「どうぶつのタマタマ学」(その4)

丸山貴史(著),成島悦雄(監修)「進化のたまもの! どうぶつのタマタマ学」の4回目。

71mznegMp2L.jpg 昨日の記事で、次はタマタマを食べるをとりあげようと書いたが、その前に、一つ紹介しておきたい話がある。去勢に関する話題である。
 了翁道覚という江戸時代の僧侶は、数え年で33歳のときに、性欲を断つため、自らチンチンを切り落とす「羅切」を行いました。さらに、禅宗には、僧侶が女性に触れないように、指を砕いて燃やす「指灯」という荒行もありますが、かれはこの指灯も34歳のときに行ったそうです。了翁道覚が行った指灯の方法は、左手の小指を砕いて油布で覆い、その布に火をつけ、右手には線香を持ちながら『般若心経』を唱え続けるという常軌を逸したもの。その結果、かれの左手は焼け落ち、数年のあいだ羅切と指灯の傷に苦しんだそうです。
 ところが、了翁道覚が36歳のとき、夢の中に高僧が現れ、妙薬の製法を伝授されます。そこで、実際に夢で見た通りに薬を調合してみると、その妙薬のおかげで、羅切と指灯の傷は癒やされたそうです。その後、かれはこの薬を「万病錦袋円」と名づけて売り出し、莫大な利益を生み出します。しかしもちろん、これほどストイックな了翁道覚が、私利私欲に走ることはありませんでした。そのお金は、お寺に寄進したり、学校をつくったり、被災者に義援金を送ったり、孤児を養育したりと、慈善救済にあてたそうです。
はじめに
 
第1章 タマタマの基礎知識
1 タマタマとはなにか?
耳慣れないタマタマという言葉を使うわけ/生殖器って下品なの?/交尾を隠す動物もいる?/外性器と内性器/収納できる外性器/哺乳類はみんな包茎
2 タマタマの機能
タマタマは精子をつくる/精子と精液/雄性ホルモンをつくり出す/睾丸と金玉/それは私のおいなりさんだ
 
第2章 陰嚢の謎
1 陰嚢のある哺乳類
哺乳類の分類/陰嚢のない哺乳類もいる/もともとあったか、なかったか
2 陰嚢の役割
鼠径管を通って陰嚢へ/陰嚢ができたのはなぜ?/陰嚢は冷えやすい/血管による熱交換/本当に高温に弱いのか?/陰嚢をめぐるさまざまな説
3 鳥のタマタマ
鳥にもタマタマはある/チンチンを持つ鳥は少ない/卵とチンチン/鳥は陰嚢がなくても平気なの?/恐竜のタマタマ
 
第3章 タマタマを切ろう
1 動物の去勢
どうして切るの?/愛玩動物の去勢/食用動物の去勢/サラブレッドの去勢
2 ヒトの去勢
ヒトだって去勢する/去勢をして出世しよう!/宗教上の理由による去勢/美声を求めたカストラート/日本の去勢事情
 
第4章 食べものとしてのタマタマ
1 海の動物のタマタマ
わりとメジャーなマダラの白子/いろいろな魚の白子/卵巣か? 精巣か? ウニの生殖巣/そのほかの棘皮動物
2 陸の動物のタマタマ
意外とレア? 哺乳類のタマタマ/ブタのタマタマは出まわりやすい?/ウシのタマタマは「山のカキ」/レアな哺乳類のタマタマ/おうちでも食べられる?/わりとレアなニワトリのタマタマ/鳥のタマタマは小さい?
 
第5章 タマタマの雑学
1 タマタマの大きさくらべ
最大のタマタマの持ち主は?/最小のタマタマの持ち主は?/タマタマの大きさと繁殖スタイル/乱婚のものはタマタマが大きい/アンテキヌスの過酷な繁殖行動/タマタマが大きいと偉い?/同じ種でも大きさが変わる
2 いろいろな動物のタマタマ
陰嚢をなくした哺乳類/半水中生活をするアザラシ上科/カバのタマタマは移動する/おしりの穴に収納したビーパー/男勝りなプチハイエナのメス/オスも袋を持つ有袋類/穴を掘る哺乳類/中途半端に陰嚢をなくした哺乳類/タヌキの金玉は畳8枚分?/オスの体全体が陰嚢になる動物/タマタマだけで繁殖するパロロワーム
 
解説
参考文献
著者・監修者プロフィール
何とも凄まじい話で、たしかに大変な修練をされたのだと感心する一方で、「身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり」という教え(儒教だろうけど)とはどう折り合いを付けるのか、それ以上に、お釈迦様は苦行を否定されたと思うが、そのお釈迦様の教えを守る僧侶がこれで良いのかと思ってしまった。

自分には絶対できない言い訳かもしれないけど。


ところで本書では「やりまくりたい」人がパイプカットみたいな話も載せている。パイプカットも去勢の一種なのだが、およそ普通にいう去勢とは真逆の行為のようだ。

おそろしい話はこのぐらいにして、次は本書で一番の読み物ではないかと思う、「第4章 食べものとしてのタマタマ」から。

今までまったく意識していなかったウニの話。
卵巣か? 精巣か? ウニの生殖巣
 日本では、ムラサキウニやバフンウニが食用とされるウニ。いったいどの部位を食べているのかご存知でしょうか。ウニの表面には硬い殻と棘があり、食べられるのはもっぱらオレンジ色の生殖巣(生殖腺)です。この生殖巣を、卵巣だと思っている人もいるかも知れませんが、ウニには性別があります。そのため、わたしたちがウニを食べるときは、だいたい半分の確率でメスの卵巣かオスの精巣(タマタマ)を食べているわけです。
 棘皮動物に分類されるウニの体は、左右対称ではなく、上面にある肛門と下面にある口を中心に、5本の軸を持つ「五放射相称」という形状です。そのため、内部も5つのブロックに分かれており、ウニの殻を割るとオレンジ色の生殖巣が5つ入っています。
 ウニに性別はありますが、外見からオスとメスを見分けることは難しく、殻を割っても卵巣と精巣の見た目に違いはほとんどありません。ただし産卵期になると、卵巣の色がだんだん濃くなるので、赤に近い鮮やかなオレンジなのが卵巣、黄色に近いくすんだオレンジなのが精巣と、やや見分けやすくなります。ほかにも、卵巣は水分が多いので、形がくずれてべちゃっとしやすく、精巣は水分が少ないので、表面のつぶつぶがはっきりした状態を保ちやすいようです。そのため精巣のほうが輸送しても形がくずれにくく、おいしく食べられる期間も長くなります。
 この水分量の違いは、味にも影響するようです。水分の多い卵巣は、やわらかい食感を楽しめますが、水分の少ない精巣のほうが、身がしっかりしていて、味も濃厚でおいしいとされます。ウニの卸売業者(問屋)が行うセリでは、オスはメスの1.5倍くらいの値段がつくこともめずらしくありません。
この話を知ったら、寿司屋で板前さんに「このウニはオスですか、メスですか?」と聞きたくなるのでは(高級店はオスだけを仕入れるという話もある)。あるいは連れに訊いてみるのも良いかもしれない。蘊蓄の塊ですな。

ふと思った本書と無関係なこと。ウニのオスがメスの1.5倍で売れるとして、オス・メス区別なく売る場合はいくらの値付けにすれば良いんだろう。プロでないとできない選別作業のコストがかかってないわけだから単純にメスの1.25倍とも言えないのではないかと思うのだけれど。


タマタマを食べる話では、そんなに凝った料理とかは紹介されていない。そういうのがあるのかどうかもわからない。刺身や湯通ししたぐらいで食べるものが中心。やはり貴重なものだから、素材を味わおうということかもしれない。

ネットで調べると、睾丸料理世界選手権という催しが行われたことがあるらしい。
ところで、「たんたんたぬき」の歌で、私が子供の頃おぼえた歌詞では、煎餅と間違えて食べるのだが(これに性的意味は感じないが)。

ホーデンというのは話には聞くが、私は食べたことはない。
フグの白子も今まで食べたことはない。かろうじてタラ(マダラだろう)の白子は食べた憶えがある。ただ裏通りの一杯飲み屋みたいなところで、高級品という印象もなく、珍しいから食べたけど、おいしいかなぁ、という感じだった。

ホーデン、牛も豚も、珍しいのは、成熟するまで育成されるオスが少ないかららしい。豚は牛に比べて生育が早いことに加え、いろんな種類を掛け合わせて三元豚、四元豚を作るために、成熟オスもそれなりに飼われていることから、牛ほどは珍しくないらしい。
ちなみに本書によると、ホーデンを喜んで食べるのは女性が多いのだとか。男性は身につまされて食指が動かぬとか。

AVには女性が精液を飲み込むシーンがあるらしいが、そういう女性にすれば、ホーデンなどなんということもないのかもしれぬ。

ホーデンは、他の臓物とは異なり、それに付随する生殖器=隠しておきたいものというイメージがあるからだろう。この本の最初の記事に書いたとおりだ。

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