アナニアシヴィリのこと
答えは最初のダンサーである。
もちろん他の3人も素晴らしいダンサーで、その演技はほれぼれするのだけれど、最初のダンサーが艶めかしく、それにまいったわけだ。
この動画にはダンサーの名前が表示されていないので、一体誰だ? 名前は? とベッドのなかでYouTubeを検索して同じ動画を探し、ダンサーを確認しようとした。
件のYouTubeの動画は粗いから顔などで判断することは困難。
踊り方だけでなく舞台の様子や撮影角度などを手掛かりにして、この人だと確信した。
ニーナ・アナニアシヴィリというダンサー、ジョージアの人である。
名前がわかったので、YouTubeでこの人が出ている動画を検索した。
その結果、たくさんの動画がアップされていることがわかった。中でも、「白鳥の湖」、「ドンキホーテ」、「火の鳥」は全曲がアップされている(下にそれぞれのYouTube動画)。
「白鳥の湖」
「ドンキホーテ」
「火の鳥」
そもそもバレエが素敵だと思い、昨日の記事を書いたのは、アナニアシヴィリの演技に魅入られたからで、もし彼女を見てなかったら、こんなことにはなっていないかもしれない。
さて「白鳥の湖」の全曲がYouTubeにあったのでこれを見て、また他の有名(らしい)ダンサーのものも拾って部分部分を見て、アナニアシヴィリと比較した。
ネットの評を見る限り、スヴェトラーナ・ザハロワという人がかなり人気があるらしい。上にあげた4人のダンサーの1人でもある。この人の「白鳥の湖」もところどころつまんで見た。
ザハロワは、美形だが木彫りのような感じで、オデットもオディールもクールな美女という印象。オデットは何かをこらえているような風情で、オディールはクールビューティという印象。ジークフリートはオディールに惚れるというより、魔法にかけられるという感じがする。
対して、アナニアシヴィリは、オデットは自分の身の上を辛く思っている、儚げな存在として、オディールは蠱惑的に笑う誘惑者である。はっきりと演じ分けられている。
もちろんバレエのテクニックは両者とも凄いのだろうけれど、演技として考える場合、どちらが良いかは趣味の問題だと思う。そして、私の好みはアナニアシヴィリである。とりわけ初心者にとっては、アナニアシヴィリの明確で訴求力の強い演技のほうがわかりやすいと思う。
ただしこれほどオデットとオディールを違うものにしたら、ジークフリートが騙されるのは不自然かもしれない。オディールがオデットと瓜二つだからジークフリートが騙される(だから同じダンサーが演じる)わけだから、これだけ違った性格の2人だと、オディールをオデットと思って愛を誓うのではなく、オデットからオディールに乗り換えたようにも見える。
それでもこの落差がおもしろい、と私は思うけど。
というわけでアナニアシヴィリをネット上で追いかけたわけだけれど、問題は動画の品質。ザハロワなどの新しいものはそれなりの精細度がある動画だけれど、アナニアシヴィリはほとんど480pどまり。
比較的品位の高い動画は、2017年の白鳥の湖である。そして驚いた。
2017年といえばアナニアシヴィリは54歳だ。この年齢でもグランフェッテ32回もぶれることなく演じている。
そしてなにより妖艶さは増している。
蠱惑的な黒鳥から妖艶な黒鳥へ。(どっちが好きか、難しいところ)
こんなことを書いていると、また珍之助さまから熟女好きとからかわれそうだが。
(次はからかわれる原因となったフォン・オッターの「カルメン」からダンスシーン)
YouTubeにある動画の品位が低いのはしかたがないけれど、ディスクだったらどうなんだろうと検索してみた。
しかし、Blu-rayは「ニーナ・アナニアシヴィリの軌跡~最後のクラシック・ガラ~」というものしか見つけられなかったし、DVDでも「ドンキホーテ」(多分YouTubeにあるものと同じ公演)、「ジゼル」ぐらいしか見当たらない。VHSテープやLaser Discが出てくるのは何とも時代を感じさせる。
オペラの場合は、結構古い公演でもたくさんのソフトがあるのだけれど、バレエはどうして少ないんだろう? と不思議に思ったが、アナニアシヴィリのものしか探さないからそうなるわけで、新しいものを探すと実はたくさんある。
Amazonで"白鳥の湖 Blu-ray"で検索したら7種類あった。ザハロワのものもある。
今までこのダンサーのことを全く知らずに生きてきたのが残念だし、またもったいない。
昨日の記事に書いたようにバレエについての知識が乏しく、アナニアシヴィリの名前も知らなかった。山岸涼子「アラベスク」が書かれた頃(1971-75)はアナニアシヴィリ(1963年生まれ)が活躍する前だ。
一度ぐらい生の舞台を見てみたかった。