ハンガリー:東欧諸国の対露政策におけるノイズ
Добрий день!
教祖です。
今日は、対露政策で概ね共同歩調をとっている北部東欧諸国の中でノイズを発しているハンガリーについて書いてみたいと思います。
ハンガリーはチェコ・スロヴァキア・ポーランドとともにV4(ヴィシェグラード・4)のくくりで概ね語られ、さらにV4はバルト三国・北欧諸国と安全保障上共通の利益を持つとし、このくくりで例えば露のクリミア侵攻の直後にエストニアのナルヴァで外相会議が開かれました。
その中で不協和音のノイズを発しているのが、ハンガリーです。
今年4月6日のハンガリー議会選挙で、前与党のフィデス(Fidesz、中道右派)が勝利を収めオルバーン・ヴィクトル(Orbán Viktor ハンガリー人は姓が先に来る)が三期目の首相の座につきました。
このオルバーン首相は、就任するとウクライナに国内ハンガリー系少数民族の自治を要求しました。
Orban urges autonomy for ethnic Hungarians in Ukraine
https://au.news.yahoo.com/world/a/23594507/orban-urges-autonomy-for-ethnic-hungarians-in-ukraine/
また、EUの対露経済制裁には反対の立場を取っています。
もともとオルバーンのフィデスはその保守的な政策によりEUとの仲がよくないという背景があります。
それに加えて、ウクライナでクーデターにより民族主義的な暫定政権が発足しハンガリー系少数民族の権利についての懸念が生じた、
ハンガリーは露からの資源輸入に依存している、
これらの要因が重なってこうしたハンガリーの対露政策に現れたということができそうです。
この論文が良くまとまっています。
Hungary’s stance on the Ukrainian-Russian conflict
http://www.osw.waw.pl/en/publikacje/analyses/2014-05-21/hungarys-stance-ukrainian-russian-conflict
それに加え、今回の選挙は周辺のハンガリー系住民が住む諸国を懸念させるものでもありました。
2010年5月、フィデス政権によってハンガリー国外のハンガリー系住民にもハンガリー国籍が与えられました。
これは国外のハンガリー系住民にも選挙権を与えるものであり、彼らが有権者として参加した今年4月6日の選挙でフィデスの圧勝、さらに極右政党ヨッビク(Jobbik)が得票数を伸ばしたことは周辺諸国を警戒させるものであったと思われます。
国外ハンガリー人は上記のウクライナだけではなくスロヴァキア、セルビア、さらに歴史的に常に問題となってきたルーマニアのトランシルヴァニアに居住しています。
ハンガリー、及び周辺諸国のハンガリー系の中で民族主義が今後高まってゆくのであればそれは北部東欧諸国、ひいてはEU・NATOの対露政策に亀裂を生じされる恐れがあるものです。
さらに、近年新たな問題となっているのがハンガリーの歴史観です。
2011年4月に交付されたハンガリー基本法の前文に書かれ批判された箇所は、1944年3月にハンガリーは独の侵略により征服されたというもの。
これは、これ以降に行われた当時のハンガリー国内におけるユダヤ人迫害についてハンガリー政府に責任はないというものであり反発を受けています。
この問題に関しては、米国との関係にも影を落とす可能性があります。
US senators, congressmen ask Orbán to reconsider WW2 occupation monument
http://www.politics.hu/20140523/us-senators-congressmen-ask-orban-to-reconsider-ww2-occupation-monument/?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
ハンガリーの民族主義思想は複雑で、トゥラニズムの要素もあり面白いのですが、煩瑣になるので別エントリでのちほど書きますね!
До побачення!