作曲者 : BIZET, Georges 1838-1875 仏
曲名 : 交響曲 ハ長調「ローマ」(1861-71) 演奏者 : ロベルト・ベンツィ指揮 ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団 CD番号 : FORLANE/D22L1009 この曲を交響曲と表記するのは正しいのかどうかはわからないけれど、この作品はビゼーの交響曲として有名な17才の時の作品ではなく、「ローマの想い出、交響幻想曲」として1866年に完成し、1869年に初演された方で、ビゼーの頭の中にあった「ぼくの交響曲」とはこの曲の方だったというから、少々話がこんがらかる。 更にこの初演の時にはスケルツォは演奏されていない。この曲の完成以前に書かれたスケルツォを改訂していれたものだったが、スケルツォだけの初演がこの曲の完成のずっと前の1863年に行われ、不評を買ったことが作曲者の頭にあったため、全曲の初演のときに外したのだそうだ。 初演は概ね好評だったというが、更に1871年に改訂されて現在の姿となった。しかし、作曲者がそれを聞く日は永遠に来ず、作品は交響曲ではなく、何故か組曲「ローマ」というタイトルでの出版が行われてしまう。 だから冒頭のような言い回しとなるのだけれど、やはりビゼーはこの曲を交響曲として構想していたと思うし、交響曲として完成させたと私は考えるので、こう書くことにした。 ベンツィを憶えておられる方はどれくらいいるだろうか?いくらなんでも彼のデビュー当時は私も知らない。彼はなんと1948年にわずか11才で指揮者としてデビューしたのだった。1951年に公開された映画「栄光への序曲」で、貧しい少年が「天才少年指揮者」として成功していくのを主演して頂点に登り詰めた指揮者である。 これ以降、モノラル期からステレオ初期にかけてずいぶん録音されたようで、私が音楽を聞き始めた頃にも何枚か廉価盤で持っていた。 けれど、あらすじだけで絶対見たくなくなるような雑なサクセスストーリーに、「天才少年」と「指揮者」がくっついている違和感だけで、今の私は彼に対する興味は全くなくなるだろうが、まだ若造だった中学生、高校生の頃には、小澤征爾の本など読んでいつかは僕も指揮者になって「カッコ良く…」などと夢と妄想の区別がつかない時代にいたものだから、結構憧れたものだ。 さて、そんなものだから、彼は急速に忘れられてしまった。「少年」という価値を失うと同時に、彼の音楽が変わったわけではないのだろうに、その演奏を聞く機会も急速に減ったように思う。 この演奏は、そんな彼が1972年から1987年まで音楽監督をつとめたボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団との最後の頃の録音である。これを手に入れたのは多分20年以上前で、2004年にこのレーベルは倒産して一時消滅の危機にあったが、そのフォルラーヌ・レーベルの日本の発売元がポニー・キャニオンだった頃に購入したものである。こう見てみると、レコード業界の再編、特にクラシック系の再編のあまりの大きさに驚くばかりである。 そんなことをつらつら考えながら聞いていたのだけれど、なかなか良い演奏なのだ。私はプラッソンのものが好きだけれど、このベンツィも良い演奏で、時々とりだして聞いてみたくなる。でもこの演奏は現在では入手困難であるようだが、よもやと思って探してみたらiTuneでタウンロードできるようである。フォルラーヌ・レーベルの倒産の後、フランスの流通業者DOMの傘下へ入った時、資産をあちらこちらに売却してしまったようで、それらが巡り巡ってiTuneに出ているようである。 聞けなくなるよりずっとマシということだろう。 写真はスイス、ツィナールの谷からみたラ・ベッソの山容。このずっと向こうにマッターホルンがある…。
by Schweizer_Musik
| 2010-04-13 06:35
| CD試聴記
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