ポアンカレ
車中での出来事である。
一応断っておくと、この時私は不参加で、後で妻に聞いた話になるが、その光景がありありと目に浮かぶのはどうしてだろう……。
ウチの子と、その友達みんなで公園に出かけたという。 ポカポカ陽気でいっぱい汗をかき、満足の上帰路についたという。
みんな疲れて昼寝をしながら、静かな車内を運転している自分を想像していた妻の理想が崩れ去る事件が起きたのはその時だった。
「ポワン」
という間抜けな音がしたと思えば車内に立ちこめる異臭…その発生源はもちろん次男である(常習犯)。
静寂の中突如鳴り響いた誰が聞いてもその音と、間を置かずに充満してきた毒ガス…。 ほとんどの子が小学校低学年だと言えば、その後車内のにぎわいを想像するのはたやすいだろう。
ひとりの男子は、あまりの強烈な臭いに涙を流している。
弁当もたらふく食べていたので、心地よい振動に揺られて皆夢の彼方へ二時間待ったなしの環境をブチ破った本人は、悪びれる様子もなくノホホンとしている所が実に腹立たしい(妻談)。
このままでは収まりがつかないので急きょコンビニに寄る事にし、「ジュース何が良い!?」とリクエストを募れば皆口々に「ファンタオレンジ、CCレモン! 俺ハーゲンダッツ」と今の気分を語り出した。
その中で一人次女(小2)は何も答えなかったので、どうしたのかと聞いたところ、商品の具体名を言うのではなく、
「そうねえ…何かひんやりしたもの」
と答えたそうで。 今度は大人達がザワついたのだった。