「どうぶつのタマタマ学」(その2)

丸山貴史(著),成島悦雄(監修)「進化のたまもの! どうぶつのタマタマ学」の2回目。

71mznegMp2L.jpg 昨日は肝心のタマタマの話は全く紹介できなかったので、仕切り直して2回目。

まずタマタマは性器だが、性器にには内性器と外性器という区分がある。人間のタマタマはぶらぶらしているけれど、袋に包まれているので、外性器ではなく内性器だという。
そこでタマタマ以外にさまざまな婉曲表現が存在する。「袋」「玉袋」などはその代表だろうが、本書では他の表現も紹介している。
 また、「袋」の転じた「ふぐり」も、陰嚢の別名の1つです。現代において、ふぐりは死語に近いと思いますが、生きものの世界ではまだ息をしています。たとえば、イヌノフグリ。これはシソ目の一年草ですが、果実がイヌの陰嚢のような形をしていることからの命名です。在来種のイヌノフグリは、外来種であるオオイヌノフグリに生息地を奪われ、あまり見かけなくなってしまいました。でも、果実の「ふぐり度」でいえば、イヌノフグリの圧勝です。
 意外かもしれませんが、「まつぼっくり」の由来も 「マツふぐり」です。 まつぼっくりを見て、即座にタマタマを連想する方は、性の達人クラスではないかと思います。でも、図1-122のような姿で落ちていたなら、たしかにふぐりのように見えなくもありません。
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 ちなみに、わたしは以前、『ねこ自身2匹め』(光文社)という雑誌(ムック)で、ネコの陰嚢の袋とじ企画をやらせていただいたことがあります。そのときの企画名は、「あなたのねこの鈴カステラを見せてください!」というもの。ここでいう「鈴カステラ」とは、もちろん陰嚢のことです。ただし、去勢されると中身がなくなるので、しぼんでしまいます。
はじめに
 
第1章 タマタマの基礎知識
1 タマタマとはなにか?
耳慣れないタマタマという言葉を使うわけ/生殖器って下品なの?/交尾を隠す動物もいる?/外性器と内性器/収納できる外性器/哺乳類はみんな包茎
2 タマタマの機能
タマタマは精子をつくる/精子と精液/雄性ホルモンをつくり出す/睾丸と金玉/それは私のおいなりさんだ
 
第2章 陰嚢の謎
1 陰嚢のある哺乳類
哺乳類の分類/陰嚢のない哺乳類もいる/もともとあったか、なかったか
2 陰嚢の役割
鼠径管を通って陰嚢へ/陰嚢ができたのはなぜ?/陰嚢は冷えやすい/血管による熱交換/本当に高温に弱いのか?/陰嚢をめぐるさまざまな説
3 鳥のタマタマ
鳥にもタマタマはある/チンチンを持つ鳥は少ない/卵とチンチン/鳥は陰嚢がなくても平気なの?/恐竜のタマタマ
 
第3章 タマタマを切ろう
1 動物の去勢
どうして切るの?/愛玩動物の去勢/食用動物の去勢/サラブレッドの去勢
2 ヒトの去勢
ヒトだって去勢する/去勢をして出世しよう!/宗教上の理由による去勢/美声を求めたカストラート/日本の去勢事情
 
第4章 食べものとしてのタマタマ
1 海の動物のタマタマ
わりとメジャーなマダラの白子/いろいろな魚の白子/卵巣か? 精巣か? ウニの生殖巣/そのほかの棘皮動物
2 陸の動物のタマタマ
意外とレア? 哺乳類のタマタマ/ブタのタマタマは出まわりやすい?/ウシのタマタマは「山のカキ」/レアな哺乳類のタマタマ/おうちでも食べられる?/わりとレアなニワトリのタマタマ/鳥のタマタマは小さい?
 
第5章 タマタマの雑学
1 タマタマの大きさくらべ
最大のタマタマの持ち主は?/最小のタマタマの持ち主は?/タマタマの大きさと繁殖スタイル/乱婚のものはタマタマが大きい/アンテキヌスの過酷な繁殖行動/タマタマが大きいと偉い?/同じ種でも大きさが変わる
2 いろいろな動物のタマタマ
陰嚢をなくした哺乳類/半水中生活をするアザラシ上科/カバのタマタマは移動する/おしりの穴に収納したビーパー/男勝りなプチハイエナのメス/オスも袋を持つ有袋類/穴を掘る哺乳類/中途半端に陰嚢をなくした哺乳類/タヌキの金玉は畳8枚分?/オスの体全体が陰嚢になる動物/タマタマだけで繁殖するパロロワーム
 
解説
参考文献
著者・監修者プロフィール
まつぼっくりの語源が、松のフグリとは知らなかった。無邪気に「まつぼっくりがあったとさ」と子供たちが歌っているが、語源を知ったら子供たちはきっと大騒ぎ(大喜び)するだろう。(女の先生は顔を赤らめるだろう)

次の話は多くの人が知っているに違いない。
 でも、ほとんどのオスが去勢されてしまっているというのに、どうやって子孫を残しているのでしょう。じつは、ごく少数のオスを去勢せずに「種牛」や「種豚」として育て、「種付け」しているのです。
 ただし、実際に交尾をさせることはまれで、ほとんどが人工授精で妊娠させています。これは、体が大きく肉質のよいオスの遺伝子を、多数のメスに分配するため。いちいち交尾をさせていては、移動などにコストがかかるだけでなく、オスの体がもちません。とくに、ブランド牛においては、100%が人工授精で、少しでも肉質がよくなるよう血統の管理が行われています。たとえば、オスの血統を大切にする兵庫県の但馬牛の場合、わずか6~7頭のオスが、1万5000頭ものメスに種付けしているそうです。
但馬牛の種牛が6~7頭というのは驚きだが、彼らは別にメスと交尾しているわけではない。
そしてその逆パターンが競走馬の世界だという。こちらは競馬というものをあまり知らない私には意外だった。
……競馬業界では、世界的に人工授精が認められていないのです。
 ウシやブタのような食用動物は人工授精させるのが一般的ですが、競馬業界では人工授精が禁止されています。これは、特定の「種牡馬 繁殖用のオスのウマ)」の子どもばかりになることを防ぐためです。ウマの精液量は多く、1回の射精で30mlも出します(ヒトは2~6ml)。これを冷凍保存しておけば、種牡馬に負担をかけず、いくらでも牝馬に種付けすることができるわけです。そのため、もし人工授精を認めてしまえば、ごく少数の強いウマばかりに種付けが集中し、同期はすべて異母兄弟という事態にもなりかねません。すると、血統の多様性が失われ、競馬がおもしろくなくなるのです。
だから当て馬というのが必要なわけだ。
種牡馬がどれだけの子を成すかといえば、相当回数の交尾をしても必ずしも妊娠出産には至らないらしいから、但馬牛のようにはいかない。

ところが自然界にはもっと大変な例があるそうだ。
アンテキヌスの過酷な繁殖行動
 アンテキヌスという小型の有袋類は、生まれた翌年に交尾をして死ぬという、昆虫みたいな生き方をしています。でも、1歳の誕生日を迎えられずに死ぬのはオスだけ。しかも、その死因となるのは、交尾のしすぎです。
 アンテキヌスは冬になると、2週間ほどの繁殖シーズンを迎えます。 オスはこの期間、昼も夜も眠らずに活動し、メスを探しては交尾し続けるそうです。繁殖スタイルは、オスもメスも複数の相手と交尾をする乱婚。でも、メスがなかなか見つからないときには、オスは1回の交尾に2時間もかけて、メスがほかのオスと交尾しないようガードすることもあります。
 ひとたび交尾が終わっても、オスは不眠不休でメスを探しまわり、交尾のたびに大量の精子を放出しますから、体力の消耗は半端ではありません。そのため、ストレスは限界に達しますが、「副腎皮質」から「コルチゾール」というホルモンを大量に分泌することで、ストレスを軽減できます。さらに、コルチゾールには脂肪や筋肉を分解してエネルギーに変える働きもあり、オスたちはまさに身を削りながら交尾を続けるのです。その結果、繁殖シーズンが終わるころには、ほぼすべてのオスが力尽きて死んでしまいます。
 一方、メスには、おなかの袋で子育てをするという大役がありますから、交尾が原因で死ぬようなことはありません。メスはだいたい2~3年は生きるので、翌年の繁殖に参加することもできます。
交尾のしすぎで死ぬとは……。
人間なら「死ぬー、死ぬー」と言うのはメス(ただし死んだりはしない)なのに。

性行為でオルガスムに達してメスがしばらく動かなくなることがあるのは、性交後すぐにメスが直立二足歩行すると、せっかくの精液が子宮内にとどまりにくい(四本足ならその心配はない)からだと、モリス「裸のサル」に説明があったように思う。


おやおや、今回もタマタマの婉曲表現のこととか、性行動の話ばかりで、肝心のタマタマそのものの話が出てこない。
焦らすようだが、それについては次稿で。

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