真理対応説と真理整合説
全く論宅さんは適当な方ですね。
いや、それは解り切っているので、ここではその話ではなくて…。
えっと、論宅さんが援用している「真理」についての説。これについて、手許の文献に記述があるので、ちょっと引用してみます。FSMさんのエントリーを読む際の理解の助けになれば幸い。
●真理対応説と真理整合説
真理については,ふるくからふたつの代表的な説がある。ひとつは真理対応説(correspondence theory of truth)である。たとえばアリストテレスは,真理を定義して,存在するものを存在しないといい,存在しないものを存在するというのが虚偽であるのにたいして,存在するものを存在するといい,存在しないものを存在しないというのが真理である,とのべている。このように,命題(あるいは観念,言明,など)と,事実(あるいは出来事,事態,など)とが対応(correspond)するとき,その命題を真理とするのが真理対応説である。
もうひとつは,真理整合説(coherence theory of truth)であって,これは,ある命題が一般的にみとめられている他の多くの命題と整合的であるとき(すなわち矛盾しないとき),その命題を真理とする考えかたである。
ところで,真理にかんする以上ふたつの考えかたには,それぞれ難点がある。まず後者の真理整合説についていえば,整合性という真理の基準だけでは,たがいに整合的なさまざまな命題が得られたとしても,そうしたさまざまな命題は私たちの経験する事実(あるいは出来事,など)と関係をもたないことになる。しかし,少なくとも事実にかんする命題は、感覚的経験をのべる命題となんらかの仕方でかかわりをもたなければならない。そして感覚的経験をのべる命題は,いわば,感覚的な事実と対応する命題であるから,少なくとも私たちの経験する事実との関連を考慮するかぎり,真理整合説は真理対応説によっておぎなわれなければならないのである。
しかし真理対応説にも重大な難点がある。というのは,事実はすべて命題によって記述されなければ,事実として知られることがないからである。それゆえ一方に命題Aがあり,他方に事実aがあって,Aと a が対応しているかどうかを知るためには,一方の命題Aのほかに,他方の事実 a を記述する命題Bが必要となる。しかしその命題Bが,そもそも事実 a と対応しているかどうかを知るためには,a にかんするまた別の命題Cが必要となり,ここに無限後退が生じる。こうして,真理対応説にも難点がみとめられるのである。
●デューイ自身の「真理対応説」
しかしデューイはここで「対応」という言葉をひろく解釈して,この困難をのがれることをこころみる。すなわち,対応とは,鍵がその条件に合致するように「合致する(answer)」,いいかえれば鍵が鍵穴にぴったりおさまってその機能をはたすということであり,問題にたいして適切な解決をもたらすように「答える(answer)」ことであるという。要するに,対応とは問題を解決することだ,というのである。こうしてデューイはいう。「私が主張するような理論こそ,真理対応説とよばれる資格のある唯一の理論である。」
以上のように,真理についての考えかたにおいてデューイは,一方では,パースの影響のもとに,可謬主義に立脚した究極の真理にかんするパースの定義に賛同するとともに,他方では,ジェイムズの影響のもとに,真理は有用性(すなわちデューイの場合は問題解決の可能性)を解してはじめて真理としてみとめられることを主張したのである。
魚津郁夫 『現代アメリカ思想 ―プラグマティズムの展開―(’01)』
私自身、ちゃんと理解出来ている訳では無いのですが、資料の引用として、参考にどうぞ。
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コメント
こんばんは。
どうもありがとうございます。良い補足資料になります。
ところで、回答らしきエントリがまたあがってるのですが、おわかりにならないようで…。カテゴリーの混同をやってるのはニセ科学側なんですけどねえ。
掲示板の方では、なんだかスゴいモノを見てしまったような気がします。あれはマボロシだ、マボロシに違いない。(^^;;
投稿: FSM | 2008年12月24日 (水) 00:23
FSMさん、今日は。
真理観についてはこの本で読んだなあ、と記憶にありましたので、ちょっと書いてみました。
論宅さんは基本、他人の話を全く聞かない方ですからね…。
あれはマボロシです、マボロシ。
て言うか、あそこまであからさまなのもなかなか…。
投稿: TAKESAN | 2008年12月24日 (水) 12:53