「どうぶつのタマタマ学」(その3)
丸山貴史(著),成島悦雄(監修)「進化のたまもの! どうぶつのタマタマ学」の3回目。
今日こそタマタマそのものに迫る話題を紹介しよう。
まずはタマタマの大きさについて。
この差は、生殖戦略の違いのようだ。セミクジラは大勢のオスがメスを取り囲み輪姦するのだそうで、そうなると精子間競争は苛烈になるだろう。
ところで、上の記述に続けてタマタマの大きさについて、次の計算式が掲載されている。
というか睾丸の大きさは、その生物種の生殖戦略に依存する。本書にもあるが、睾丸の大きさ(すなわち精子の量)は、交尾後のメス体内で起こる精子間競争の激しさに関連する。ボノボのような乱婚する種においては睾丸が大きく、おおむね群れでメスを独占できるゴリラでは小さい。人類はこの中間的な生殖戦略をとっているらしく、体重に対する睾丸の重さは、ボノボが最大、次いでヒト、そしてゴリラとなる。
なお、78.5tのセミクジラが972kgのタマタマ(2つ合わせて)を持っていることを、人間に置き換えたら(つまり体重比が同じとしたら)、80kgの男性のタマタマ1個が500mlのペットボトルに相当すると書いている(972/78500×80=0.991)が、竿の下に500mlのペットボトル2本をぶら下げていると書いたほうがおもしろかったのでは。
本書では、もっともタマタマの小さい生物として、おそらくホソハネコバチではないかとしている。最小のオスは体長0.139mm、体重0.002mgと推計されていて、この小ささからタマタマも最小ではないかとしている。
そしてこのハチのオスの哀れさは昨日書いたアンテキヌス以上のものかもしれない。
本書の中でとくに惹かれたのは、実は「第4章 食べものとしてのタマタマ」なのだけれど、これについて書くとますます長くなるので、次の稿で。
今日こそタマタマそのものに迫る話題を紹介しよう。
まずはタマタマの大きさについて。
最大のタマタマの持ち主は?
世界で一番大きなタマタマの持ち主は、どんな動物でしょう。おそらくみなさんが想像した通り、ヒゲクジラの仲間です。タマタマの大きさは体の大きさにあるていど比例しますから、当然かもしれませんね。
ただし、最大のタマタマを持つのは、最大の動物としておなじみのシロナガスクジラではありません。セミクジラは平均体重でいえばシロナガスクジラの半分以下ですが、シロナガスクジラよりもはるかに重いタマタマを持っています。セミクジラのタマタマの最大記録は、なんと2つあわせて972㎏。このセミクジラのオスは体重78.5tだったそうですが、それにしても大きすぎます。これはヒトでいうと、体重80㎏の男性のタマタマ1つが、500mlのペットボトル1本というサイズ感です。
なお、シロナガスクジラでは、体長23~26mの個体でタマタマの重さはだいたい30~60kgだったそうである。世界で一番大きなタマタマの持ち主は、どんな動物でしょう。おそらくみなさんが想像した通り、ヒゲクジラの仲間です。タマタマの大きさは体の大きさにあるていど比例しますから、当然かもしれませんね。
ただし、最大のタマタマを持つのは、最大の動物としておなじみのシロナガスクジラではありません。セミクジラは平均体重でいえばシロナガスクジラの半分以下ですが、シロナガスクジラよりもはるかに重いタマタマを持っています。セミクジラのタマタマの最大記録は、なんと2つあわせて972㎏。このセミクジラのオスは体重78.5tだったそうですが、それにしても大きすぎます。これはヒトでいうと、体重80㎏の男性のタマタマ1つが、500mlのペットボトル1本というサイズ感です。
この差は、生殖戦略の違いのようだ。セミクジラは大勢のオスがメスを取り囲み輪姦するのだそうで、そうなると精子間競争は苛烈になるだろう。
ところで、上の記述に続けてタマタマの大きさについて、次の計算式が掲載されている。
【哺乳類の体重とタマタマの重さの関係】
0.035×体重0.72=タマタマの総重量 (単位はg)
ただし、133種を調べて得られた近似式のようだが、かなりばらつきがあって適合度はあまり良くない。本書に掲載されている具体的な数値もあげておく。0.035×体重0.72=タマタマの総重量 (単位はg)
はじめに | ||
第1章 タマタマの基礎知識 | ||
1 タマタマとはなにか? | ||
耳慣れないタマタマという言葉を使うわけ/生殖器って下品なの?/交尾を隠す動物もいる?/外性器と内性器/収納できる外性器/哺乳類はみんな包茎 | ||
2 タマタマの機能 | ||
タマタマは精子をつくる/精子と精液/雄性ホルモンをつくり出す/睾丸と金玉/それは私のおいなりさんだ | ||
第2章 陰嚢の謎 | ||
1 陰嚢のある哺乳類 | ||
哺乳類の分類/陰嚢のない哺乳類もいる/もともとあったか、なかったか | ||
2 陰嚢の役割 | ||
鼠径管を通って陰嚢へ/陰嚢ができたのはなぜ?/陰嚢は冷えやすい/血管による熱交換/本当に高温に弱いのか?/陰嚢をめぐるさまざまな説 | ||
3 鳥のタマタマ | ||
鳥にもタマタマはある/チンチンを持つ鳥は少ない/卵とチンチン/鳥は陰嚢がなくても平気なの?/恐竜のタマタマ | ||
第3章 タマタマを切ろう | ||
1 動物の去勢 | ||
どうして切るの?/愛玩動物の去勢/食用動物の去勢/サラブレッドの去勢 | ||
2 ヒトの去勢 | ||
ヒトだって去勢する/去勢をして出世しよう!/宗教上の理由による去勢/美声を求めたカストラート/日本の去勢事情 | ||
第4章 食べものとしてのタマタマ | ||
1 海の動物のタマタマ | ||
わりとメジャーなマダラの白子/いろいろな魚の白子/卵巣か? 精巣か? ウニの生殖巣/そのほかの棘皮動物 | ||
2 陸の動物のタマタマ | ||
意外とレア? 哺乳類のタマタマ/ブタのタマタマは出まわりやすい?/ウシのタマタマは「山のカキ」/レアな哺乳類のタマタマ/おうちでも食べられる?/わりとレアなニワトリのタマタマ/鳥のタマタマは小さい? | ||
第5章 タマタマの雑学 | ||
1 タマタマの大きさくらべ | ||
最大のタマタマの持ち主は?/最小のタマタマの持ち主は?/タマタマの大きさと繁殖スタイル/乱婚のものはタマタマが大きい/アンテキヌスの過酷な繁殖行動/タマタマが大きいと偉い?/同じ種でも大きさが変わる | ||
2 いろいろな動物のタマタマ | ||
陰嚢をなくした哺乳類/半水中生活をするアザラシ上科/カバのタマタマは移動する/おしりの穴に収納したビーパー/男勝りなプチハイエナのメス/オスも袋を持つ有袋類/穴を掘る哺乳類/中途半端に陰嚢をなくした哺乳類/タヌキの金玉は畳8枚分?/オスの体全体が陰嚢になる動物/タマタマだけで繁殖するパロロワーム | ||
解説 | ||
参考文献 | ||
著者・監修者プロフィール |
体重80kgの男性の場合、この式にあてはめると約119gとなるが、日本人のタマタマは30gくらい、アフリカ系の男性でも50gくらいなので、ヒトのタマタマはやや小さいといえます。一方、体重78.5tのセミクジラのタマタマは、この式によると約17kgになるので、972kgというのはけた違いの重さです。
というか睾丸の大きさは、その生物種の生殖戦略に依存する。本書にもあるが、睾丸の大きさ(すなわち精子の量)は、交尾後のメス体内で起こる精子間競争の激しさに関連する。ボノボのような乱婚する種においては睾丸が大きく、おおむね群れでメスを独占できるゴリラでは小さい。人類はこの中間的な生殖戦略をとっているらしく、体重に対する睾丸の重さは、ボノボが最大、次いでヒト、そしてゴリラとなる。
近似式を作る目的が正確な推定にあるのなら、生殖戦略の違いをパラメータに入れるべきだろう。
なお、78.5tのセミクジラが972kgのタマタマ(2つ合わせて)を持っていることを、人間に置き換えたら(つまり体重比が同じとしたら)、80kgの男性のタマタマ1個が500mlのペットボトルに相当すると書いている(972/78500×80=0.991)が、竿の下に500mlのペットボトル2本をぶら下げていると書いたほうがおもしろかったのでは。
本書では、もっともタマタマの小さい生物として、おそらくホソハネコバチではないかとしている。最小のオスは体長0.139mm、体重0.002mgと推計されていて、この小ささからタマタマも最小ではないかとしている。
そしてこのハチのオスの哀れさは昨日書いたアンテキヌス以上のものかもしれない。
最大に比べると、最小のデータは不明なことが多く、世界で一番小さなタマタマを持つ動物はなんなのか、知られていません。でも、地上の動物限定であれば、おそらくホソハネコバチの仲間 (Dicopomorpha echmepterygis) でしょう。かれらはチャタテムシの仲間の卵に産卵する寄生バチですが、知られる限り世界最小の昆虫です。
このハチのメスは、生まれたときから寄生しているチャタテムシの卵の中で成虫になると、オスを探して飛んでいきます。そして、オスのいる別の卵に侵入し、その中で交尾をすませると、さらに別の卵に産卵するため、飛んでいくのです。一方、オスほ交尾を終えると、生まれた卵から出ることなく死んでしまいます。
オスは生涯、寄生先の卵から出ることがないので、成虫になっても羽や複眼がなく、メスにしがみついて精子を送りこむことしかできません。そのため、移動に使う筋肉やエネルギーが不要になり、メスよりもさらに小さくなったようです。オスの最小記録は体長0.139㎜ですが、これはヒトの卵子の直径と同じくらい。体重は0.002mg以下と推測されていますから、そのタマタマが世界最小クラスなのは間違いないでしょう。
このハチのメスは、生まれたときから寄生しているチャタテムシの卵の中で成虫になると、オスを探して飛んでいきます。そして、オスのいる別の卵に侵入し、その中で交尾をすませると、さらに別の卵に産卵するため、飛んでいくのです。一方、オスほ交尾を終えると、生まれた卵から出ることなく死んでしまいます。
オスは生涯、寄生先の卵から出ることがないので、成虫になっても羽や複眼がなく、メスにしがみついて精子を送りこむことしかできません。そのため、移動に使う筋肉やエネルギーが不要になり、メスよりもさらに小さくなったようです。オスの最小記録は体長0.139㎜ですが、これはヒトの卵子の直径と同じくらい。体重は0.002mg以下と推測されていますから、そのタマタマが世界最小クラスなのは間違いないでしょう。
本書の中でとくに惹かれたのは、実は「第4章 食べものとしてのタマタマ」なのだけれど、これについて書くとますます長くなるので、次の稿で。