正直、オナニーする気も起きないレベルでショックを受けている。
今朝、俺が唯一社内でまともに話をしたことがある同僚女性の結婚が上司から発表されたんだが、その相手を見て、俺の理性は完全に崩壊した。
彼女は他の女性と違い、俺に対しても他の社員に対する時と態度を変えず、ただしイケメンに限るなどと言う価値観を持たない「真に成熟した女性」だと思っていた。俺が社員の前で上司に叱責された時も、後で「大丈夫ですか?」と心配して声をかけてきたし、俺も内心で「こういう女となら結婚できるかも」と目をつけていたのだ。
その旦那だという男の写真を、同僚の連中が冷やかしながら回し見ているのを、後ろからこっそり盗み見た時の、俺の怒りと絶望感がわかるか。
せめて金を持っていそうな経営者風の男とか、顔だけのホストみたいなチャラ男だったら、「やっぱり女は金か顔につられて股を開くバカ」と開き直れただろう。俺はそうやってこれまでもモテる事のなかった自分を納得させてきたのだ。
現実は、どっちかと言えばお前もチー牛側だろ、という容姿の介護士。
明らかに「顔」でも「金」でもない基準で選ばれた男だった。こいつと俺と何が違うんだよ。
いや嘘だ。本当はわかっている。
盗み見したカメラロールの中で、その男と俺に気を持たせた裏切り者の女は、さまざまな場所(デートスポットなのだろう)へ行き、スタバのフラペチーノみたいなものを持って、映え〜とでも言うような画角で写っていたり、遊園地でカチューシャを付けていたりするのだった。
そこにあるのは俺には近づくことすらできない「恋愛」なのであった。
「金」だけで選ばれました感満載の、典型的な成金親爺だったらどんなに良かっただろう。こいつの中身なんてスカスカで、あの女は結婚した事をきっと後悔するだろうと思えたら。他に若い女が現れたら捨てられるに決まってるんだから、傷ついて見る目のなさを反省するんだと思い込めたら。
しかし結局、地味な黒縁眼鏡の、介護職というくらいだから低収入に決まっていて、少し小太りの、笑顔が眩しい男の写真を見せながら照れている女は、それはそれは幸せそうなのだった。
あまつさえ、彼はウマ娘が好きなので、一緒にライブ参戦したんですなどと言っているのだ。
どうして俺は結婚していないんだ(していないんじゃなくて、できないのだが)。
年収300万でも、チー牛でも、アニオタでもいいんだろ?じゃあなんで俺じゃないんだよ。こんな所で罵詈雑言を吐いている根暗だからか?いや違う。違う。俺はこうなりたくてなったのではない。悪いのは俺を日の当たる所に連れ出さなかった、俺と一緒に遊園地でカチューシャを付けたりしようとしなかった女だ。
俺だって青春を経験していたらもっと別の人間になっていたはずだった。
しかし俺はずっと女から敬遠されてきたのだ。俺は、俺が優位に立てる、気が優しくて俺を尊敬してくれる女などどこにもいない事をもう薄々知っている。
あの女のことは好きだったわけじゃない。
そうだ、あの旦那になる奴だって、実家が地主とか、セックスが強いとか、なんかそんなんがあるんだろ?所詮はあの女も「メス」だったんだろ?
そう言ってくれよ。幻滅させてくれよ。
顔でも収入でもなく人間性で俺は選ばれなかったんだなんて現実に耐えられないんだよ。
なあ、どこかに救いはないのか?