脳トレ批判
『週間朝日』の脳トレ特集、読みました。
批判はごもっともでしたね。
川島氏の反論と言うか釈明と言うか、は、あれはどうなんでしょう。あれほど名前を出していて、あの説明か…。うーん。言い分は、解らないでもないのだけれど。氏がかなり慎重な物言いをされるのは、解っている事ですしね。しかし、DSの脳トレ(脳年齢)はグレーだ、と言っていましたね。片や任天堂は、川島氏の研究をベースにしていると明記している、と。
Interdisciplinary: ちょっと余計な…のコメントでFREEさんが書いて下さった事が、参考になりますね。提唱者がどこまで責任を負うか、どこまで慎重になるべきか。社会にどう情報が捉えられるか、という部分に、どこまで気を遣うべきか、等々。
ポイントは、消費者が、どこまで、
- 単なるゲームで無く、シリアスゲーム的な要素(つまり、認知機能の改善・強化等に役立つ)を認めていたか。
- 認知症の人に対する学習療法の効果とは別に、それ以外の人にも積極的な効果があるのだと思っていたか。
- 脳年齢なる概念が、単なるゲームのスコアの言い換えでは無く、ある程度でも科学的な根拠があるものと考えていたか。
ここら辺を認知していたか、という事でしょうね。もちろん、昔からゲームをやっている人は、脳トレが、クラシカルなゲームのエッセンスを取り出した様な構成のゲームだというのは解っているし、脳年齢が単なるスコアの言い換え(『やわらかあたま塾』の、脳の重さと同様に)だという事も、認識していたでしょうけれど、DSの脳トレは、今までにいなかった層にゲームを普及する役割を果たした訳ですね。つまり、比較的高年齢の人々(正確なデータは把握していないけれど)。そういう人達が、どのような認識を持って、脳トレを求めたか。ゲームという、そもそもライトな文化と捉えられるもののコンテンツだから、脳トレにも、「マジメな」機能を求めたのでは無く、まあ、ゲームやって、脳にそこそこ良いならやってみようかな、というくらいの気持ちだったのか、それとも、もっと積極的に、脳に良いものがゲームで手軽に出来るのか、と思ったか。ちなみに、私の知っている50代の人は、いわゆるボケ防止的な効果がある、と思っている風でした。
こういう場合の「科学性」というのは、とても難しいですね。単なる娯楽のコンテンツなのか、未科学を売りにした、グレーゾーンのものか、それとも、ニセ科学にもっと寄っているものなのか。ともかく、判断が困難なのは、確かでしょう。
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コメント
おはようございます。
週刊朝日は読んでないのですが、この記事の事はふれられていませんでしたか?
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/7064196.stm
英国の小学校で、「脳トレ」と「脳体操?」の比較実験を行ったところ「脳トレ」に効果が認められた、という内容です。
翻訳されてたはずだけど、見つけられないorz
投稿: thotc | 2007年11月12日 (月) 07:39
こんにちは、TAKESANさん。
週刊朝日の記事で重要な部分は「活性化」という用語の専門家の使い方と一般的な受け取り方の違いに言及してくれた事のように思いますね。
専門家が使う「脳のこの部分が活性化している」なんてのは、「その部分が動いている」ということに過ぎないわけです。単純に言うと「腕を屈伸させると上腕の筋肉が動いている」というのを「上腕の筋肉が活性化している」と言っているだけなんですね。このたとえで言うなら、筋肉が動いているという意味だけだから、運動を止めれば「活性化」も止まるし、そのことで筋肉が強くなるかあるいは(過負荷なら肉離れなどの)損傷をうけるかどうかは何も意味しない訳です。ところが、それを一般の概念において「活性化」になんだか様々な意味を持たせてしまう。運動を止めても良い状態を維持するかのような概念が生じている訳ですね。
なんとなく、その昔、赤外線の研究をやっていて、単に長い波長の赤外線にすぎないものに「遠赤外」という名前だけで、なにやら魔法の様な効果が謡われることにげんなりしたことを思い出したりしながら読みました。
投稿: 技術開発者 | 2007年11月12日 (月) 08:30
thotcさん、今日は。
あー、どうだったかなあ。確か、記事では、川島氏の研究についてのみの言及だったような。ちょっと、図書館で確認してみます。
------
技術開発者さん、今日は。
▽▽▽引用▽▽▽
「活性化」という用語の専門家の使い方と一般的な受け取り方の違いに言及してくれた事
△△引用終了△△
私も、そこがキモだと思いました。
「活性化」というと、いかにもポジティブな、望ましい変化のような意味合いが感じられますね。「賦活」なんかと較べると、その一般に与える印象は、まるで違うように思います。
こういうのは、ある程度の認識力があれば、すぐに思い当たるものなのですよね。それをどれほど意識していたかどうかは解らないですが、非常に微妙な所ではあります。社会科学的な観点で考える問題でしょうね。
川島氏も、脳が働く事と機能が高まる事は違う、と仰っています。ああいう媒体では、そういうちゃんとした発言をしますね。
投稿: TAKESAN | 2007年11月12日 (月) 12:14
こういうのは、他の社会心理学の分野などでも見られますね。
たとえば、「攻撃性(や暴力性)が高まる」といったものです。
それを受け取る人は、必ずしも(と言うより、大半だと思う)、攻撃性や暴力性の概念を、学術的なものだとは見ない訳で、タームと一般的な用法とにズレがあるのですよね。言ってしまうと、学者が真面目に、妥当な研究によって発表したのだとしても、世間では、「好き勝手」に捉えられる可能性がある。
------
意味不明なTBがあるので、後で消去します。
投稿: TAKESAN | 2007年11月12日 (月) 12:26
やはり、触れられていませんでした。
脳トレが、『Nature Neuroscience』で採り上げられた事は、載っていましたね。参照⇒http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=847
投稿: TAKESAN | 2007年11月12日 (月) 16:52
TAKESANさんこんばんは。
取り上げてる対象と効果がちがうんですね。ありがとうございます。
Wii-fitも同様の扱いを受けそうな気がしますが、任天堂ならきちんとフォローすると思います。
投稿: thotc | 2007年11月12日 (月) 22:18
個人的には、狭義のシリアスゲーム(教育目的等のために開発されたもの)だという事を明確に謳わない限り、それはやっぱり「ゲーム」なのだ、というのを周知した方がいいと思っています。
マンガでたとえると、歴史物のマンガなんかで、考証についてうるさく言う事は、あまり無い訳ですよね。何故なら、「マンガ」だから。民明書房がウソ八百だからといって、誰も文句は言わないですし。
で、これがたとえば、「漫画・日本の歴史」であった場合には、当然、厳密な考証が求められる訳ですね。初めから、教材として用いるのが想定されているので。
私は、武術系のマンガが好きなので、よく読むのですが、考証も何もあったものではないのですよね。でも、楽しめる。実在のものをヒントにしてフィクションを構成しているのだから、それでいいんだと思うのですね。
そういう意味で、メタに見るのか大切かな、と。それを教えるのも重要ですよね。
任天堂は、グレーっぽいやり方をしているのですが、それを、あまり真に受けてはならない、と。※ただ、任天堂の謳い方が許容範囲を超えている、という見方をする人は、いそうですけれど。
なんか、脳トレとは話が離れちゃいましたが。珍味かえる三昧さんへレスした時の記憶が、残ったままみたいです(笑)
投稿: TAKESAN | 2007年11月12日 (月) 23:48
諏訪理科大のおじさんが 脳トレブームなんてあとX年かで終わるよ と言っていましたが 長いですね
技術開発者さんの指摘したような考え方は思いもしませんでした
>それを一般の概念において「活性化」になんだか様々な意味を持たせてしまう。運動を止めても良い状態を維持するかのような概念が生じている訳ですね。
投稿: 躯 | 2007年11月14日 (水) 02:26
諏訪理科大のおじさんが 脳トレブームなんてあとX年かで終わるよ と言っていましたが 長いですね
技術開発者さんの指摘したような「活性化」が付与ってる考え方は思いもしませんでした
>それを一般の概念において「活性化」になんだか様々な意味を持たせてしまう。運動を止めても良い状態を維持するかのような概念が生じている訳ですね。
神経を使うことが活性化で 活性化しているとは使っているという事だと初めから思ってる人は・・・すくないんでしょうかね 人間の細胞で辞めてもいい状態を維持するものなんてあったんでしょうか
投稿: 躯 | 2007年11月14日 (水) 02:32
躯さん、今日は。
>諏訪理科大のおじさん
この方も、脳トレブームの一翼を担っておられますね。まあ、メディアに出る時は、もっと慎重にした方がいいと思いますけれど。
「活性化」の一般的に捉えられる意味は、概ね、ポジティブなものでしょうね。「いい状態になる」、なんかと同義に捉えられるというか。
投稿: TAKESAN | 2007年11月14日 (水) 12:45
今やってます⇒http://www.ox-tv.co.jp/noutele/index.shtml
怪しいチェックリストだなあ。
健康系の番組とか観てて思うのですが、あの手のチェックリスト、よく出せますよね。
あ、サイトにもありますね⇒http://www.ox-tv.co.jp/noutele/check.shtml
こんなんで、「脳の老化度チェック」だそうですよ。しかも、チェックの数が多いほど、脳の老化の危険度が少ない、と。なんじゃそりゃ。
バラエティだからいい、って事かな?
投稿: TAKESAN | 2008年6月 8日 (日) 16:28