アジャイル開発の契約スタイルに関するIPAの報告書
アジャイル開発の契約スタイルに関するIPAの報告書が公開されていたのでメモ。
情報処理推進機構:ソフトウェアエンジニアリング アジャイル型開発を推進するための活動成果を公開
・非ウォーターフォール型開発WG活動報告書(概要資料) (PDF形式)[858KB]
・非ウォーターフォール型開発WG活動報告書 (PDF形式)[5.05MB]
IPAが昨今のアジャイル開発ブームをどう見ているか、を知る上でとても良い資料。
羽生田さん、平鍋さん、川端さんの名前も上がっていて、アジャイル開発の契約というど真ん中のテーマに対して報告書を書き上げている。
具体的には下記10種類の契約のうち、アジャイル開発に適しているケースはどれか、詳細に記述している。
実際にアジャイル開発の契約をすると仮定して、契約書も添付しており、中身はとても良いと思う。
①スプリント契約(Sprint Contract)
②定額請負型(Fixed Price & Fixed Scope)
③実費精算契約(Time and Materials)
④固定仕様、シーリングありの準委任契約
(Time and Materials with Fixed Scope and Cost Ceiling )
⑤シーリングありの準委任契約
(Time and Materials with Variable Scope and Cost Ceiling)
⑥段階的開発契約(Phased Development)
⑦ボーナス/ペナルティ条項(Bonus/Penalty Clauses)
⑧固定利益(Fixed Profit)
⑨Money for Nothing, Changes for Free(早期中止、変更無料)
⑩ジョイントベンチャー(Joint Venture)
当然、スプリント契約などのようにスコープを変化させやすい契約の方がアジャイル開発に適している。
この話を読んで、PMBOKの調達管理(契約管理)の契約の種類を連想した。
【PMBOKの調達管理】
PMP 契約関連
ASCII.jp:第5回 契約を間違えば、プロジェクトはうまくいかない プロジェクトと契約の深い関係について学ぶ|公式ガイドブックだけでは不十分!? PMP資格試験対策
[ThinkIT] 第9回:調達管理(外注管理) (1/3)
PMBOKの契約管理では下記の種類があり、上から順に購入者側に有利(リスクが低い)に並んでいる。
当然、一括請負契約よりも実費償還契約の方がアジャイル開発に適している。
FFP:定額契約または一括請負契約
FP-EPA:インフレ率の変化などに応じて価格を調整することができる契約
FPIF:購入者は契約で決められた上限価格内で、実際にかかったコストを納入者に支払う契約。
CPAF:実費償還契約のうち、納入者にコストとフィーが支払われるが、フィーは購入者が主観的に決定する。
CPIF:実費償還契約のうち、見積りコストとかかったコストの差額がインセンティブとして支払われる。
CPFF:実費償還契約のうち、許容コストと固定額のフィーが支払われる。成績に関わらず固定額のフィーが支払われる。
CPPC:実費償還契約のうち、かかったコストのあるパーセンテージがフィーとして支払われる。
3ヶ月先の景気が見えない現在では、B2Cの業務システムやSaaS、パッケージ製品の開発ではスコープをビジネスの状況に合わせて変化できる方がリスクが少ない。
スコープを固定して数年かけて開発するスタイルは正直難しくなってきている現実はあると思う。
購入者(エンドユーザ)と納入者(SI)の間でバランスが釣り合う契約スタイルは何か、をもう一度探る必要がある。
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