南コーカサスへの圧力
Dobry vecer!
エリシュカです。
久しぶりのエントリなのに申し訳ないのですが、まだまだ多忙なので今日は短いものを一つ投下です。
もう少しでちゃんとしたエントリに戻れると思います。
まず、南コーカサス。
アルメニアとアゼルバイジャンの最近の対立の件は以前のエントリでご説明しました。
アルメニア、アゼルバイジャン関係緊張の可能性
南コーカサスについては、ロシアの動きが二つ入っています。
CSTO、アルメニアで軍事演習
この演習では、ロシアの主導の下ベラルーシ、タジキスタンとキルギスタン、カザフスタンが参加しています。
そして、
ロシア軍、北コーカサスで軍事演習
もちろん後者は未だにくすぶっている北コーカサスの反乱分子への示威行動の側面があるでしょう。
しかし、ちょうどアゼルバイジャンやグルジアをはさむ形で行われたこの二つの演習はこの二国に対する示威でもあると思われます。
以前のエントリでNATOのラスムセン事務総長が南コーカサス諸国を歴訪したと書きましたが、それに対するロシアの反応であるとも考えられます。
アゼルバイジャンは西側へのパイプラインの起点であり、グルジアはその中継地です。
西側にとって地政学的に重要なこの二国を分断し圧力をかけることによりアゼルバイジャン(グルジアはとうに敗北しています)の対西接近を阻止する狙いがあると思われます。
さて、ところ変わってボスニアのスルプスカ共和国。
大統領のドディクは相変わらず危険な発言を繰り返しています。
「ボスニア・ヘルツェゴヴィナは私の気分を悪くする」
「私はボスニアに住んではいない」との分離主義的な言葉です。
そして9月16日にセルビア首相のダチッチがスルプスカ共和国を訪問し、
セルビア本国とスルプスカ共和国との結びつきの重要性を強調しています。
今回はこんなところでしょうか。
それでは、Dobrou noc! Na shledanou!
コメントの投稿
No title
こんにちは。
カレル大学というとチェコですかね。
中欧には行ってみたいですがやっぱりモスクワからは遠いです。
今後よろしくお願いします。
アルメニアとアゼルバイジャンの確執はロシアでも報じています。
しかし今回はEU側の方が苦しいと思います。ただでさえパイプライン計画が棚上げされた状態でこうも問題が山積すると結局ロシアの助力が必要で、お得意の「人権」や「自由」主義の前にアルメニア人の首が転がり、クレムリンの壁があるようではアゼル側との交渉に自らの信念が逆に障害になるでしょう。
EUは強いはずの経済問題抱え、逆に弱い政治能力にこの重圧がかかるとさすがに引くでしょうね。
ロシアとしてはアルメニアの安全を保障する必要がありますが、南コーカサスのバランスはアゼル一直線です。
アゼルはトルコとの関係上、軍備をNATO系(トルコ系)に移行しており、ロシアは紛争に巻き込まれるとNATO式の装備を整えた軍と戦うことになります。これは不利です。
軍の近代化終了予定の2020年まで事を構えるとは避けると思います。
CSTOの演習ですがイズベスチアを見る限り新品の車両が目につきました。
グルジア紛争の教訓から近代化、対テロ、西側への牽制をこめて重装化するカフカス方面軍ですが、ロシア以外の参加国はT72など泥だらけで旧式だったため、ほとんどの車両がダークグリーンの塗装が綺麗なロシア軍は目立つ存在でした。
精密攻撃ができない事が問題となったロシア軍は今回の演習で多くの新型自走砲、ロケット、対地ミサイル、衛星標準など間接打撃力を強化していました。
共同軍はロシア空挺軍が中心に編成されており、総体としては空挺軍が目標を麻痺させ、その目標を重厚な精密攻撃で叩き、そして共同軍の制圧という前回の紛争を意識した展開でした。
山岳地帯の多いコーカサスには特に高い機動力と間接打撃力を与えるようです。
ロシアはセルビアの友人であり続けたいと思っていますが、このスルプスカの分離主義には相当困るでしょう。
こればっかりは連邦制をとってなお多民族国家のロシアには致命的ですね。
モスクワにとって「分離主義」とは自身の永遠の敵でしょう。
酔っ払いのロシア人は「ウクライナ人は俺に国を出ろと言った。俺はロシア人だ、だけどお袋はウクライナ人だぞ。300年一緒に居て、何が独立だ」と過去を話したことがあります。
漁師のウクライナ人は「独立しても血はつながる。だからって兄弟、姉妹がずっと一緒なんてありえないね。それでも昔は美しい」と遠いソ連旗を眺めていました。
背の高いのカザフ人は「外国人は俺たちがロシアに支配されたっていってたけど、本当はどうだろう。昔はここに来るロシア人はみんな反逆者だったさ。みんなボロボロで、どう支配したんだろうな。俺たちは家に入れただけさ。」とアメリカ製の機関車を運転していました。
たくさんの子供を持ったウズベク人は「子は家をデル、ロシアも、コノ子も。」とカタコトのロシア語で笑っていました。
ユーゴとは違いますが「悪の帝国」にも家族がいて、崩壊を知る人が多く生きています。
連邦国家とは難しい、ロシアは原住民の連邦です。170もの民族が悲劇は共有できたロシアは運がよかった。
友人を撃つことをためらう事ができたのですから。
カレル大学というとチェコですかね。
中欧には行ってみたいですがやっぱりモスクワからは遠いです。
今後よろしくお願いします。
アルメニアとアゼルバイジャンの確執はロシアでも報じています。
しかし今回はEU側の方が苦しいと思います。ただでさえパイプライン計画が棚上げされた状態でこうも問題が山積すると結局ロシアの助力が必要で、お得意の「人権」や「自由」主義の前にアルメニア人の首が転がり、クレムリンの壁があるようではアゼル側との交渉に自らの信念が逆に障害になるでしょう。
EUは強いはずの経済問題抱え、逆に弱い政治能力にこの重圧がかかるとさすがに引くでしょうね。
ロシアとしてはアルメニアの安全を保障する必要がありますが、南コーカサスのバランスはアゼル一直線です。
アゼルはトルコとの関係上、軍備をNATO系(トルコ系)に移行しており、ロシアは紛争に巻き込まれるとNATO式の装備を整えた軍と戦うことになります。これは不利です。
軍の近代化終了予定の2020年まで事を構えるとは避けると思います。
CSTOの演習ですがイズベスチアを見る限り新品の車両が目につきました。
グルジア紛争の教訓から近代化、対テロ、西側への牽制をこめて重装化するカフカス方面軍ですが、ロシア以外の参加国はT72など泥だらけで旧式だったため、ほとんどの車両がダークグリーンの塗装が綺麗なロシア軍は目立つ存在でした。
精密攻撃ができない事が問題となったロシア軍は今回の演習で多くの新型自走砲、ロケット、対地ミサイル、衛星標準など間接打撃力を強化していました。
共同軍はロシア空挺軍が中心に編成されており、総体としては空挺軍が目標を麻痺させ、その目標を重厚な精密攻撃で叩き、そして共同軍の制圧という前回の紛争を意識した展開でした。
山岳地帯の多いコーカサスには特に高い機動力と間接打撃力を与えるようです。
ロシアはセルビアの友人であり続けたいと思っていますが、このスルプスカの分離主義には相当困るでしょう。
こればっかりは連邦制をとってなお多民族国家のロシアには致命的ですね。
モスクワにとって「分離主義」とは自身の永遠の敵でしょう。
酔っ払いのロシア人は「ウクライナ人は俺に国を出ろと言った。俺はロシア人だ、だけどお袋はウクライナ人だぞ。300年一緒に居て、何が独立だ」と過去を話したことがあります。
漁師のウクライナ人は「独立しても血はつながる。だからって兄弟、姉妹がずっと一緒なんてありえないね。それでも昔は美しい」と遠いソ連旗を眺めていました。
背の高いのカザフ人は「外国人は俺たちがロシアに支配されたっていってたけど、本当はどうだろう。昔はここに来るロシア人はみんな反逆者だったさ。みんなボロボロで、どう支配したんだろうな。俺たちは家に入れただけさ。」とアメリカ製の機関車を運転していました。
たくさんの子供を持ったウズベク人は「子は家をデル、ロシアも、コノ子も。」とカタコトのロシア語で笑っていました。
ユーゴとは違いますが「悪の帝国」にも家族がいて、崩壊を知る人が多く生きています。
連邦国家とは難しい、ロシアは原住民の連邦です。170もの民族が悲劇は共有できたロシアは運がよかった。
友人を撃つことをためらう事ができたのですから。
Re: No title
ラーダ様
えーと、返信のすさまじい遅延、誠に申し訳ありませんでした…
この記事のあと個人的に急に忙しくなったのとtwitterでの活動が一時的にメインになって放置状態になってしまいました。
この返信を読んで頂けるかわかりませんが、お詫びの気持ちをこめて書かせて頂きます。
またも非常に興味深いお話を聞かせて頂きありがとうございます。
旧ソ連では民族間の心情は穏やかである傾向があるようですね。
ユーゴ崩壊の過程で起きた紛争では今まで一つの村で普通につきあっていた異民族同士が殺しあいを始めました。
このあたりの心理は正直私にもわかりかねます。
「出し抜けに戦争が始まり、また出し抜けに和解が成立する」との形容がありますが、ボスニア戦争では顕著だったですね。
彼らは同言語を話し、また遺伝学的にもほとんど変わりは無いでしょう。あれは宗教戦争ではないにも関わらず各民族を分け隔てるものは宗教のみでした。
これからは1912年の第一次バルカン戦争より積み重なってきたバルカンの不安定な部分が大きく動き出すと思われます。
今までは(トルコを含めなければ)ギリシアの戦力が突出していましたが経済危機でどのていど稼働率が下がるのかはまだわかりません。しかしマケドニア、アルバニア、ブルガリアがトルコと接近し、トルコが経済的にもこの地域で主要なアクターとなっている現在、セルビアしか近しい仲間のいないギリシアは今まで以上にロシアに接近すると思われます。
ただトルコとロシアは競合関係に無く、バルカンで事が起きた場合積極的に関与することはないと思われます。
ともあれ、過去4度行われた南西バルカンでの大規模な騒乱が酸鼻を極めるものであっただけに、これからそれが再度首をもたげるならボスニアでおきたような地獄絵図がこの規模で展開される可能性があります。
えーと、返信のすさまじい遅延、誠に申し訳ありませんでした…
この記事のあと個人的に急に忙しくなったのとtwitterでの活動が一時的にメインになって放置状態になってしまいました。
この返信を読んで頂けるかわかりませんが、お詫びの気持ちをこめて書かせて頂きます。
またも非常に興味深いお話を聞かせて頂きありがとうございます。
旧ソ連では民族間の心情は穏やかである傾向があるようですね。
ユーゴ崩壊の過程で起きた紛争では今まで一つの村で普通につきあっていた異民族同士が殺しあいを始めました。
このあたりの心理は正直私にもわかりかねます。
「出し抜けに戦争が始まり、また出し抜けに和解が成立する」との形容がありますが、ボスニア戦争では顕著だったですね。
彼らは同言語を話し、また遺伝学的にもほとんど変わりは無いでしょう。あれは宗教戦争ではないにも関わらず各民族を分け隔てるものは宗教のみでした。
これからは1912年の第一次バルカン戦争より積み重なってきたバルカンの不安定な部分が大きく動き出すと思われます。
今までは(トルコを含めなければ)ギリシアの戦力が突出していましたが経済危機でどのていど稼働率が下がるのかはまだわかりません。しかしマケドニア、アルバニア、ブルガリアがトルコと接近し、トルコが経済的にもこの地域で主要なアクターとなっている現在、セルビアしか近しい仲間のいないギリシアは今まで以上にロシアに接近すると思われます。
ただトルコとロシアは競合関係に無く、バルカンで事が起きた場合積極的に関与することはないと思われます。
ともあれ、過去4度行われた南西バルカンでの大規模な騒乱が酸鼻を極めるものであっただけに、これからそれが再度首をもたげるならボスニアでおきたような地獄絵図がこの規模で展開される可能性があります。