ロシアのバルト海方面での活動について小考察
Dobry vecer!
エリシュカです。
米・フィンランド間で防衛協定が締結されました。
http://www.defmin.fi/SOIこれ自体は見たところそれほど突っ込んだ内容ではないと思われますが、この時期にフィンランドを領空侵犯した露軍機の行動はこれに対する牽制という見方をされています。
http://www.reuters.com/arti…/us-finland-russia-idUSKCN1270IDエストニアのほうはウクライナ国防省の訪問とも重なっているようです。
このこと自体は特筆されるべきものはないと思いますが、少々露にとってのバルトでの行動の意味を考えてみたいと思います。
「露は黒海と同じようにバルト海もコントロール下に置こうと望んでいる」
http://news.err.ee/v/news/2bd72ff4-396e-4e61-897a-d8bfe903e6c8/terras-russia-demonstrating-wish-to-control-baltic-sea-area
しかしバルト海の状況だけ切り取って見ればそう思えるのでしょうが、ロシアはバルト海を取ることにまでを含めた地政戦略は持っていないというのが私の以前からの見方です。
バルト三国を疲弊させるという成果が出ない限り露のバルト方面での活動はこれら諸国の防衛力強化を促進させているだけです。一つの場所で長期間同じように圧力かけていたら累積的に相手方の防衛力が強化されて結果何もできなくなるだけですし、やはりここは真正の戦略的正面ではないと思います。
露のバルト海での強みはスヴァウキ地峡の締め付けとカリーニングラード以外にスウェーデンとフィンランドがNATO加盟国ではないことですが、両者は長期にわたる対峙でNATO寄りになっています。相手方陣営を一枚岩にしているだけです。
なのでユーラシアなど他正面、欧州だとバルカンに手を付けるために西側の努力をここに集中させる意図があるようにしか思えません。本当にここでやりあう気があるとは思えないというのが私の見解です。
ただ、ロシアの戦略文化ついての考察も必要なので今後はより深い読みをしていきたいと思います。
今回はこんなところでしょうか。
それでは、Na shledanou!
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バルト三国へのハイブリッド戦争の可能性、別の視点から
Dobry vecer!
エリシュカです。
今回は前回のエントリで述べたことを、別の視点から論じてみたいと思います。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H2H_R20C16A3FFB000/プーチン外交は弱さの表れだ
今回はこの記事で述べられているロシアの対外政策の目的に沿う形で考えてみたいと思います。
記事のように戦争を国内向けプロパに使用しているのであればそれは派手なものでなければならず、だとすると今後露がどこかにしかけるならば陰謀的で隠微なタイプのハイブリッド戦争ではない冒険的な見栄えのするものになる可能性があります。
戦争に国内向けプロパという意味があるのならシリアから手を引いた今また欧州方面で出てきそうですが、ウクライナでの戦争をさらに推し進めるという選択肢はどうでしょう。タフネスをアピールするならバルト三国でのハイブリッド戦争、というのをどうにも考えてしまいます。
以前バルト三国に対する戦争の可能性について論じていた記事で論者がNATOの5条対応(集団防衛)を招くやり方ではなく政権転覆・露系扇動などの陰謀的な方法をとるだろうと言っていましたが案外目立つやり方でくるかもしれません。
NATOがハイブリッド戦争も共同防衛行動の対象にすると言いつつ実際現地の露系の扇動、露軍の潜入・現地露系への偽装という事態が生じたとしてそれをハイブリッド戦争と認めるか否かの段階で、露に対する政策面での加盟国内の温度差見ると揉めそうで、そこに期待をかける可能性は十分にあると思います。それにウクライナの場合でも示されたようにクレムリンが露軍の関与を否定していても国民は盛り上がりました。
さらにバルト三国で露系蜂起という形のハイブリッド戦争がなされた場合にマイノリティーの保護というEUの建前から西側をジレンマの立場に立たせることも考えられます。
この記事のようにバルト三国が国境にフェンス作りはじめたのは現地では危険が増大してきたという意識があるのでしょうか。
http://www.reuters.com/article/us-europe-migrants-baltics-idUSKCN0WA1JN
ウクライナでの戦争は国内世論高揚のためのツールとしては疑問符が付くと思います。今の状態でダラダラやっているのはあれ以上できないのか沿ドニエストルを巻き込んでオデッサ州あたりで何か工作してて今後何かやるつもりなのか、何のところ何とも言えませんが。
ちなみに、露が北極海・北海方面で圧力かけてるのはNATOに負担をかけてバルト海方面へ割ける戦力を削減させる目的もあるのかもしれません。この方面での露の潜水艦のプレゼンスは冷戦後最もアグレッシヴになっていると 記事にあります。
http://www.atlanticcouncil.org/blogs/natosource/russia-s-growing-threat-to-norway-and-the-north-atlantic
事が起きるのがバルト海方面であってもどのみち地理的にノルウェーにも影響出ることになります。NATOがノルウェーで冬季訓練Cold Response 2016を行ったのはノルウェー防衛戦以外にスウェーデンやフィンランドに展開する事態も想定してのことなのでしょうか。実際にこの2国は訓練に参加しています。
これまで見てきた限りでは南東欧の不安定化は工作でなんとかなります。軍事力の使いどころとしてはやはり北を考えてしまいます。
今回はこんなところでしょうか。
それでは、Na shledanou!
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バルト三国へのハイブリッド戦争の可能性
Dobry vecer!
エリシュカです。
今回はラトヴィアの防衛省アドバイザーのヤーニス・コジャチンシュ氏の、ロシアのHybrid Warfareについての見解について書いてみたいと思います。
http://defencematters.org/news/former-spy-chief-russia-could-break-nato-through-the-baltics/337/
「露がバルトにハイブリッド戦争を行うとしたらクリミアでのように軍事力は使わず露系の扇動や親露系政府の樹立等の方法をとるだろう」
このコジャチンシュ氏が言う、露の経済悪化が露のバルト侵攻の要因となるという説明はちと舌足らずだと思われます。バルト三国を征服することにより経済効果がもたらされるのか、単なる失点の埋め合わせなのか。
ちなみに、バルト三国の安全保障についてはバルト海沿岸全域と北極・北海地域も合わせて一つのシアターと見る必要があると思います。
露がこうした行動をバルト三国で行う意図があるならばバルト・北極海方面の露の通常戦力は意図隠しである可能性があります。
あるいはいずれこの方面全域を影響下に収めるつもりでバルト侵攻はその一環ということなのかもしれませんが問題はやはり露にそれだけの国力があるかどうかにつきます。
ただトルコの場合と違いバルト三国が露の手中に落ちてしまった場合のNATOの求心力に与えるインパクトはかなり大きいので、グリーンマンのいないハイブリッド戦争でもやってみる価値はあるかもしれません。
地政学的にバルト三国は露本土とカリーニングラード、ベラルーシに包囲されています。さらに北方にはNATO非加盟国で進行してもNATOから5条対応(集団防衛)を食らう惧れの無いフィンランド、スウェーデンという大きな「穴」があります。
バルト海のオーランド諸島とゴトランド島を取られればスウェーデン・フィンランド以上に危機的状況になるのはあきらかで、NATOもそこは理解しているはずだし現にゴトランド島防衛演習行われています。
ハイブリッド戦争は本国が一切関与していないというスタンスを取る形式の戦争であり、NATOはハイブリッド戦争も5条対応の対象になるとしつつも、これが実施された場合加盟国の対露政策次第でこれを侵略と公式に認めるか、あるいは認めても貴重な時間を費やしてしまわないかという懸念があります。対ハイブリッド戦争は通常型戦争以上に時間との戦いです。
NATO加盟国すべてがバルト三国を失うことの重要性を理解していればいいのですが、このあたりは確実なことは言えないというのが実情でしょう。
参考までに。エストニアでは、ハイブリッド型戦争を想定した政治・軍事・市民のレベルでの演習が行われました。
http://news.err.ee/v/news/f0b94690-4b1a-4265-806a-339712ae9ab5/estonia-plays-through-various-security-threat-scenarios-at-nato-crisis-manangement-exercise
こちらは戦争の発端についてもあらゆる事態を想定しており、シリアで露土が衝突した事態も想定されています。
この場合、NATOはトルコがシリアで軍事衝突を行っても5条対応はしないと明言しているので影響は少ないと思いますが、NATOに負荷を負わせるためにバルト三国のいずれかでフローズンコンフリクト地帯を作りだす可能性も否定できないでしょう。
今回はこんなところでしょうか。
それでは、Na shledanou!
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