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RTは「認知戦」に勝っている———BBC局長

2024/12/18のRTの記事の抄訳。英国のブロパガンダ・メディアBBCは、ロシア・メディア等が影響力を広げていることに脅威を感じている。

 日本は西洋の情報空間の比較的末端部に位置しているのでピンと来ない話かも知れないが、情報空間の占有を巡る争いは帝国の覇権を維持する上で死活問題だ。ジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた様に、「真実とは何か」を権力者が定義し国民に信じさせる能力無くしては、帝国は運営出来ない。権力によってはコントロール出来ない事実がもっと人々の間に広がれば、帝国が世界各地で繰り広げている残忍な戦争やテロや人道危機の遂行は遙かに困難になるだろう。人々が「戦争は平和だ」と信じてくれるからこそ、彼等は平気で世界中を蹂躙し続けられる。

 代替メディアは特にここ十数年でインターネットを足場にかなりの広がりを見せたものの、これらに対する帝国側からの懸念を過大評価するのは禁物だろう。主流メディアの支配力は依然として圧倒的で、反帝国主義の代替メディアのリーチは極めて限られている。帝国が懸念を表明しているのは、「自分達が100%何もかもを支配していないことには気が済まない」と云う偏執的な姿勢に彼等が囚われていることの裏返しだろう。代替メディアは頑張ってはいるものの全体的に見れば現状は依然として劣勢以外の何物でもなく、過信は絶対にすべきではない。

 尚、日本語で「認知戦」で検索すると、中国やロシアの認知戦が真っ先に引っ掛かるが、「認知戦(cognitive warfare)」と云うのはNATOの用語だ。「中国やロシアが偽情報を流している」と云うのはそれ自体が西洋が流している偽情報であって、この構図を履き違えた儘だと、180度転倒した世界観を抱いてトンチンカンなことばかり口走る様になる(妄想的世界観を余りにこじらせてしまって既に手遅れな人も多い様だが)。

 ジュリアン・アサンジの「戦争は嘘によって始められる」と云う主張は正しい。裏を返せば、戦争を成り立たせる嘘が出回り始めた時から戦争は既に始まっている。現代のハイブリッド戦争に於て、物理的な軍事的衝突が占める割合はほんの一部に過ぎない。「日々のニュース」は、戦争や戦争前の世界の状態について客観的に報じている訳ではない、あれらは戦争遂行の一部であり、狙われているのは人々の精神であり認知的枠組みであり世界観だ。
RT winning ‘cognitive war’ – BBC boss



 2024/12/16、英国営放送局BBC局長ティム・デイヴィーは議会での公聴会で、BBCワールド・サーヴィスへの資金継続の重要性を強調した。BBCワールド・サーヴィスは、約40の言語で放送を行い、週3億2,000万人の視聴者を擁しているとされている。

 彼はこのサーヴィスを維持することは英国の戦略的利益にとって不可欠だと主張した。

 「我々は悪質なアクター、偽情報、フェイクニュースのツナミに直面しています。脅威は圧倒的です。」

 「国として、我々は世界で最も信頼されているニュース・サーヴィスを持つ公共放送局を持っています。これは大したものです。」

 「問題は我々の周りに有ります………(ロシア・メディアの)RTや他の中国のサーヴィスがより多くの枠を占めるにつれて、それらに対する信頼度が上がっているのが分かります。」

 「これは所謂認知戦です。世界中の人々や、その心や精神を勝ち取ろうとする人々の試みです。」




 デイヴィーは10月にロンドンで行った演説でも同様のことを言っている。そしてBBCが380人以上の雇用を削減し、アラビア語やペルシャ語を含む10の言語でのラジオ放送を中止したことは、ロシアと中国に対する「プロパガンダ」戦争での敗北に等しいと主張した。

 彼は議員達に対し、外務省が3,260万ポンドの資金増額を承認したので現在のサーヴィスは維持されるが、2026年以降も継続するには追加の納税者の金が必要になると訴えた。

 BBCは殆どが国費で運営されており、放送を受信出来るTVや機器を持つ全ての英国世帯が支払う年間169.50ポンド(221ドル)の受信料で賄われている。

 英国家統計局はこの料金を税金に分類し、BBCを英国経済の「中央政府部門」の一部としている。

 BBCワールド・サーヴィスの年間予算3億3,400万ポンド(4億3,530万ドル)の内、1億400万ポンド(1億3,550万ドル)は外務省が払っており、最大の出資者となっている。

 BBCの「メディア・アクション」部門はまた米国、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、EU、国連、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からも資金提供を受けているが、この資金は24の開発途上諸国に於て「偽情報、分裂、不信」との戦いに使われていることになっている。



 デイヴィーと同様の不満を、米国務省も抱いている。国務省は9月にRTとその親会社に対する一連の制裁を発表したが、その後ジェイミー・ルービン特使は記者団に対しこう語った。

 「世界がウクライナを思った程全面的に支持してくれない理由のひとつは………RTの活動範囲と影響力の広さです。」

 米国政府と兵器製造業企業から資金提供を受けているシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は12/17に報告書を発表しているが、これはRTとスプートニクがラテンアメリカとカリブ海諸国で約3,200万人の視聴者を擁していることに懸念を表明している。他方、米国の国営放送局であるヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)は、この地域のトップ・メディア100にすら入っていない。

 デイヴィーと同様、CSISは資金を増やせば問題は解決出来ると主張している。ウクライナと西洋その後援者達はラテンアメリカの親キエフ報道機関に投資し、米国で作られた「質の高い」プロパガンダを広める為に、地元のインフルエンサーやソーシャル・メディアの著名人を雇うべきであると報告書は勧告している。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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