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2010/09/24

trial:前田検事の改ざんを知っていた者は村木氏の無実を知っていたのでは?

前田検事によるファイル更新日改ざんは、動機等はともあれ、本人も周囲も村木氏の初公判の辺りから知っていたということがハッキリしてきた。

前田検事は、これを遊びでやったとか、過失だったとか言い訳した挙句、相変わらずの発表ジャーナリズムによれば故意にやったことを認めさせられたらしいが、重要なことはその動機や意図ではない。

少なくともこの改ざんを行った時点で、偽の証明書を作成した日が検察の描く村木氏の偽造指示の日より前であることを前田検事は十分認識していたし、少なくとも改ざんの事実を知っていた特捜部副部長・部長、その他前田検事とトラブルになったという公判立会検事も、少なくとも検察の構図では犯罪が成り立たないことを認識していたことになる。それにも関わらず公判を維持し、求刑までしてきた。この点が最重要の問題であろう。

最高検の逮捕容疑は刑法104条の証拠隠滅罪である。

(証拠隠滅等)
第百四条  他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

そこで、ファイル更新日書き換えが故意にされたのかとか、証拠として使用しなかったことを同評価するとかが問題となっているが、そのような些細な点よりも、無実の者を無実と知りつつ起訴し、公判を維持してきた事自体が問題なのである。
その点では、ファイル書き換えの意図とか動機とか、過失か故意かということは重要ではない。

罪を犯していないものに刑事罰を課すような申告をしたものには、虚偽告訴の罪というのが定められている。昔の誣告罪である。

(虚偽告訴等)
第百七十二条  人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

法定刑で見ればわかるように、虚偽告訴の方が証拠隠滅よりずっと重い罪である。

ただし、検察官が公判請求する行為が「虚偽の告訴、告発その他の申告」といえるかどうかは、解釈の余地がありそうな感じで、厳格に解すれば、検察官の訴追行為は虚偽告訴行為にならないという解釈もありそうだ。が、法の目的は不当な訴追の危険にさらされないようにすることであろうから、検察官の訴追行為は構成要件に該当しないという解釈は合理的ではない。

もちろん、無罪判決が出れば常に虚偽告訴になるというわけではない。そんなことになれば刑事裁判制度が無意味となる。
今回の事件では、証拠の日付をわざわざ書き換えるという行為をしている時点で、遊びだろうがなんだろうが、村木氏の無実を知りながら公判を維持してきたという点に最大の犯罪性があるのである。そしてその点では、前田検事の行為を知っていた周囲の連中や上司も、全く同罪なのだ。

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コメント

検察や裁判所は供述調書と客観的事実との不一致については(少なくとも今までは)比較的寛容だったと思います。
大筋のストーリーが正しければ供述の信用性を認め、さまつな客観的事実との不一致については、供述者が意図的に虚偽の陳述をしたかもしれないという認定をして、訴追側に有利な認定をするという。

投稿: あほ | 2010/09/24 10:46

他の特捜事件も全て検証が必要な気がします。この人の扱ってきた事件をみると、どれも本当に有罪とすべき事件なのか疑わしい。

投稿: きのしろ | 2010/09/24 11:10

今回の場合は、供述証拠だけでなく、公訴事実の記載と客観的証拠の矛盾を知りつつ、証拠を改ざんしようとした事案でしょう?

投稿: 町村 | 2010/09/24 11:18

こんにちは。
 今回の問題は、「証拠を改ざんする」ことは勿論のこと
先生のおっしゃる「無実を知った上での公判維持」にあると
思います。起訴段階では、上層部は「有罪」だと思っていた
でしょうが、改ざんが明らかになった頃には分かっていた。

として、検察という組織の論理としてどうすれば
 「公判中に無実と分かった(が裁判所はまだ何も言っていない」
場合に、「事件を取り下げられるのか」だと思います。

結局、「誰が、泥をかぶるか」「どのくらいの泥をかぶるのか」
の問題だと思います。
が、そうだとすると、組織人としてはかなり難しい決断となり、
一介の検事では言い出せないでしょう。そこをどうするのかは、
大きすぎる問題だと思います、会社勤めをする人間の感想としては。

投稿: はる | 2010/09/24 11:58

はるさん、
しかし検察官というのは、1人一官庁、独任官と呼ばれる存在でもあり、組織のせいにはできない存在ではないでしょうか。

もちろん検察一体の原則もありますが。

投稿: 町村 | 2010/09/24 13:28

調書がことごとく証拠採用されなかったので無罪になりましたが従来の調書裁判では有罪のほうが可能性がたかいと検察はよんでいたのでしょう。
裁判員制度導入で調書裁判ができなくなった好影響ともいえます。
 

投稿: madi | 2010/09/24 13:33

虚偽「告訴」に、検察官の公判請求を含めるのは若干厳しいかと…一応、刑事司法作用の保護という国家的法益に関する罪ですし。
その考えだと、むしろ「特別公務員職権濫用罪」とかでは?

投稿: passenger | 2010/09/24 15:29

町村先生

おっしゃるとおり、検察官は独任官だとは思います。

しかし、身分保障がされているはずの裁判官ですら、
最高裁(の事務総局)を見ながら「おぼえがよい判決」を書く人が
多いのが現実・・・。

公判部の検察官は、結局は「決済」を貰えないと何もできないですし・・・。

だこらこそ、この事件を「とかげのしっぽ切り」に終わらせず、
検察の使命を、今一度思い起こした上での改革をしていただきたいです。

一方、大阪地検特捜部の人事が早々と報道されているようですね。
少し大きなしっぽ切りなのでしょうか、結局は・・・。

投稿: はる | 2010/09/24 23:08

まあ、現実には組織が優先されることも知らないわけではありません。

投稿: 町村 | 2010/09/24 23:27

事件の続報を注目していますが、先生のおっしゃるとおり検察は組織として村木氏の無罪を知りつつ公訴を維持していた疑いが濃厚のようですね。
まさかここまで検察組織が腐敗しているとは思いませんでした。
特捜副部長ら管理職を厳しく取り調べ処分して欲しいものです。

投稿: あほ | 2010/09/27 20:31

虚偽告訴の成否はともかく、改ざん認識後の公訴維持については国賠請求が成り立ちそうですね。

投稿: あほ(追加) | 2010/09/27 21:19

虚偽告訴は無理ということなら、逮捕監禁罪はどうですかね。
勾留の容疑が虚偽であることを知りながら保釈させようとしなかったのだから、不法であって正当業務行為ではないと思うけど。

第二百二十条  不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

ただ、証拠隠滅にせよ逮捕監禁にせよ、無実の人と知りつつ罪に陥れようとした行為の罪の重さに比べたら、手段的な行為に過ぎない気がして違和感を禁じ得ないのですが。

投稿: 町村 | 2010/09/28 15:19

刑訴法87条1項の勾留取消し請求を怠った不作為をもって逮捕・監禁の実行行為といえるかというところでしょうか。

投稿: あほ | 2010/09/28 18:37

日本の裁判は死んだのか 国家賠償訴訟
http://scrapjapan.wordpress.com/2008/05/28/lawsuit/


これと全く同じことを 誣告者を提訴した民事でも判示されました 法曹三者が意思一致してのトリック証拠調に対して 反証しない被告人に問題があるそうです。


この判決書は近日中にアップしますが 判決から10年 初めて社会に明かします 民事判決が認めた虚偽告訴
http://suihanmuzai.web.infoseek.co.jp/101012-1.jpg.html


投稿: 遂犯無罪 | 2010/10/10 10:09

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