epub出版システムの作り方
電子書籍の記事はたくさん見かけるが、まだどこもビジネスモデルとして確立していない。
オライリージャパンやオーム社は、独自のepub出版システムを作って、今までにない新しい出版スタイルを築こうとしている。
技術的側面とビジネス的側面についてメモ書き。
【元ネタ】
オライリー・ジャパンのePUBフォーマットを支える制作システム - O'Reilly Japan Community Blog
【1】電子書籍の本命はepubフォーマット。
epubは所詮、HTMLとCSSをZIP化したファイルに過ぎないが、iBooksやStanzaのような電子書籍リーダーの上で滑らかに紙の本のように読むことができる。
epubは電子媒体ゆえに、コピーも簡単だし、ネット上で配布も簡単。
技術的には、テキストというオリジナルの原稿があれば、epub用のHTMLに変換してZIP化すればいいから、バッチ処理として実装すればいい。
オライリージャパンやオーム社のepub出版システムは、GitやSVNにあるテキスト原稿からバッチ処理でepubフォーマットの電子書籍を常時ビルドする仕組みと同じだ。
技術的に面白い点は、バッチ処理で常時ビルドする仕組みとして、CIツールのJenkinsが現れること。
Jenkinsは単なるビルド管理ツールではなく、高機能なCronだけでもなく、高機能なバッチ制御ツールとして認識すべきだ。
個人的には、高橋征義さんが主催する達人出版会が持つ「ReVIEW」というEPUB/PDF生成ツールに興味がある。
テキストをepubやPDFへ変換する処理をRubyで実装している点が興味深い。
EPUB生成ツール「ReVIEW」について達人出版会の高橋氏に聞いてみた - builder
1つのソースでEPUBとPDFを生成できる「ReVIEW」を試す - builder
【2】ビジネスモデルとしては、本来はAppleのiTunesとiPhoneのようなソフトとデバイスを組み合わせた上で、epub形式の電子本を提供することをどの会社も狙っている。
だが、再販制度などの法律や日本独特の出版の商慣行のために、変化が見られる気配はない。
Appleが音楽をソフトウェアに変換したことで、音楽を聞く行為そのものは本質的に変わってしまった。
電子書籍も紙の本をソフトウェアに変換することで、書籍を読む行為そのものが本質的に変わる可能性がある。
個人的には、週刊誌や漫画、雑誌などのように生鮮食料品並に購読期間が極端に短い書籍は、エコの観点からも積極的に電子書籍にしてしまうべきだと思う。
1週間後、1ヶ月後には、週刊誌や漫画、雑誌はゴミ箱に捨てられてしまうのだから。
新聞も電子書籍に変えてしまうべきだ。新聞は粗悪な紙で印刷されていて、肌触りも悪いしあまり読みやすい代物とは言えない。1日の賞味期限しか無く、翌日にはゴミ箱に直行するから。
電子書籍はSaaSの一つに過ぎない: プログラマの思索にも書いたけれど、電子書籍はAppleの音楽配信と言うSaaSと同じく、SaaSの一つと捉えた方がいい。
だからこそ、ソフトウェアの技術力が高い会社が電子書籍のビジネスモデルを制覇する資格を持つ。
お金や権威のある会社がそのビジネスモデルを創りだそうとするのは自己破綻に近いのでありえないから。
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