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デイトン体制崩壊の可能性?

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Dobry vecer!

エリシュカです。


今日はボスニアからのニュースをメインにいくつか。

まず、ボスニアの「チーフ・ムフティ」ムスタファ・ツェリッチの発言。

「デイトン合意は廃棄されるべきだ」

デイトン合意は、ご存知のようにボスニア内戦を終結させたデイトン会議において作成され、その後のボスニアの政体を決定したものです。

この発言の中でツェリッチは様々な現在の害悪を「ボシュニャク人が自身で自身のことを決定できない体制のせい」と断じています。

この合意は内戦を行っていた三民族を外部の者(西側のコンタクトグループ、クロアチアとセルビア)が介入して合意を作成したもので、内戦終結・安定化という当面の目的のためであり、これらが達成された後は外部勢力の関与は減らしていくのが確かに道理であるとはいえます。

しかし、ボシュニャク人・クロアチア人のボスニア連邦とセルビア人のスルプスカ共和国との関係が良好でなく、そもそも内戦からまだ15年しか経過していないこと、内戦の様態は凄まじいものでありこれらを十分に冷却・安定化させるには時間がかかることを考えると時期尚早だと言えます。

そもそもツェリッチのこの発言はボシュニャク人についてのみであり、ともにボスニア連邦を形成するクロアチア人について何も触れず、またスルプスカ共和国についてはなおさらであることを考えると、かなり危険だと思われます。

今まで書いてきたようにスルプスカ共和国のドディク大統領がボシュニャク人への不信感を露にした言動を取ってきたことを考えると、まだまだデイトン体制は必要であると思われます。


さて、ロシアの在セルビア大使コヌーズィンは改めてセルビアをロシアは協力に支持すると言明。

セルビアのニコリッチ大統領は9月11日にロシアのソチでプーチンとの会談が予定されています。

やはりEUとの交渉ではコソヴォがネックになるようですし、ロシアへの傾斜は変化はないと思われます。

そういえば、スルプスカ共和国のドディク大統領、

「コソヴォ北部はセルビアに残るべきだ」

南はいいと言うことなのでしょうか?


さて、ところ変わってカスピ。

トルコ、トルクメニスタンとの間でガスパイプライン建設に動く

トルコはどうとして、アゼルバイジャンとトルクメニスタンはこの件では手を結ぶことになるのでしょうか。

両国はカスピ海上で縄張り争いをしていましたが、そのガス田の奪い合いよりもトランスカスピ・パイプラインで設けたほうが良いと計算したのでしょうか。


それでは、今日はこのへんで。

Dobrou noc! Na shledanou!

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ボスニア、スルプスカ共和国側の不信

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はい、間をお開けしてすみません。

特に動きがなかったというのがありますが、管理人が始めての喪主としての初盆ですっかり消耗していたのが理由です。

さて、ボスニアのセルビア人側スルプスカ共和国、というか大統領のミロラド・ドディクの対ボスニア連邦(ボシュニャク人、クロアチア人)不信は高まっているようです。

「ボスニア連邦はセルビア人とスルプスカ共和国に対する軍事同盟だ」

これと並んで、ドディクは以下のように述べています。

「(スルプスカ共和国のだけでなく)全てのセルビア人は統合されたポリシーを持つべきだ」

「私は「ボスニアのセルビア人」ではなく、「セルビア人」だ」と述べています。

「スルプスカ共和国は「国家」である」

全てのセルビア人が一つの国境に住まうべきという大セルビア主義を髣髴とさせる表現です。

ドディクはボシュニャク人からの受けは悪く、これはボスニアをとりまく関係諸国が対応を誤ると、あるいは…という感触です。


現在のところニコリッチ政権はEUとの関係は一見良好ですが、ロシアとの関係強化も平行して行われています。

ヴチッチ副首相兼国防相、ロシアを訪問

セルビアとロシア、防衛産業での協力に合意


今日はこんなところでしょうか。

それでは、またよろしくです。

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(小話)ボスニア、コソヴォへの過激イスラムの浸透の可能性

anica2

Picka ti materina!

アーニツァだ。


大統領選はまあまあ予想したとおりだ。

決選投票の予想などはここでは書かないつもりだ。どうせ結果はすぐ出ることだし、その時点で今後どのように事態が進展するのか考えるほうがいいだろう。

だいたい集合離散が激しく選挙中に言っていることを信じていいのかわからない、しかもキャスティングヴォートを握っているセルビア社会党のダチッチが曲者とあっては予想は難しい。


今回は、こう書くのも悪い気がするが、軽く念頭においてもらえればあとで役に立つかもしれないということだ。


90年のボスニア・ヘルツェゴヴィナ内戦とコソヴォ紛争の話だ。

どちらもイスラム教徒が当事者であり、国際過激イスラム組織からの「援軍」があった。

彼らの目的はボスニアとコソヴォ、アルバニアに過激イスラムの拠点を築くことだった。

結果は、両方とも失敗した。

理由は二つある。

1. ボスニアのイスラム教徒もアルバニア人も世俗的すぎて過激イスラムとソリが合わなかった。

2. 両者の西欧志向。

1.はチェチェンでも見られたことだ。チェチェンのイスラムは「本流」から見れば大分変質したものである上に世俗的であり、援軍に来た過激イスラムの連中はまず現地人の信仰を非難したために彼らから「ヒゲ野郎」などと言われ反感を持たれた。

2.は西側諸国がイスラム側について強力に介入したためだ。

さらにダルマチア海岸地帯を占めるカトリック国のクロアチアがボスニアに過激イスラムが入るのを妨害した(例として1995年5月にイスラム側の指導者として入国しようとしたカッセムがクロアチアで行方不明になった)

アルバニアの場合、当時のサリ・ベリシャ大統領は過激イスラムに好意的であったことから同国内での拠点作りは若干成功したが、政権交代で新西欧の政権が誕生したことにより結局挫折した。

ちなみにこの作戦を指揮していたのが当時ジハード団首領、現在アルカイダでビンラディンの後継者と目されているアイマン・ザワヒリだ。→ザワヒリについて


現在はどうか?

まず、1.について。

これについては、あくまでも印象であることをお断りしておくが、

ボスニアのイスラム教徒(ボシュニャク人)はどうも最近宗教色が強くなってきたように思われる。

ボシュニャク人は内戦終結後「ボシュニャク民族(それ以前はボスニアのイスラム教徒としか呼ばれなかった)」としてのアイデンティティーを強調する傾向がある。

彼らは自分たちの言語を「ボスニア語」と規定した。彼らの言葉はセルビア語、クロアチア語とほとんど変わらないし内戦終結までこれらと同言語扱いされていたのだが、いまやボシュニャク人のボスニア語と規定し上二言語との差異を強調する方向に向かっている。

詳しくはここを見て欲しい。

これはまだボスニアの統一的公用語としては規定されていない。だが「ボスニア語」という名称は同じくボスニア・ヘルツェゴヴィナを構成するスルプスカ共和国のセルビア人には疎外的なイメージを与えているだろう。

このようにボシュニャク人は自分たちの独自性、他の二民族からの差異を強調するあまり、宗教色を強めている印象がある(ただしこれは現地調査にいかないと具体的にわからないので念のため)。

その反作用としてセルビア人が警戒を強め、さらにその反作用としてボシュニャク人が、という負のスパイラルに陥っていると思われる。


そして、アルバニア。

間が悪いことに、今のアルバニア首相はあのサリ・ベリシャだ。

ちなみに彼はコソヴォに接するアルバニア北部が基盤であり、KLAに武器を横流ししていたとみられているほとコソヴォに肩入れしている。


2.については今後のEUの状況いかんにかかってくるだろう。

EUが自滅し米国の欧州安全保障への関与の程度も不透明になってきている昨今、どの程度まで西側がボスニア、コソヴォ、アルバニアに関与できるのか疑問だ。


そして、仮にこの二つの地域がイスラムで盛り上がった場合に連動する可能性がある。

理由は、コソヴォとボスニアをつなぐセルビア領サンジャクの存在だ。

以前からのエントリで触れたように、サンジャクのボシュニャク人は宗教的になってきている。

それは、セルビアの今後の状況如何によるだろう。ニコリッチが当選する事態になって右傾化すればここに対する締め付けは強化され、過激化すると思われる。

それはコソヴォも同じだ。

アルバニアに以前のように過激イスラムが浸透すれば、

そしてコソヴォの(そして今後のセルビアの)状況如何でコソヴォにも浸透するような展開になれば、

サンジャクを通ってボスニアに通じるルートが開ける。1995年までのようにクロアチアに邪魔されることは無い。


とにかく、今後のEUの状況如何、

そして中東・北アフリカの状況如何だ。

中東・北アフリカの状況の混迷化に乗じて過激イスラムが浸透するか否かはここで論じることはしないが、

EUの弱体化と中東・北アフリカへの過激イスラムの浸透が同時に起こればバルカンのこの地域にも浸透してくる可能性はある。



それでは今日はこんなところだ。

Laku noc i Do vidjenja!

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ボスニア内閣組閣

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おうふ

どうやら一昨日のエントリ投下したすぐあとに成立したらしい

これは昨日の記事なのだが、昨日はチェックできなかった

ボスニア内閣組閣


この記事にはまだ結果が出ていないのだが、首相はクロアチア人側から出すことになった

閣僚は、安全保障・外交・インフラがボシュニャク系、財務系がセルビア系、

ドディクの党も参加か。

あくまでもこれを見た限りではバランスは取れている

とりあえずこの方面では危機の深化はクリアしたかなぁ


さて、今年もこのエントリが多分最後になるが(今晩・明日ニュースがあったらエントリ投下するかもしれん)、

来年の抱負としては、もっと時間を取ってソースをより広く探って見るかなぁ。

他のメディアからの情報まとめ的なB92のサイトが重宝すぎてついここにばかり頼っていたのだが

ただ英語以外の言語の記事はソースとしてそのままリンク貼るのはどうかと思うし

かと言って時間的に翻訳もできないし

そのあたりは次回までに考えておく。


管理人が喪中につき新年の挨拶ができないのでお詫びしておくぞ。


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ボスニア政権発足難航

anica2

Picka ti materina!

アーニツァだ。

全体的に動きがないので今日も簡単なニュースだ。


ボスニアの6政党、政権樹立に向け会談

選挙以降15ヶ月この状態が続いている。


非常に分かりにくいので今までのエントリでの説明をふまえて簡単に話しておくが、

ボスニア・ヘルツェゴヴィナは前にも書いたとおりセルビア人の「スルプスカ共和国」とクロアチア人、ボシュニャク人の「ボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦」で形成される。

その上で、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ全体の国家元首はどうなるかというと、両構成国ではなく、各民族の代表が4年ごとに選出されて「大統領評議会」というものを構成する。

で、その三人が8ヶ月交代で国家元首としての「大統領評議会議長」に任ぜられる。

構成国単位ではなく「各民族」であるのは、内戦という経過を踏まえた結果だ。

で、その下に議会がある。

これが政権発足ができずにグダグダしているのだ。


気になるのは、スルプスカ共和国大統領ドディクが率いる政党が疎外される可能性があるということだ。

今までここのエントリで書いてきたようにドディクとボシュニャク人との間に亀裂ができている。

これが、この流れの中で悪化するのではないかというのが今回のポイントだ。


それでは、今日はこんなところだ。

Laku noc i Do vidjenja!

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プロフィール

crnaoluja

Author:crnaoluja
こんにちは。
東欧地域の戦略環境分析が専門のシンクタンクで研究員をしておりますチェコ出身のエリシュカ・マジャーコヴァーと申します。

ネクロマンサーのすぴか、その一味のミルチャ・アントネスクとともに東欧情勢について御説明していきたいと思います。

ハンガリー以北(V4)+バルト三国は私、南東欧がミルチャ、地政学・戦略論など理論面はすぴかが担当致します。

文責は @crnaoluja (twitter)

ミルチャのアイコン絵はあんねこ先生より頂きました。
http://a-n-neko.tumblr.com/

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