ベンガル湾に於けるロシアの軍事外交は地域安全保障のジレンマを緩和する(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023年11月現在、バングラデシュ、ミャンマー、インドの安全保障上のジレンマを緩和する上で、米国と中国には仲介役を務めるのは無理だが、ロシアなら出来る。
Russian Military Diplomacy In The Bay Of Bengal Alleviates The Regional Security Dilemma
バングラデシュ、ミャンマー、インド。ベンガル湾を挟むこの3ヵ国全てと良好な軍事関係を築いているのはロシアだけだ。
ロシアの最近の動きはこうだ。
・バングラデシュをロシア軍が半世紀振りに訪問。
・ミャンマーとは初の軍事演習を実施。
・インドともベンガル湾で演習を実施。
他方、米国と中国はどうかと言うと、
・米国:軍事的権益はバングラデシュに集中している。ミャンマーとは軍事関係を持たず、インドとの関係を優先している。
・中国:軍事的権益はバングラデシュに集中している。ミャンマーとの軍事関係を優先し、インドとは関係を持っていない。
バングラデシュの現職のシェイク・ハシナ首相は、米国が自分に対してレジーム・チェンジ工作を画策していると非難したが、1月の次の選挙によって、彼女は追放されることになるかも知れない。
同時に、ミャンマーの反国家勢力が数十年に及ぶ内戦に於て初めて首都を制圧した。この為軍指導部は、自国の「バルカン化」について警告した。
両国についてはまた、物議を醸しているロヒンギャ問題の所為で関係が緊張した儘であることも思い出しておくべきだろう。
南アジアに於けるこうした地政学的な不確実性の中で、他国の正当な利益を犠牲にすること無く全ての当事者達がプラグマティックに協力する為には、責任有る地域外の利害関係者の存在が不可欠だ。だが米国も中国も上で指摘した様にこの役割を果たすことは出来ない。その責任を果たすことが出来るのはロシアだけだ。
ロシア海軍が3国と軍事協力していると云う事実は、ロシアがベンガル湾に何の利害持たない、責任有る地域外の利害関係者であることに、全員が同意していることを意味する(米国と中国の政策に対しては、彼等の一部は疑念を抱いている)。これは相互の信頼醸成に役立つ。
バングラデシュに関しては、ハシナ首相の警告にも関わらず、依然として米国及び中国との緊密な軍事関係を維持している。2024年初めに彼女が(民主的な投票にせよ非民主的なカラー革命にせよ)退陣する場合、外交政策がどう変わるかは不明だが、とにかくバングラデシュ国軍は現在、両国の間でバランスを取ろうとしている。
ミャンマーとインドに関しては状況が全く異なる。ミャンマーは中国と軍事関係を持ち、米国との関係は無いが、インドは中国と間に領土問題を抱える一方、米国との関係は曾て無い程良好になっている(米国の属国に戻ったと云う意味ではない)。従ってミャンマーはインドと米国の軍事関係を脅威と考える可能性が有り、また逆にインドはミャンマーと中国との軍事関係を脅威と見做すかも知れない。これにより地域の安全保障上のジレンマが悪化することになる。
にも関わらず、インドとミャンマーの関係は依然として友好的だ。これは部分的には、ロシアとの軍事関係が証明している様に、両国が互いのプラグマティズムに安心感を抱いていることが原因だと考えられる。軍事戦略上の共通点を得たお陰で、互いに対する疑念が緩和されたのだ。
中国と米国の新冷戦の対立は、この地域を分断し、3国全ての客観的な国益を損なうかも知れなかった。が、このシナリオは、ロシアとの軍事戦略的関係を育むと云うプラグマティズムによって回避された。これは地域の安全保障のジレンマを管理する上で役立つ。
Russian Military Diplomacy In The Bay Of Bengal Alleviates The Regional Security Dilemma
バングラデシュ、ミャンマー、インド。ベンガル湾を挟むこの3ヵ国全てと良好な軍事関係を築いているのはロシアだけだ。
ロシアの最近の動きはこうだ。
・バングラデシュをロシア軍が半世紀振りに訪問。
・ミャンマーとは初の軍事演習を実施。
・インドともベンガル湾で演習を実施。
他方、米国と中国はどうかと言うと、
・米国:軍事的権益はバングラデシュに集中している。ミャンマーとは軍事関係を持たず、インドとの関係を優先している。
・中国:軍事的権益はバングラデシュに集中している。ミャンマーとの軍事関係を優先し、インドとは関係を持っていない。
バングラデシュの現職のシェイク・ハシナ首相は、米国が自分に対してレジーム・チェンジ工作を画策していると非難したが、1月の次の選挙によって、彼女は追放されることになるかも知れない。
同時に、ミャンマーの反国家勢力が数十年に及ぶ内戦に於て初めて首都を制圧した。この為軍指導部は、自国の「バルカン化」について警告した。
両国についてはまた、物議を醸しているロヒンギャ問題の所為で関係が緊張した儘であることも思い出しておくべきだろう。
南アジアに於けるこうした地政学的な不確実性の中で、他国の正当な利益を犠牲にすること無く全ての当事者達がプラグマティックに協力する為には、責任有る地域外の利害関係者の存在が不可欠だ。だが米国も中国も上で指摘した様にこの役割を果たすことは出来ない。その責任を果たすことが出来るのはロシアだけだ。
ロシア海軍が3国と軍事協力していると云う事実は、ロシアがベンガル湾に何の利害持たない、責任有る地域外の利害関係者であることに、全員が同意していることを意味する(米国と中国の政策に対しては、彼等の一部は疑念を抱いている)。これは相互の信頼醸成に役立つ。
バングラデシュに関しては、ハシナ首相の警告にも関わらず、依然として米国及び中国との緊密な軍事関係を維持している。2024年初めに彼女が(民主的な投票にせよ非民主的なカラー革命にせよ)退陣する場合、外交政策がどう変わるかは不明だが、とにかくバングラデシュ国軍は現在、両国の間でバランスを取ろうとしている。
ミャンマーとインドに関しては状況が全く異なる。ミャンマーは中国と軍事関係を持ち、米国との関係は無いが、インドは中国と間に領土問題を抱える一方、米国との関係は曾て無い程良好になっている(米国の属国に戻ったと云う意味ではない)。従ってミャンマーはインドと米国の軍事関係を脅威と考える可能性が有り、また逆にインドはミャンマーと中国との軍事関係を脅威と見做すかも知れない。これにより地域の安全保障上のジレンマが悪化することになる。
にも関わらず、インドとミャンマーの関係は依然として友好的だ。これは部分的には、ロシアとの軍事関係が証明している様に、両国が互いのプラグマティズムに安心感を抱いていることが原因だと考えられる。軍事戦略上の共通点を得たお陰で、互いに対する疑念が緩和されたのだ。
中国と米国の新冷戦の対立は、この地域を分断し、3国全ての客観的な国益を損なうかも知れなかった。が、このシナリオは、ロシアとの軍事戦略的関係を育むと云うプラグマティズムによって回避された。これは地域の安全保障のジレンマを管理する上で役立つ。
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