今から約5億9000万年前の地球は磁場が異常に弱まり崩壊寸前だった。ところが、どうやらこのイベントが「エディアカラ生物群」と知られる当時の多種多様な生物たちが誕生したきっかけになったのかもしれないとする研究結果が発表された。
これは一見直感に反するように見える。磁場(地磁気)は宇宙から降り注ぐ有害な放射線を防ぐバリアだ。ならば、このバリアが弱くなれば、むしろ生物は減るはずではないか?
しかしロチェスター大学をはじめとする研究チームによると、地磁気が弱まったことが、大気と海洋の酸素レベルが大幅に上昇するきっかけになったという。
それが初期の生命に多様性を促し、絶好の条件を作り出したというのだ。
地球の磁場が弱まったのに、なぜ生命が続々と誕生したのか?
数年前、カナダで採掘された岩石の磁気の痕跡から、今から5億6500万年前に地球の地磁気が最低レベルにまで弱くなっていたことが明らかになった。
地磁気は、地球が持つ磁性で、地球により生じる磁場のことだ。
これは少々奇妙に聞こえる。というのも「エディアカラ紀」と呼ばれるその地質時代は、「エディアカラ生物群」として知られるさまざまな多細胞生物が登場したことで知られるからだ。
宇宙から降り注ぐ放射線や太陽風は生物にはきわめて有害だが、地球の地磁気がバリアとなってそれを防いでくれるおかげで私たちは生きていける。
もしも本当にエディアカラ紀の地磁気が薄っぺらくなっていたのだとしたら、なぜそうした生物たちが花ひらいたのだろう?
一方、生物を守るのは地磁気だけではないという意見もある。
たとえば、天文学者のカール・セーガンは、地磁気が弱まったとしても、大気と海が初期の生命を守ったと主張しており、それを裏付ける研究もある。
とはいえ、「地磁気の弱まり」「エディアカラ生物群の誕生」「地球の大気」とにどのような関係があるのかは定かではない。
そもそもカナダで発見された地磁気の弱まりを示す痕跡が、例外的なものである可能性だって否定できない。
最低レベルの磁場は2600万年間続いた
そこで今回の研究チームは、ほかの地域にある太古の岩石を調べてみることにした。
1つは南アフリカで掘り出された数十億年前の火成岩、もう1つはブラジルで採取された5億9100万年前の岩石だ。
そこには磁気を帯びた鉱物が含まれているのだが、これが岩石が形成された当時の地磁気の強さの痕跡をとどめている。
こうした地磁気の痕跡から明らかになったのは、ちょうど20億年前の「古原生代」と呼ばれる時代において地磁気は強かったが、それから15億年もすると現在の30分の1程度にまで弱まっていたということだ。
この結果とカナダの岩石から判明した事実を踏まえると、この弱い地磁気(超低時間平均磁場強度/UL-TAFI)は、5億9100万年~5億6500万年前までの2600万年間は続いただろうと考えることができる。
地磁気の弱まりで酸素レベルが大幅に上昇した可能性
奇しくも、この期間は、エディアカラ紀後期の大気や海の酸素が急激に増加した時期(5億7500万~5億6500万年前)と重なっている。
これは「地磁気の弱まり」「生物多様性の増加」「酸素の増加」が何らかの形で関係している可能性を示唆するものだ。だが、一体どのように?
研究チームの仮説はこうだ。
地磁気が弱くなったことで、大気の水素イオンが宇宙へと逃げやすくなり、これが酸素の増加につながった。
そして酸素が濃くなった結果、この時代の生物多様性は爆発的に増加することになったというのだ。
生物多様性の増加というと有名なのは「カンブリア紀」だ。「カンブリア爆発」と呼ばれるその現象によって、現在存在する「門(ボディプラン)」のほとんどが揃ったと考えられている。
このとき登場したのが複雑な生命であるのに対して、エディアカラ生物群は海藻やクラゲのような、もっと原始的でぐにゃぐにゃした生き物たちだ。
そうした生物はある意味、生命という自然現象の実験体のようなもので、その多くが結局は行き詰まり消えてしまった。
そのため地球の生物多様性は、カンブリア紀の爆発が起きるまで再び減少することになる。
とはいえ、最初の複雑な生態系はエディアカラ紀に形成された可能性があることも最近の研究によって明らかにされつつある。
大きく複雑な生命には酸素が必要だ。小さな海洋動物や海綿は、酸素に乏しい海でも生きられるかもしれないが、複雑な体をもち、移動するタイプの動物は、その代謝を支えるために大量の酸素がなければならない。
長い食物連鎖と捕食者によって織りなされる複雑な動物生態系には、より大量の酸素が必要となる。現代の酸素に乏しい環境において複雑な生態系がないことからも、そのことがうかがえる
と論文で説明されている。
だからエディアカラ紀の生物たちは、地磁気が弱くなり、酸素が増えるというチャンスが訪れた時、一度はそれをつかんだのだ。だが、やがて進化の袋小路に陥り、消えていった。
この研究は『Communications Earth & Environment』(2024年5月2日付)に掲載された。
References:Life Blossomed When Earth’s Magnetic Field Nearly Collapsed 590 Million Years Ago : ScienceAlert / Earth’s Magnetic Field’s “Near-Collapse” 590 Million Years Ago May Have Helped Complex Life | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
> 「カンブリア爆発」と呼ばれるその現象によって、現在存在する「門(ボディプラン)」のほとんどが揃った
ボブディランに何の関係があるんだ?ボブは訝しんだ。
あぁ勿論、現代でこのレベルの地磁気異常が発生したら人類を始めとした地上の生物は細菌に至るまで絶滅してるから理論的矛盾は発生しないから安心してくれ
>>2
多分振りそそぐ宇宙線で奇形がたくさん生まれたのでしょうけど、生き残ったものもそれなりにおおくそれが生物の多様化につながったのではないかと素人考えを思いつきました。
特に水中では宇宙線の弱まり安くて生き残りやすかたんじゃないでしょうかね。今も同じことが起こったら我々を含む陸上の生物は絶滅しそうですけど、水中の生き物は変異しても生き残りそうな気がします
>大気の水素イオンが宇宙へと逃げやすくなり、これが酸素の増加につながった。
これの意味が分からない。なぜ大気中の水素イオン減少が海中の酸素濃度増加に繋がるんだ?
大気中の水素イオンが海中の酸素と結びついて化合してしまうとしても、海面を通して行われる化合反応には限りがあると思うんだが…
あと、これだけで「生物の進化には新たな要素が必要になった!これは生物の存在が”奇跡”である証明だ!」みたいに主張する人が出てこないか心配だね
現時点では単に相関性が認められるだけでしかなく、因果関係は全く不明の当て推量でしかないのだからな
>>3
大気中の水分子は磁場がないと太陽光や宇宙線でどんどん分解されて軽い水素が宇宙に散り重い酸素が残るという理屈
風が吹いたら何屋が儲かるのか皆目見当が付かないな
進化は生き残った海中生物の話
変異が増える分生き残れる変化も増えるって普通じゃないの
バリアがパリーンって割れてからが本番
金星も重水素は残ったからな。
君は 何を 今 見~つぅ~めてるの♪