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2007/12/05

能力の罠(Competency Trap)

 3月末のSEA関西で「能力の罠(Competency Trap)」という話を聞いた。
 これは、「正しいプロセスを省いて誤った学習を積み重ねるうちに、能力が頭打ちになる」という内容のこと。
 この言葉は、プロジェクトリーダーの立場にいる人は身につまされないだろうか?

 実際、プロジェクトを切り盛りしていると、時間や人という制約の中で、本来踏むべきプロセスを省いてリリースすることはよくある。
 しかし、それをやり続けると、システムの品質が落ちるし、もっと重要なことは開発者の作業品質が落ちる。

 この症状は、日本のIT業界でよく見られる。
 
 「能力の罠」に陥る誘惑に駆られる時は多い。
 でも、数少ない経験を通じて、結局、正攻法しか解決策はないのだ、という気がしている。
 プロセスを省いて成功するうちに、手抜きの感覚を覚えて、最終的に、何も制御できなくなる。

 悪循環に陥った時、その状況を根底から覆さなければ何も変わらない。
 そして変化させた時、結局、「機能を新規に作るよりもバグを潰して品質を高めることを優先する」ような正攻法に戻している。

 状況を根底から覆す方法は、リソースの再配置か、プロジェクトのゴールそのものの変更という政治力のいずれかしか方法がないと思う。
 この状況では、リソース管理やリスク管理というプロジェクト管理のスキルそのものが問われる。

 また、ITシステム開発は、モノ作りと違って「人の能力は加速度的(速度じゃないよ)に成長する」ことを仮定しないと成り立たない。
 そのためには「人を成長させる環境作り」がすごく大事ではないか、と最近よく感じる。

 プロジェクトリーダーとしては、アサインする開発者に、プログラミングを経験させながら1ヶ月前よりも今日、昨日よりも今日、成長することを期待している。
 理由は、システムのアーキテクチャや仕様も慣れてくるだろうから、最終的にはもっと工数を短く出来るでしょ、と。

 でも実際は、同じような失敗を繰り返し、成長しない開発者も多い。
 そうすると、プロジェクトリーダーとしては、プロジェクト後半になると工数計算できなくなるからすごく苦しい。

 だからプロジェクトリーダーは、「人を育てる」ことを意識しなければ、人は成長しないし、チームの進捗も進まないと最近経験した。
 この時に必要な技術は、「プロジェクトファシリテーション」。
 チームのメンバーを信頼することが大事。
 つまり、チームメンバーにある程度の権限を与えるものの、最終的な責任はプロジェクトリーダーが負うということ。
 このとき、プロジェクトリーダーは、ディレクティブ・リーダーではなく、ファシリタティブ・リーダーになってくる。

 プロジェクトマネジメント(PM)とプロジェクトファシリテーション(PF)は、プロジェクトを回す両輪。
 PFP関西で聞いた講演では、PMはループ、PFは前進する方向なのだという比喩を聞いたことがある。
 その比喩がようやく実感できるようになってきた。

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