「安田解放」を叫ばないでと友人は訴える

4月19日シンポ

 うちの会社で、スタッフが足りなくて困っている。
 しばらく前からホームページで「AD急募!」と出しているのだが。他の制作会社でもADが来ないという。ちょっと前までは、給与は安くてもテレビの世界で働きたい・・という若者がたくさんいたのに。ある人から、そもそも若い人はテレビを見なくなっているんだよ、と言われた。斜陽産業なのか。
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 ヒラリー・クリントンが民主党候補者選びで「勝利宣言」した。
 他国ではあってもアメリカの大統領選挙には関心を持たざるをえない。いいか悪いかは別にして、いま世界秩序の形成に主導的に乗り出して影響を与えられるのはアメリカだからだ。トランプVSクリントンでは、史上最も好感度の低い候補者同士の闘いになると言われる。クリントンの権力欲をむき出しにした表情、振る舞いには私も辟易するのだが、トランプよりはまし。
  ペルーの大統領選挙はケイコ・フジモリがぎりぎり及ばないようだ。選挙戦の盛り上がり方はちょっとうらやましい。
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きょう発売の雑誌『創』7月号に、「安田純平さん拘束事件」の特集が載っている。
4月19日の安田さん拘束事件を考えるシンポジウムの記録だ。

6日のブログで紹介したジャーナリスト藤原亮司さんのシンポでの発言を取り上げよう。この認識には、安田さんに親しい友人たちに共通する点があると思うからだ。

《(略)彼がつかまって以降、公にはずっと情報がなかったのですが、昨年12月22日付で、「国境なき記者団」という団体が声明を出しました。その内容は、日本政府が解放交渉を行わなければ安田純平は人質として転売されるか殺されるであろうというものでした。なぜそんな発表がなされたかというと、セキュリティ会社の社長を名乗るスウェーデン人の男がおりまして、それまでもずっと日本のメディアや政府に自分が仲介役になれる、交渉できると持ちかけて、一儲けしようと企んでいたのです。しかし相手にされず、国境なき記者団でよく知っているベンジャミンというアジア太平洋担当デスクに話を持ちかけた。そして彼が上司の判断を得ず、会社の会議にかけずに個人の判断でリリースを出してしまい、世界に広まってしまったということです。
 それは全くの誤報であり、国境なき記者団に抗議を送ったところ、ベンジャミンの上司からすぐにメールが返ってきて、撤回させるとのことでした。私だけでなく複数の人が働きかけたと思いますが、それによって国境なき記者団は、声明を取り下げたわけです。
 その後、今年の3月、今度は安田純平さん本人がビデオで語っている映像が流れ、大きく報道されて知られることになりました。今日のシンポジウムの開催趣旨にもありますが、「こういう局面で私たちが何をすべきか、何ができるのか」―。私は、何もしないでほしいと思っているんです。というのは、安田さんが3月16日のメッセージの中で、ご家族や奥様、ご兄弟のことを言っています。「いつもみんなのことを考えている。みんな抱き締めたい。みんなと話がしたい。でも、もうできない」。これは、安田さんが家族や関係者に伝えようとした強烈な覚悟、意思表示だったと思うんです。自分は身代金による解放を望んでいないので、もう家族たちには会えないだろうという決意表明をしたのだと思います。私はこれは、一人の職業人として、ジャーナリストとして、本当に立派な覚悟のしかただと思っています。
 安田さんは過去に一度、3日間ほどではありますが、イラクでも拘束されたことがあります。戦場においてジャーナリストや取材者が一時的に拘束されるというのは、時々起りうることなんです。12年前にイラクで安田さんが拘束されたこともよくあることの一つだったにもかかわらず、大きく扱われてしまった。高遠菜穂子さんら他の3人の誘拐事件とタイミングが重なったために、非常に大きな扱いをされたわけです。
 それ以降、彼はずっと、自分がもしどこかで拘束されたり、身の上に何かがあった時どう処すればいいかを考えて取材地に向かっていったはずです。彼はそれを、今回ヌスラ戦線と思われるところから流れてきたビデオによって、しっかりと表明したんです。それに対して我々はじめ同業者、あるいは関係者や一般の人たちが、政府に安田さんを解放してやってほしいと働きかけることは、安田さんの意に反することでもあるのです。これは国家が国民の身に何かが起きた時に、尽力する責任がある、義務があるということとは全く別の話で、当然政府にはそうした責務があるのですが、一方で安田純平さん個人が、自分の職責において、政府による交渉を望んでいないので何もしないでくれという訴えかけをしてきた時、私は友人として、同じ仕事をしている人間として、彼の意志を尊重したいと思うんです。
 また、闇雲に政府に働きかけたり、それによって政府が何か動いたり、また我々の側からヌスラ戦線に解放してくれとアピールするといったことは、身代金を欲しがっている人間のことをこちらか宣伝してやっているようなものです。それは安田さんに何のメリットもないことだと、僕は思っています。》