多国間紛争の国際的管理。
こちらでは始めまして。ミルチャ・アントネスクです。
初投稿につき、サンプルとして以前某所で書いた記事を投稿してみます。
某所ですでにご覧になられた方には申し訳ありません。
それで、ですね。
私はバルカン紛争の管理というものについて今回は書いてみたいと思います。
まず、バルカンでの紛争。
これは国際紛争であり、また一国のみを見ればそれはインサージェンシー、域内全体から見ればそれは直接的間接的な国家間戦争の様相を帯びます。
例えば、1991年から1995年にかけて生起したクロアチア・ボスニア内戦では、クロアチア国内の戦争では連邦軍(事実上セルビア)に援助されたセルビア人武装勢力に対するカウンターインサージェンシーでした。
しかしこれはユーゴ連邦からみればクロアチア「政府軍」に対するカウンターインサージェンシーです。
しかし、当時のドイツのようにクロアチアを既に独立したものと見る場合、これは国家間戦争の性格を帯びます。
この国家間戦争の性格は、ボスニアで内戦が起きるとより強いものとなります。
セルビアに支援されたセルビア人武装勢力、クロアチアに支援されたクロアチア人武装勢力(ならびにボシュニャク人)の間接的国家間戦争でした。
ボスニア国内では、正統政府はボシュニャク人の手にあったものの事実上三勢力の争いであり、これは破綻国家の内戦の類型です。(よく見るボシュニャク人正統政府に対するインサージェンシーという表現を見ますが私は賛成しかねます)
こうした類型になる可能性は、コソヴォ、サンジャクそしてマケドニアで大規模紛争が起きた場合十分にあります。
こうした地域の安全保障体制運営には、域内全体を包括的に管理でき、域内の正統政府を押さえ込め、また紛争勃発以前かそれと同時に効果的な軍事行動がとれるだけの政治力・軍事力と能力をそなえた管理者が不可欠です。
バルカンにとって幸いだったのは、これだけの力を備えたNATOという軍事同盟と隣接していたことです。
EUの存在も、紛争予防のための政治力・経済力を備えた国家集団ということでこの存在も幸いでした。
NATOが軍事力で紛争抑止し、またEUが政治力・経済力でそれを強化するという理想的な体制が出来上がっています。
しかし、問題が無い訳ではありません。
例えばNATOというのは大所帯です。
この域内で紛争が生起すれば、まず域内の紛争当事者になるであろう諸国を押さえ込み、それから紛争当事者であるインサージェンツへのカウンター・インサージェンシーを行うことになります。
しかしこれは介入のタイミングと戦争の重心を見誤ると事態を逆に悪化させる恐れがあります。
また、カウンター・インサージェンシーなど非対称型戦争は正確ですばやい軍事行動が求められる。
さらに市街地における戦闘が必要になった場合、これを成功させられる装備と経験を持っている国は限られています。
そして、これだけの大規模な戦域に対しては当然大規模な軍事力の展開が必要になり、それだけの軍事力を維持するだけのロジスティクス能力が必要になります。
また、最良のタイミングでの介入のために紛争が生起する以前から地域周辺に軍事力が展開してる必要がありますが、それだけの軍事力をいつ実際に生起するかわからない紛争のために維持するのには、ロジスティクス能力のみならず、NATO加盟国の足並みの一致が非常に重要になります。
これは大変困難なことです。実際、NATO軍は1998年12月にもっとも整った軍事力を新ユーゴ周辺に展開させていましたが、結局介入したのは1999年3月であり、その軍事力はいささか劣化していました。さらにギリシアの軍事行動不参加という足並みの乱れもありました。
NATO、EUによる管理体制が上手く機能している場合でもこうした困難が付きまといます。
しかし、ロシアのような外部からの撹乱要因、さらに現在の世界金融恐慌のようなEU、NATO加盟国内での深刻な問題等により、この管理体制が影響される可能性はゼロではありません。