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確定拠出年金の死角

kage

2014/01/26 (Sun)

NISAが話題になって以来、同じ非課税ならさらにメリットが大きい確定拠出年金を使える人は使った方が良いというご意見をよく耳にするようになりました。私自身もこのご意見には諸手を挙げて賛同いたします。しかし非課税のNISAにもメリットとデメリットがあるように、確定拠出年金にもそれなりの死角が存在します。そこで今回のエントリーではあえてその死角にスポットライトを当ててみたいと思います。

それでは死角を語る前にまずメリットを確認しておきましょう。以前、SBI証券 確定拠出年金積立プラン(個人型401K)を紹介したこちらのエントリーで私は下記のように書いています。

(確定拠出年金には)「掛金は全額所得控除の対象となる」「確定拠出年金として運用している限りは譲渡、配当、利子などの課税が免除される」「年金と一時金のいずれの受け取り方法でも税制上の優遇措置の対象となる」などのメリットがあります。さらに確定拠出年金用に選択可能な投資信託は販売手数料や信託報酬などの費用も優遇されていますので、既存の年金の補完を求める方だけでなく信念を持って長期運用を目指す方にとっても有力な選択肢となり得ると思います。



これらのメリットは長期投資を志す個人投資家にとって間違いなく大きな魅力となるでしょう。それでは反対に確定拠出年金の死角となるのはいったいどのような点でしょうか?この件については相互リンクしていただいている吊られた男さんが「確定拠出年金の2つの罠」の中で以下の2点を挙げておられます。

【罠1: 特別法人税】

冒頭でご紹介した当ブログのエントリーで私は特別法人税について以下のように書きました。

<注意>
確定拠出年金には運用資産に対して毎年1.173%の特別法人税(住民税込み)が課税されます。ただし日本独自のこの課税制度には多方面から撤廃要望が上がっており、現時点では2008年(平成20年)3月末まで課税が凍結されています。今後は秋に始まるいわゆる「抜本的税制改革」の中で消費税や証券税制とともにそのあり方が議論されるものと思われます。(中略)2011年6月22日追記:参議院の議決を経て特別法人税は2014年(平成26年)3月31日まで凍結が延長されました。


さらにこちらのエントリーでは以下のように書いております。

急速な少子高齢化が進行する日本では例えアベノミクスが成功したとしても社会保障制度の大胆な改革が必要不可欠です。年金制度の大胆な改革とは受給開始年齢の引き上げと給付額の削減に他なりません。国民に痛みを求める際に現在凍結中の「特別法人税」が長い眠りから覚めて蘇る可能性は十分にあるのではないかと私は考えています(確定給付型年金だけ痛みを求めるのは不公平というおかしな論理で)。


特別法人税の恐ろしいところは資産課税である点です。利益に対して課税されるのではなく、運用資産に対して毎年1.173%の特別法人税(住民税込み)が課税されるのです。ですから例え運用成績がマイナスでもその魔の手から逃れることはできません。もしこの特別法人税が長い眠りから目覚めて復活するようなことがあれば、確定拠出年金は個人にとって最悪の資産運用法に転落してしまう危険性を孕んでいるのです。とりあえず現在は今年の3月31日までとなっている凍結期限がどうなるのかに注目です。

【罠2: 追加拠出も撤退もできないことがある】

冒頭でご紹介した当ブログのエントリーで私は、「厚生年金基金のある企業にお勤めの方、共済年金の加入者(公務員)、第3号被保険者(サラリーマンの妻など)は確定拠出年金に加入することができません」と書きました。つまり確定拠出年金加入者がこれらの立場に変わると、それまで積み上げた確定拠出年金が宙に浮いてしまうのです。ただし引き続き運用の指図は可能ですので、NISAの他に非課税の特別運用枠をもらったと思って納得するしかありませんね。

2016年5月24日追記:本日衆議院本会議で改正確定拠出年金法が可決され、2017年1月より新たに専業主婦(主夫)、公務員、すでに企業年金に加入している会社員などの加入が可能になります。これにより上記のような「宙ぶらりん」状況は改善される見込みです。

これらに加えて確定拠出年金にはさらに大きな死角があると私は考えています。そのことについては吊られた男さんの上記のエントリーに私自身がコメントを入れています。

1. おやじダンサー 2012年05月29日 07:50
個人的には課税関係も罠のひとつだと感じています。確定拠出年金の運用益は非課税ですが、運用損失の救済措置は一切ありません。また運用成績がマイナスでも受け取り時は課税対象となります。


運用損失の救済措置が一切ないのはNISAも同じですが、問題はその次です。確定拠出年金は例え運用成績がマイナスであっても受け取り時は課税の対象となるのです。具体的には確定拠出年金を受け取る際に、一時金の場合は退職所得として、年金の場合は雑所得として、それぞれ課税の対象となります。冒頭で「年金と一時金のいずれの受け取り方法でも税制上の優遇措置の対象となる」をメリットのひとつとして挙げましたが、実はこれがデメリットと表裏一体だったわけですね。NISAでは運用損失の救済措置が一切ないだけで済むのに、確定拠出年金ではさらに税金まで払わなければなりません。まさにこれは「泣きっ面に蜂」状態ですね。もっとも現実にはトータルで考えれば拠出時の所得控除のメリットの方が受け取り時課税のデメリットを上回るという判断になるのでしょうが、運悪く運用成績がマイナスになってしまうと大変残念な状況となってしまうことはあらかじめ知っておく必要がありそうです。そこで私は罠3として以下の一文を追加させていただきたいと思います。

【罠3: 運用成績がマイナスでも受け取り時には課税の対象となる】

このように確定拠出年金は長期投資を志す個人投資家にとって間違いなく魅力的な選択肢ではありますが、いくつかの死角も存在することを十分に理解して、納得した上で加入するようにしてください。

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