ロシア軍機撃墜の件、当面の事態の予想
Dobry vecer!
エリシュカです。
手短に、今回のトルコ軍機によるロシア機撃墜の件について
あくまでもこちらは南東欧情勢に関することのみ扱っているのですが、シリア情勢も西側・ロシア関係に多大な影響を及ぼし地政学的状況に変化を与える可能性があります。
私は今回の事件が西側・ロシア間に深刻な対立をもたらすとは今のところ考えておりません。
まず西側・ロシアは事態をエスカレートさせない努力を最初からしていると思われます。
ロシアが当初地上から攻撃された、露軍機はシリア領から出ていないと言っていたのはロシアはトルコ(とNATO)との関係を今回の件で拗れさせたくないという意図だったのでしょう。それは今でも変わっているとは思われません。
少なくともロシアのこうした態度は西側へのこれ以上事態をエスカレートさせたくないというメッセージと受け止められたでしょう。
西側も、NATOのワシントン条約4条(加盟国の領土保全)に基づく5条(防衛行動)を発動する構えは今のところないですし、NATOのストルテンベルグ事務総長は双方に外交努力と自制を呼びかけています。
http://www.atlanticcouncil.org/blogs/natosource/secretary-general-nato-stands-with-turkey-but-diplomacy-and-de-escalation-also-important
もし万が一なんらかの事態が生じて5条対応したところで、今進行中の「新冷戦」状態以上のモノになるかは疑問 です。
米仏首脳は今回の件をエスカレートさせないことで合意しトルコに自制を呼びかけています。
そもそも今のトルコ・ロシア間に核心的な利益をめぐっての対立がありません。トルコが独力でロシアと軍事衝突できる力を持たない以上、私は西側主要国を無視してまでロシアとの関係を危険なものにするとは思えません。
こうしたことから私は今回の事態をそう深刻にはとらえていません。
…と一応は思っているのですが…エルドアン政権が理性的であれば、ですね。
エルドアン政権が今後どのような対応を取るかについては、まだ観察が必要だというスタンスを私はとっています。
エルドアン政権が今回の件で西側の手綱に従うかは不透明で、トルコはNATOに依存しつつも、逆にNATOをロシアとの衝突に引きずり込もうとする努力をする可能性も否定できません。
これはエルドアン政権の思惑とトルコ国民の感情などをじっくり観察しないと見えてこないと思われます。
ただトルコはロシア軍機だから攻撃したというスタンスでは今のところなくロシアへの敵意はそれほど顕著ではない印象なのでそのあたりに救いはあるかと思います。
ただ、ロシア側はトルコを対テロ戦争の裏切り者だとあたかもNATO陣営からトルコを切り離そうとしているとみられる節があります。
ロシアは西側との決定的な関係悪化は望んでいないながらも、トルコ単独との関係悪化は読み込んでいると思っていいかもしれません。
それに対して西側がどう反応するかです。
あまりにトルコが単独で行動しすぎるのならば、それに対してNATOがフォローしきれなくなるならば、トルコとNATOとの間に深刻な亀裂が生じてしまうかもしれません。
それが今後のシリア情勢にどういう影響をもたらすのか、
またNATOの信頼性に深刻な瑕疵を与え、それが欧州本土における今後の安全保障政策に影響するのか、
このあたりについてはまだ答えを出すには材料も考察する時間も十分ではありません。
今日はこんなところでしょうか。
それでは、Na shledanou!
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