどのような影響を与えるのか、を見極めた方がいいと思っている。
以前はそういう手法が使えなかったが、今はWebアプリはクラウド上で即座に作れるし、スマホ経由でランダム比較実験をしてみるのは易しい。
行動経済学の知見をソフトウェア開発やソフトウェア工学に活用するアイデアは試して見る価値があるように思える。
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