傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

彼の人工的な盲点

トオルが十歳になったので、トオル一家および「トオル会」のメンバー五名でお祝いをした。内実はただのホームパーティである。トオルは私の学生時代のゼミの先輩の息子で、障害がある。トオルの障害があきらかになった段階で先輩は何人かの学生時代の友人を…

JR両国駅前24時30分の和平

わたしはあたたかいラーメンを待っていた。両国には商業施設もあるが、お隣の錦糸町よりは繁華でない。終電近くの時間帯に駅前のラーメン屋に入るのはだいたい帰途にある住民である。そんなだから、見知らぬ者同士ながら、店の中には何となく連帯感が漂って…

彼女は私をゴミみたく捨てる

人間が精神的に乱れるのは思春期にかぎったことではない。人生の中で何度か起こりうる。そのときはできるだけいろんなリソースを使って立ち直るのがよいと私は思っている。だから昔の友人知人が連絡してきて不安定なようすであった場合、できるかぎり力にな…

主人は子煩悩じゃありませんから

子どもたちがいっせいに笑った。読み聞かせが受けたらしい。読んでいるのはわたしの夫である。保護者会の後に子どもたちと保護者たちの交流の時間があって、その一環として読み聞かせの場がセッティングされ、わたしの夫が立候補したのだった。わたしがにこ…

犠牲者は誰だ?

彼と組むくらいなら辞めます。女性医師がそう言う。「彼」が何をしたのかといえば、彼女には何もしていない。ただ酒の席で不用意な発言をしたらしいという、それだけのことが明らかになっている。それでもわたしは、何度検討しても彼に辞めてほしくって、彼…