シリアに入れない日本人ジャーナリスト

放送予定です。
「情熱大陸」の新年第一作はうちの制作です。
1月3日深夜0時から 「看護師 大滝潤子」

世界最大級の難民キャンプで今、何が起きているのか?“国境なき医師団”のスタッフとして 最前線で闘い続ける39歳女性に密着!

 2014年、エボラ出血熱治療の最前線で看護師として命懸けの治療にあたっていた大滝潤子。今年、大滝はアフリカ・タンザニア西部にいた。そこは、隣国ブルンジの政治混乱により毎週3千人もの避難民が流れ込み、今や世界最大の難民キャンプ(約18万人)となっている場所だ。番組では、大滝が医師団の統括リーダーとして陣頭指揮に当たる姿に密着する。日本のテレビカメラは殆ど入ったことがないこの地で今、一体何が起きているのか?難民キャンプの最前線をひた走る39歳 女性の姿を追った。
http://www.mbs.jp/jounetsu/

 いま鋭意編集しております。ぜひご覧ください。
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 きょう午後、日韓外相会談で慰安婦問題が合意に達した。
 サハリンの残留朝鮮人、東南アジアの残留日本兵、北方領土など戦後処理の問題に首を突っ込んできたので、慰安婦問題にも注目してきた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100509

 きのう、かみさんが、慰安婦の実態はどんなものだったのかと聞くので、『文玉珠(ムン・オクチュ)―ビルマ戦線 楯師団の「慰安婦」だった 私 』(梨の木舎)を渡したら、ずっと夢中で読みふけっている。この本はおもしろい。おすすめです。
 ビルマのある慰安所に送られ、人気ナンバーワンとなった慰安婦の証言で、リアルな描写に引き込まれる。この本を読んだ後は、慰安婦を一言で「性奴隷」だとか「売春婦」だとか言えなくなるだろう。日韓合意については、またいずれ書こう。
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 さて、安田純平さんがシリアで武装グループに拘束された6月23日から半年経つ。
 拘束者が沈黙しているため、拘束が長引いている理由は推測するしかない。
 昨日は、常岡浩介さんの推測として、ヌスラ戦線が置かれた微妙な立場を紹介したが、なるほどと思わせられた。
 きょうは、解決を長引かせる要因になった可能性のある事情をさらに二つ上げておこう。
 一つは、安田さんの救出にもっとも貢献しうる人々の動きが制限されたことだ。
 例えば常岡浩介さんである。彼は7月12日トルコへと向った。
 シリアに入り、拘束者たちと接触し身柄解放を説得しようとしたのだ。安田さんが「スパイ」や「軍人」などではなく、ジャーナリストであると身分を証明するため、安田さんのテレビ出演時の映像や発表した記事、著作などを持参していた。ところが、到着したトルコの空港で入国拒否にあい強制送還された。直談判の計画は夢とついえたのだった。
 実は、すでに5月に、二人の日本人、鈴木美優さんと横田徹さんが、トルコの空港で入国を拒否されている。鈴木さんと横田さんはいずれも安田さんとは懇意で、シリアに土地鑑も人脈もある有能なジャーナリストである。
 こうして安田さん救出に具体的に協力できる人たちが、現在、ことごとく現地に近づけないでいるのだ。
 トルコが彼ら3人の入国を拒否した理由は、シリア取材歴だと思われるが、日本政府がトルコ政府に働きかけた可能性もあるのではないかと私は疑っている。
 私も執筆者の一人である『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか』(集英社新書、12月発売)に、アメリカをベースに活動する報道写真家、高橋邦典さんが、日本政府に移動を妨害された経験を書いている。06年、高橋さんはイラクへのビザ申請を却下されたが、それは日本政府がイラク情報省に日本人にビザを出さないよう要請したためだったという。

 もう一つの困った事情を作り出しているのはメディアだ。
 7月中旬の『ニューズウィーク』にこんな記事が載った。

 東京のジャーナリスト、ユウ・テラサワ(寺澤有)が7月5日に、「イスラム教に改宗しISIS武装勢力と密接なつながりをもつコウスケ・シャミル・ツネオカから得た情報によると、ヤスダはISISではなくアルカイダ系のヌスラ戦線に誘拐されたという」。
 He told Newsweek that, according to information he received on 5 July from Kosuke Shamil Tsuneoka, a Japanese journalist who converted to Islam and has close links with Isis militants, Yasuda has been kidnapped by al-Qaida-affiliated Jabhat al-Nusra rather than Isis.
http://europe.newsweek.com/japanese-journalist-goes-missing-syria-330290

 これでは、ISIS(「イスラム国」)の手先(常岡さん)がヌスラ戦線の情報を告げ口しているように受け取られかねない。ヌスラ戦線はISISにとっては、最も激しく戦っている相手、いわば不倶戴天の敵である。この英文記事は転送もされ、ヌスラ戦線にも当然読まれたと考えなくてはならない。常岡さんによると、ヌスラ戦線が警戒したのか、この記事の後からは、情報が入らなくなったという。
 今回の国境なき記者団の声明で始まった「カウントダウン」報道も海外メディアに乗ってヌスラ戦線の拘束者たちに伝わっていることだろう。
 そのことがどんな影響を及ぼすのだろうか。問題はそこだ。
(つづく)