アナニアシヴィリのこと(その3)
アナニアシヴィリを見たくてたまらなくなることがしばしばある。
YouTubeに上がっている彼女の演技の短いカットでも見たら、気持ちが休まる、というか昂る。
魅入られているとか、憑かれているといって良い。
そうやって何度も見ているうちに、どうしても書いておきたいことがでてきたので(その3)を書くことにした。
アナニアシヴィリの魅力は何がもたらしているのだろうか、アナニアシヴィリのこと(その2)では、加速度のある動きではないかと書いている。
それもあると思うけれど、四肢に動きがないシーンでもアナニアシヴィリには他のダンサーからは感じられない艶を感じる。
思うにそれは表情、とりわけ眼から来るものではないかと思う。
どの演目を見てもアナニアシヴィリはとても表情が豊かであるけれど、それが最もわかりやすいのは、私が視聴することが一番多い、"2017 Ananiashvili - Swan Lake - Odette & Odile" ではないだろうか。
この演技では、オデットの憂いを帯びた表情、一縷の望みをジークフリートにかける微かな期待の表情と、オディールの艶然として煽情的な表情が、見事に演じ分けられている。
なかでも印象的なのは、黒鳥のパ・ド・ドゥで、オディールがジークフリートの腕の中で、ジークフリートの様子を一瞬窺う表情である。
ほんの一瞬のことだが、その一瞬が視る者を捉えて離さない。
これと同じような印象をうけるシーンが思い出される。
ベルイマンの「魔笛」で、夜の女王がタミーノに娘の救出を頼むアリアで、タミーノの様子を窺う場面である。
艶美で王子を幻惑し、コントロールしようとし、そしてそれに屈服することを確認するために眼差しを向ける。完璧な悪女!
夜の女王は出ずっぱりではないのでこのシーン以上に王子を騙す場面はないわけだが、オディールはどんどんエスカレートし、観客はこのパ・ド・ドゥのあと、快楽の期待に有頂天になる王子の喜びの爆発を見ることになる。
私はこのようなおぞましい悪女をもう一人知っている。
前にも名前をあげたが、フォン・オッターのカルメンである。(スティルはリンク先かブログのGalleryをご覧ください)
エロティックといえば、絵の中にもそういうものがある。
ジョン・シンガー・サージェント「マダムX」。
フォン・オッターのカルメン、アナニアシヴィリのオディール、
そしてマダムX。
この世の煽情的な存在を代表する3人だ(と私は魅入られている)。
YouTubeに上がっている彼女の演技の短いカットでも見たら、気持ちが休まる、というか昂る。
魅入られているとか、憑かれているといって良い。
そうやって何度も見ているうちに、どうしても書いておきたいことがでてきたので(その3)を書くことにした。
アナニアシヴィリの魅力は何がもたらしているのだろうか、アナニアシヴィリのこと(その2)では、加速度のある動きではないかと書いている。
それもあると思うけれど、四肢に動きがないシーンでもアナニアシヴィリには他のダンサーからは感じられない艶を感じる。
思うにそれは表情、とりわけ眼から来るものではないかと思う。
どの演目を見てもアナニアシヴィリはとても表情が豊かであるけれど、それが最もわかりやすいのは、私が視聴することが一番多い、"2017 Ananiashvili - Swan Lake - Odette & Odile" ではないだろうか。
この演技では、オデットの憂いを帯びた表情、一縷の望みをジークフリートにかける微かな期待の表情と、オディールの艶然として煽情的な表情が、見事に演じ分けられている。
なかでも印象的なのは、黒鳥のパ・ド・ドゥで、オディールがジークフリートの腕の中で、ジークフリートの様子を一瞬窺う表情である。
ほんの一瞬のことだが、その一瞬が視る者を捉えて離さない。
ただしこれは2017年アナニアシヴィリ54歳の公演のもので、それ以前の公演では振付が違うのか、演じかたなのか、この一瞬の横目は確認できなかった。
そういえば前に54歳のアナニアシヴィリは妖艶さが増していると書いたけれど、こういう細かい演技もそれをもたらしているのかもしれない。
これと同じような印象をうけるシーンが思い出される。
ベルイマンの「魔笛」で、夜の女王がタミーノに娘の救出を頼むアリアで、タミーノの様子を窺う場面である。
艶美で王子を幻惑し、コントロールしようとし、そしてそれに屈服することを確認するために眼差しを向ける。完璧な悪女!
夜の女王は出ずっぱりではないのでこのシーン以上に王子を騙す場面はないわけだが、オディールはどんどんエスカレートし、観客はこのパ・ド・ドゥのあと、快楽の期待に有頂天になる王子の喜びの爆発を見ることになる。
私はこのようなおぞましい悪女をもう一人知っている。
前にも名前をあげたが、フォン・オッターのカルメンである。(スティルはリンク先かブログのGalleryをご覧ください)
ただしカルメンはドン・ホセを騙そうとしたのではないと思う。ドン・ホセを誘惑するのは奔放さであって、彼を陥れようというつもりはないのだが、奔放ということは、いくらでも気が変わるということでもある。(そこが悪女か)
エロティックといえば、絵の中にもそういうものがある。
ジョン・シンガー・サージェント「マダムX」。
おそらく多くの人が賛同すると思うのだけれど、裸でもなければ、媚態をとっているわけでもないのに、どうしてこの絵は見る者を狂わせるんだろうか。
(上のリンク先に、ストラップの書き直し前の写真あり)
フォン・オッターのカルメン、アナニアシヴィリのオディール、
そしてマダムX。
この世の煽情的な存在を代表する3人だ(と私は魅入られている)。
2017 Ananiashvili - Swan Lake - Odette & Odile (YouTube)