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2006年9月14日 (木)

信じ方

水伝(に限らず、ニセ科学全般に言える事だと思いますが)を「信じている人」、と一口で言っても、その認識の内容には、ばらつきがあると思います。

友人に薦められた等して江本氏の本を読み、深く納得して、信仰心に近いものを持った人。何となくテレビを観ていたら、自分の好きな芸能人が出ていて、その人が水伝の話をしているのを聴き、「ふーん、そうなんだ。」と感じた人。綺麗な結晶が出来るかどうかは判らないが、音が影響を与えるかも知れないな、と感じる人。等々…。

水伝の主張を受け容れる人が皆、最初に挙げた例の様に、積極的に江本氏の本を読んで、その上で信じている、という訳ではありません。ですから、江本氏はこんな事まで主張しているのだよ、と教えれば、その主張を、荒唐無稽なものだと考え直す事もあると思うのです。例えば、水に「ありがとう」という言葉を聞かせれば綺麗な結晶が出来る、という説を受け容れる人でも、文字を「見せて」綺麗な結晶が出来る、という説には納得はしないかも知れませんし、文字を見せる事をも受け容れる人でも、「日本の神の名前を見せたら、結晶が御札の形になる」(書いてて頭が痛くなってきますが…)という主張を知ったら、疑うかも知れません。

これらを踏まえると、専門家(つまりプロの科学者)が追試をして反証し、その結果を広く公開する、という事も、決して無駄ではないのでは、と思います。勿論、江本氏等は、様々な理由を付けて、反論を行うでしょうけれども、「何となく信じている人」とか、「そういう事もあるかもなあ。」と思っている人達に対しての、有用な情報にはなるのではないか、と考えています。

ちょっと考えが甘いでしょうか?

それにしても、水伝は、自然科学的メカニズムを云々する前に、先ず人文・社会科学的に批判すべき内容だと思うのですが、そちらの専門家からは、批判の声は挙がっていないのですかね。多分、「知らない」のでしょうね。何を隠そう、私も、水伝を知ったのは、数ヶ月前ですからね(忘れていただけかも知れませんが。もっと前かも)。「ニセ科学」や「疑似科学」等に特別な関心を持って、アンテナを張り巡らせないと、なかなか詳しく知る機会は無いのでしょうね。私が関心を持ったのは、「ゲーム脳」や「血液型性格判断」について調べたのがきっかけです。

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コメント

きくちさんのブログでも議論に上っていましたが,水伝について科学の側が反証はすべきでないと思いますし,そもそも反証できないです。なぜなら江本氏は,(多分意図的に)精度の出ない方法で実験しているので,追試が不可能だからです。

私は悪徳商法ウォッチから水伝にスライドしたクチですが,1次段階の情報精度をわざと曖昧にしておくのは,マルチ商法で良く使われる手です。「儲かった(人がいる)」という結果だけを持ち上げて,「どのようにして」の部分は「がんばったから」とする。

江本氏の実験方法は,「がんばっている」にすぎないもので,実験としては不合格なんですね。
がんばれば良いってもんではない。

投稿: A-WING | 2006年9月14日 (木) 10:14

A-WINGさん、今日は。

このエントリー、きくちさんとapjさんのブログでの、一連の議論を読んだ上で、敢えて書きました。

確かに、江本氏側は、挙証責任を放棄しており、曖昧な実験で済ませていますから、厳密な意味での追試・反証は出来ませんね。もし、科学者が、江本氏の仮説を(江本氏の提唱する説の主だったものを拾って)検証しようとして実験し、どの様な結果が出たとしても、江本氏が自説を放棄しないのは、明らかだと思います。

ただ、私は今回、信じかけている人、入り口だけ信じている人、どうなんだろうなあ、と懐疑的に考えている人、等の側に立って考えてみて、そういう人達にとって、どの様な情報が有用であるだろうか、と考えた訳です。そこで、科学者が信頼出来る方法で行った実験の結果を示す事は重要なのではないか、と思ったのですね。apjさんのブログで、あんねさんという方がコメントされている内容に近いかも知れません。ながぴいさんの仰る事も、尤もなのではないかな、とも思いましたし。

とは言っても、自分の考えが纏まっている訳ではありませんから、今の所はこう考えている、という感じですね。なかなか難しい話です。

投稿: TAKESAN | 2006年9月14日 (木) 11:43

補足です。

多分私は、科学者が真面目に反証を試みた場合の弊害、というものを、具体的にイメージ出来ていないのでしょうね。そこの所が、ちょっと甘いのかも知れませんね。

投稿: TAKESAN | 2006年9月14日 (木) 12:54

私が反証するべきでなと考える理由は,科学はニセ科学に対して,「わかりやすさ」で負けているからです。
科学もニセ科学も,自説をわからせようとしている対象は「科学に疎い人」で,それら「科学に疎い人」は,「わかりやすさ」を求めている。
理想は,そういう人たちを「わかりやすさ」を求めないように教育することですが,知識を欲しないものに知識を与えるのは,難しい。
「科学に疎い人」にとっては,反証は,科学の「わかりにくさ」の印象をより増すだけじゃないかなと思います。

反証,つまり否定によって改心させるのではなく,肯定することによって受ける不利益を提案するのが,コストが少ないように思います。

投稿: A-WING | 2006年9月14日 (木) 18:14

A-WINGさん、今晩は。

成る程、確かにそうですね。きくちさんのブログで皆さんが仰っている様に、デモンストレーションとしての実験程度に留めておいて、後は、丁寧な説明を心掛けるのが良いのかも知れませんね。

もし、身近の人に、水伝の信奉者がいたら、自分はどう説得を試みるだろうな、なんて事も考えたりします(笑)

投稿: TAKESAN | 2006年9月14日 (木) 21:03

はじめまして.

> 江本氏はこんな事まで主張しているのだよ、と教えれば、その主張を、
> 荒唐無稽なものだと考え直す事もあると思うのです。

以前にも大災害にかこつけて「水に感謝しないから津波やハリケーンがくるのだ」的な発言をしていた江本氏ですが,最近では「中東で紛争が絶えないのは『死海』という名前の悪い波動のせいだ.名前を変えれば平和になるだろう」など言っています.
写真集だけ見てうっかり「いい話」だと思った人も,「なんじゃそりゃ?」となるのではないでしょうか…というか,これに賛同しちゃう人はビリーバーの域に入っていると思うので,そもそも説得が困難っぽい.
あまり根本的な解決じゃないですけど,対処法のひとつとして「妙な新興宗教っぽさ」を宣伝するのもありかな,と思います.イメージも重要ですから.

投稿: たかぎF | 2006年9月14日 (木) 23:55

たかぎFさん、初めまして。

 >最近では「中東で紛争が絶えないのは『死海』という名前
 >の悪い波動のせいだ.名前を変えれば平和になるだろう」
 >など言っています.
あ、さっき、このページを見ていました。「水からの伝言・子供版」(英語版)というのも完成したみたいですね…。

 >写真集だけ見てうっかり「いい話」だと思った人も,「なんじ
 >ゃそりゃ?」となるのではないでしょうか…
そうだと思います、信じ方にも段階があるのでしょう。伝聞で、こういう話があるらしいよ、というのを聞いただけの人なら、他の主張をみて、否定的に捉えるという事はあるでしょうね。
 >ビリーバーの域に入っていると思うので,そもそも説得が
 >困難っぽい.
信じる事によって、何らかの実害を被らなければ、考えを改める事は無いでしょうね。そもそも合理的(科学的)認識を放棄していますからね。

 >あまり根本的な解決じゃないですけど,対処法のひとつと
 >して「妙な新興宗教っぽさ」を宣伝するのもありかな,と思
 >います.イメージも重要ですから.
そうですね、倖田さんがテレビで語るのを聴くのと、実際に本を見せられるのとでは、捉え方が絶対違うと思います。勿論、説明は、丁寧にすべきでしょうけれど。信じているものを頭ごなしに否定される事は、嫌ですしね。

投稿: TAKESAN | 2006年9月15日 (金) 00:54

少々姑息な面はありますが,私の成功例の一つです。水伝を信じていたある小学校教師のブログで,一般人(笑)を装って,こういう質問をしてみました。

「これってつまり,結晶が汚くなる種類の音を人に浴びせることで,その人の精神状態をコントロールできるってことですよね。だとしたら,色んな意味で怖いですね。」

水伝を信じるようなメンタリティの持ち主には,「人の心をコントロールできる」=「音楽や会話を検閲する必要がある」という解釈は,受け入れられないはずです。でも,水伝を肯定すると,この解釈を肯定しなければならない。ここで葛藤が生じるわけですが,軽度の信者なら,これで効果が出るように思います。

実はこういう,「もし○○なら,XXになる」といった持っていき方って,SF者がよくやる遊びの一つなんですよね。というか,そもそもSFは,仮定を膨らませた結果起きる出来事の面白さがウリなわけで。

一般の人に「仮定することの面白さ」に気付いてもらえれば,ニセ科学に容易に騙されることも少なくなるんじゃないかと思います。
SFももっと売れるかもしれませんし(笑)

投稿: A-WING | 2006年9月15日 (金) 10:37

A-WINGさん、今日は。

矛盾や葛藤を認識させる訳ですね。これは面白いですね。

 >一般の人に「仮定することの面白さ」に気付いてもらえれ
 >ば,ニセ科学に容易に騙されることも少なくなるんじゃな
 >いかと思います。
確かにそうですね。

ある意味で、「素直にならない」事が重要かも知れません(笑)

投稿: TAKESAN | 2006年9月15日 (金) 13:07

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