米国のアジア戦略に絡めてQUADについて語るのはそろそろ止めるべきだ(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/04/26、ロシアのショイグ国防相は米国のアジア戦略についての懸念を表明したが、この問題に関してQUADを絡めて考えるのはもう止めるべきだ。
It’s Time To Stop Talking About The Quad In Connection With The US’ Asian Plans
2024/04/26、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は南アフリカ諸国会議で、米国のアジア戦略について警告した。
「アジア太平洋地域に関して言えば、ここでもまた地域の安全保障システムをASEAN中心からアメリカ中心に再構築しようとする組織的な試みが見られます。これはQUAD、AUKUS、米国・日本・フィリピンの三国同盟等、ワシントン志向の軍事政治構造を強化することで行われています。」
彼の警告には敬意を表すが、このコンテクストに於てQUADの心配をする必要はもう無い。この件に関連するこれまでの分析を紹介しておく。
1)米国のアジア戦略について。
米国は中国との戦争の可能性を前に同盟国を纏めている(抄訳)
The US’ Nascent Trilateral Alliance With Japan & The Philippines Will Integrate Into AUKUS+
米国は第一列島線で中国周辺の封じ込めの縄を締め上げている(抄訳)
2)悪化するインドと米国との関係について。
インドと西洋の蜜月関係が遂に破局?(抄訳)
インドは独米だろうと誰であろうと内政干渉を許さないだろう(抄訳)
American Experts Won’t Admit That Their Country Is Responsible For Fragile Indo-US Ties
3)ロシアとインドの関係強化について。
India’s Top Diplomat Explained Why His Country Is Doubling Down On Ties With Russia
Russian-Indian Relations Are Moving Beyond Their Prior Military-Centricity
ロシアが中国に傾きつつあるとの主張の中、ジャイシャンカール外相はインドがロシアを信頼していることを再確認(抄訳)
以上の分析を短く纏めるとこうだ。
1)AUKUSと米国・日本・フィリピンの三国同盟は、米国のアジア軍事化を推進している。
2)インドと米国の関係はこれまでに無い程問題を抱えている。
3)その一方でロシアとインドの関係は1970年代以来見られなかった程のルネサンスを享受している。
これらの展開を踏まえると、インドは米国の属国であるオーストラリアや日本とは違って、真に独立した主権国家であることを証明している。従ってQUAD(日米豪印戦略対話)が米国の手先として機能すると考えることはもう止めるべきだろう。
オーストラリアはAUKUS、日本は米日比三国同盟の一部であり、これらは両方とも米国の中国封じ込め政策を推進する為のものだが、インドはそのどちらの枠組みにも参加していない。また豪日は自国の国益を犠牲にして米国の対ロシア制裁の片棒を担いだが、インドは拒否した。
現時点ではQUADの唯一の目的は、4ヵ国の指導者間で年次会合を開催し、地域の災害救援活動を調整することであって、中国を封じ込めることではない。
インドと中国の関係は、1962年の短期間の戦争直後以来これまで見られなかった程に悪化してはいるが、これはインドが中国封じ込めに協力していると云う意味ではない。関連する分析は以下だ。
RIC’s Differences Should Be Candidly Acknowledged Instead Of Denied Or Spun By Alt-Media
係争中のブータン領土を中国が支配すれば、インドの国家安全保障が脅かされるかも知れない(抄訳)
India’s Support Of The Philippines In Its Maritime Dispute With China Isn’t Related To The US
印中関係は単なる領土問題が原因ではあるものの、それと同様に両国が隣り合って、異なる政治モデルを持ち、急速な経済発展を遂げている大国同士であると云う事実によって齎された相互不信の所為でもある。
言い換えれば、両国間の緊張は自然に生じたものであって、米国が介入した結果ではないし、況してやインドは米国の代理勢力として中国に敵対している訳でもない(そうだったらとっくに対ロシア制裁に加担していた筈だ)。
これらの理由から、ロシアは米国のアジア戦略に絡めてQUADの話をするのはそろそろ止めるべきだ。インドはオーストラリアや日本と違って米国の「ジュニア・パートナー」ではなく、真に独立した主権国家であり、米国の言いなりに動くことは無い。またAUKUSや米日比三国同盟は既に中国封じ込めの役割を果たしているが、QUADはその目的には全く役に立っていない。ロシアはいい加減、この問題に関する知見を更新すべきだろう。
It’s Time To Stop Talking About The Quad In Connection With The US’ Asian Plans
2024/04/26、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は南アフリカ諸国会議で、米国のアジア戦略について警告した。
「アジア太平洋地域に関して言えば、ここでもまた地域の安全保障システムをASEAN中心からアメリカ中心に再構築しようとする組織的な試みが見られます。これはQUAD、AUKUS、米国・日本・フィリピンの三国同盟等、ワシントン志向の軍事政治構造を強化することで行われています。」
彼の警告には敬意を表すが、このコンテクストに於てQUADの心配をする必要はもう無い。この件に関連するこれまでの分析を紹介しておく。
1)米国のアジア戦略について。
米国は中国との戦争の可能性を前に同盟国を纏めている(抄訳)
The US’ Nascent Trilateral Alliance With Japan & The Philippines Will Integrate Into AUKUS+
米国は第一列島線で中国周辺の封じ込めの縄を締め上げている(抄訳)
2)悪化するインドと米国との関係について。
インドと西洋の蜜月関係が遂に破局?(抄訳)
インドは独米だろうと誰であろうと内政干渉を許さないだろう(抄訳)
American Experts Won’t Admit That Their Country Is Responsible For Fragile Indo-US Ties
3)ロシアとインドの関係強化について。
India’s Top Diplomat Explained Why His Country Is Doubling Down On Ties With Russia
Russian-Indian Relations Are Moving Beyond Their Prior Military-Centricity
ロシアが中国に傾きつつあるとの主張の中、ジャイシャンカール外相はインドがロシアを信頼していることを再確認(抄訳)
以上の分析を短く纏めるとこうだ。
1)AUKUSと米国・日本・フィリピンの三国同盟は、米国のアジア軍事化を推進している。
2)インドと米国の関係はこれまでに無い程問題を抱えている。
3)その一方でロシアとインドの関係は1970年代以来見られなかった程のルネサンスを享受している。
これらの展開を踏まえると、インドは米国の属国であるオーストラリアや日本とは違って、真に独立した主権国家であることを証明している。従ってQUAD(日米豪印戦略対話)が米国の手先として機能すると考えることはもう止めるべきだろう。
オーストラリアはAUKUS、日本は米日比三国同盟の一部であり、これらは両方とも米国の中国封じ込め政策を推進する為のものだが、インドはそのどちらの枠組みにも参加していない。また豪日は自国の国益を犠牲にして米国の対ロシア制裁の片棒を担いだが、インドは拒否した。
現時点ではQUADの唯一の目的は、4ヵ国の指導者間で年次会合を開催し、地域の災害救援活動を調整することであって、中国を封じ込めることではない。
インドと中国の関係は、1962年の短期間の戦争直後以来これまで見られなかった程に悪化してはいるが、これはインドが中国封じ込めに協力していると云う意味ではない。関連する分析は以下だ。
RIC’s Differences Should Be Candidly Acknowledged Instead Of Denied Or Spun By Alt-Media
係争中のブータン領土を中国が支配すれば、インドの国家安全保障が脅かされるかも知れない(抄訳)
India’s Support Of The Philippines In Its Maritime Dispute With China Isn’t Related To The US
印中関係は単なる領土問題が原因ではあるものの、それと同様に両国が隣り合って、異なる政治モデルを持ち、急速な経済発展を遂げている大国同士であると云う事実によって齎された相互不信の所為でもある。
言い換えれば、両国間の緊張は自然に生じたものであって、米国が介入した結果ではないし、況してやインドは米国の代理勢力として中国に敵対している訳でもない(そうだったらとっくに対ロシア制裁に加担していた筈だ)。
これらの理由から、ロシアは米国のアジア戦略に絡めてQUADの話をするのはそろそろ止めるべきだ。インドはオーストラリアや日本と違って米国の「ジュニア・パートナー」ではなく、真に独立した主権国家であり、米国の言いなりに動くことは無い。またAUKUSや米日比三国同盟は既に中国封じ込めの役割を果たしているが、QUADはその目的には全く役に立っていない。ロシアはいい加減、この問題に関する知見を更新すべきだろう。
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