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アラカン軍がバングラデシュ国境を掌握。バングラデシュ政府危機は加速するかも(抄訳)

2024/12/16のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。バングラデシュの反政府勢力アラカン軍がミャンマーとの国境を制圧した。中国、パキスタン、米国はこれに付け込もうとするかも知れず、そうなるとミャンマーの安全保障に多大な影響を及ぼすことになる。
The Arakan Army’s Capture Of The Bangladeshi Border Could Prompt A Crisis With Dhaka




 シリア陥落のニュースに隠れて殆ど注目されていないが、2024/12/14、ミャンマーの反乱勢力であるアラカン軍(Arakan Army/AA)がミャンマーとバングラデシュの国境を制圧したことが報じられた。世界で最も長く続いている内戦の最新段階は2021年初頭に始まったが、反乱勢力が国境を完全に制圧したのはこれが初めてだ。

 この展開が何故重要かと云うと、アラカン軍は以前、バングラデシュがジハード主義のロヒンギャのテロリスト達を支援し、彼等の故郷の仏教徒達を攻撃させていると非難しているからだ。

 アラカン軍は仏教徒で構成されており、ロヒンギャはミャンマーのラカイン州(アラカン軍はアラカン(州)だと見做している)に住むイスラム教徒の少数民族で、バングラデシュを起源としている。従って彼等の紛争は或る意味で「文明の衝突」と言える。

 アラカン軍はミャンマー軍と戦う反乱勢力の中で、最も重武装で経験豊富なグループだと見られているが、ミャンマー軍の方も重武装で経験豊富なので、今回の勝利は印象的だ。そしてこの勝利はバングラデシュにとって更に大きな安全保障上の脅威を齎す可能性が有る。

 バングラデシュ軍はインドの脅威(そんなものは実在しないが)に気を取られているので、アラカン軍はロヒンギャのテロリスト・キャンプとされる場所に対して、国境を越えた攻撃を検討するかも知れない。

 ウルトラ・ナショナリストのアラカン軍がラカイン州を支配している限り、ロヒンギャをバングラデシュに送還すると云う可能性は政治的に実現不能だ。イスラム教徒の民間人の安全に関して、懸念すべき理由が存在するからだ。

 今後この問題は再び国際的な注目を集めるかも知れない。
 
 ミャンマー軍は対テロ取り締まりに於て民間人の死傷者を出している為、これは非常に感情的な問題だ。批判者達はこれを民族浄化やジェノサイドだと呼んでいるので、一般人もまたそうしたイメージを連想する。

 米国が支援するクーデターによって権力の座に就いたバングラデシュの新政権は、この国境危機を利用して、中国から更にハイテク兵器を購入し、パキスタンとの協力を全面的に拡大することを正当化するかも知れない(この2国はインドの伝統的なライヴァルだ)。

 アラカン軍とバングラデシュ軍との間で紛争が勃発すれば、それが限定的で低レヴェルのものであったとしても、バングラデシュと西洋、特に米国との軍事関係を急激に加速させる可能性が有る。

 バングラデシュのシェイク・ハシナ前首相が、自分は自国の領内に米国の軍事基地を置くことを拒否したから打倒されたのだと示唆したことを思い出そう。国境危機が悪化すれば、バングラデシュ政府はこれを「ミャンマーを拠点とするテロリスト・グループによる謂れ無きジェノサイド的攻撃」であると宣伝し、「自衛」の為と称して米軍基地関連の協議を進めようとするかも知れない。

 従ってインドは、この一角の動向を注意深く監視するのが賢明だろう。ミャンマー紛争に於てこれは一見小さな出来事の様に見えるが、中国、パキスタン、米国はこれを自分達の軍事的影響力を拡大する為に利用するかも知れず、そうなるとミャンマーの安全保障に多大な影響を及ぼすことになる。

 そうなればバングラデシュで始まった脅威が時間と共に北東部方面へ拡大し、領土一体性と主権に対するもっと大きな脅威となる可能性が有る。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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