ロシアの対トルコ戦略、現時点での見立て
Dobry vecer!
エリシュカです。
今回は、中間報告的に現時点でのロシア・トルコ関係について分析してみたいと思います。
まだまだ事態は進展していますのでこれから高い確率でこうなるだろうとは言えない段階ですが、現時点でのとりあえずの展望を、手短に。
どうにもロシアのトルコへの怒りには戦略的なものを感じます。
ロシアは明らかにNATOが動かないとわかっていてトルコに強硬姿勢を取っています。もちろん明確に5条対応の根拠になるような攻撃はしないでしょうが、少なくともこれを続けている限り傍目にはトルコはああなってるのにNATO何やってるの? となります。
狙いはトルコの孤立化、それによるNATOの信頼性の低下にあるように思えます。ただ欧州人はトルコを欧州だと思っていなくて仮にトルコとNATOとの関係が破滅的になっても欧州NATO加盟国国民のNATO不信はそれほど深刻にならないかもしれませんが。
西側主要国がシリアの件でロシアとの危険なまでの対立を好まないのならば、ロシアが西側主要国と対テロ戦で歩み寄れば寄るほど西側諸国にとってトルコが厄介者になる構図になるでしょう。
そうやって西側諸国にとってトルコが厄介者になればなるほど、ブリュッセルとアンカラとの齟齬が大きくなればなるほどNATOの求心力が低下するという寸法。ロシアはそのへん狙っているのかもしれません。
今回の件で仮にトルコがロシアに謝罪するなどして屈したとした場合でもNATOの頼りなさが明確になるという。どちらに転んでもロシアにとって美味い展開になるでしょう。
もちろんシリアでの戦争のためにトルコをどうにかしたいという思惑もあるのでしょうがそこまでは自分の専門外なので何とも言えません。
ロシアの対シリア政策そのものの成功如何は別としても、ロシアがNATOの求心力低下を狙っているのならば、トルコのロシア軍機撃墜でNATOとNATO加盟主要国が「再発防止」、「両者は冷静に」以上のことを今のところ言ってないのはかなり有利な方向に行ってるというところでしょう。
ロシアはもうトルコが謝らない限り口をきかないというレベルにまでテンションを引き上げていますので、NATOがトルコに助け舟を出すのならNATO加盟主要国がロシアと、今のトルコが直面しているレベルの悪化した対露関係に直面することになるでしょう。それを覚悟してまで助けに行くでしょうか。
ロシアの激怒にはどうにもわざとらしさを感じてしまいます。ともあれ今の流れが続くとNATO加盟主要国は、シリアで露と深刻な対立状態になることを受け入れてまでトルコを助けるかそれとも切るかの2者択一を迫られることになりそうな気がします。ロシアはそれ狙って怒り続けてるのかなと思います。
ウクライナの件は西側にとって安全保障上の脅威でも露と軍同士の直接対峙なしに外交的にある程度の距離を保って交渉できましたが、各国が今現在軍事行動をしているシリアで深刻な対立状態になるのは避けたいでしょう。露は西側とガチでやりあう気も力もないでしょうが、西側のそうした姿勢を見切った上での対トルコ強硬姿勢かと思われます。
現時点での私の見立てはこのくらいですね。
また事態の進展があったら分析を書きたいと思います。そろそろバルカン情勢にも戻りたいですし。
今日はこんなところでしょうか。
それでは、Na shledanou!
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