万能などでは無い
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科学の方法 (岩波新書 青版 (313))
著者:中谷 宇吉郎 |
再読中。何度目だろう。
やはり、最高の本。不朽の名著です。
で、Interdisciplinary: 科学の限界で引用した部分を、再び採り上げましょう。ここは、何度出しても、過ぎるという事が無い。※最初の段落はP14、次の段落はP16・17より引用
問題の種類によっては、もっと簡単な自然現象でも、科学が取り上げ得ない問題がある。これは科学が無力であるからではなく、科学が取り上げるには、場ちがいの問題なのである。自然科学というものは、自然のすべてを知っている、あるいは知るべき学問ではない。自然現象の中から、科学が取り扱い得る面だけを抜き出して、その面に当てはめるべき学問である。そういうことを知っておれば、いわゆる科学万能的な考え方に陥る心配はない。科学の内容をよく知らない人の方が、かえって科学の力を過大評価する傾向があるが、それは科学の限界がよくわかっていないからである。
世の中にはよく、科学者というものは、船が沈んだり、洪水が起きてしまったり、何か事故があったあとに出てきて、あれは原因はこうだった、ああだったということを、後からいう人間であって、ほんとうにその現場にいたら、やはり同じことだろうという人がある。気象警報を無視したり、分りきった治水策を実施しなかったりするようなことは、科学以前の問題であって、ここでは触れないことにする。本質的な問題としては、そういう非難は、ある程度まであたっている。しかしそうかといって、ちっとも科学を卑下する必要はない。科学というものには、本来限界があって、広い意味での再現可能の現象を、自然界から抜き出して、それを統計的に究明していく、そういう性質の学問なのである。
科学者は科学万能主義に陥っている、と言う人は、この部分を何遍も読みましょう。周りにそういう人がいたら、本書を貸してあげましょう。ブックオフで100円で買えます(これは喜ばしい事なのか、複雑だけど……買う側としてはありがたいですけれど)。
中谷博士は、50年も前にこういう事を書かれていたのですよね。しかも、「科学万能的なものの考え方」(P1)の風潮を懸念して。
実際、中谷博士のこの本は素晴らしいので、読むべきですね。科学万能主義云々と言う人には、取り敢えずこれを読んでから ものを言ってみませんか、と申し上げたいです。
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