傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

まろやかな地獄

疫病が流行しているので不要不急の外出が禁じられた。職場においてもできるかぎりのリモートワークが推奨されたが、ものには限度がある。「不要不急」の範囲は感染状況だけでなく政治的な要因で拡大縮小され、さらにそれを「忖度」した人々が他者を監視し、…

僕が正常になった日

疫病が流行しているので不要不急の外出が禁じられた。そのために人々は個人的なコミュニケーションに困り、インターネット越しに話したりしていたようである。僕にはそういうのはとくに必要ないのでやらなかった。数ヶ月間くらい私的なコミュニケーションが…

そしてわたしは嘘をつく

疫病が流行しているので不要不急の外出が禁じられた。しかしながら引っ越しはいまだ認められている。「要」で「急」であるという審査を通るかぎりにおいて。具体的には労働もしくは「家族」の要請するかぎりにおいて。 この社会は第一に自助、それから血縁・…

ステイ、ホーム、ステイ

疫病が流行しているので不要不急の外出が禁じられた。そのためにわたしは血眼で自宅にいながらしてできる賭けを探している。 公営ギャンブルや商業的なギャンブルはやらない。わたしにはそれほどおもしろく感じられないからだ。小銭を賭けて胴元に一定額を巻…

僕の運命の男

疫病が流行しているので不要不急の外出が禁じられた。だから僕は僕の運命の男に会うことはもうないのだろうと思う。 色恋沙汰の話ではない。彼は僕の高校の同級生で、特段に親しいというのでもない。差し向かいで話したのは数えて十回ばかりである。でもその…