メインコンテンツにスキップ

地球温暖化なのに冬が寒いのはなぜ?北極の温暖化が冷たい寒気をもたらしていた

記事の本文にスキップ

8件のコメントを見る

著者

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

 地球温暖化は実際に起きている。世界の平均地上気温は毎年のように更新され、その暑さを肌で感じる人も多いだろう。しかし、一部地域では冬が異様に寒くなる現象が起きている。それはいったいなぜなのか?

 一見矛盾しているように思えるこの現象も、実は温暖化による影響だという。

広告の下に記事が続いています

 英国リンカーン大学の気候学者たちは、アジアや北アメリカを含む北半球各地で頻発する寒波の原因を調査した。

 その結果、北極で進む温暖化がほかの地域に比べて数倍も速いペースで進行しており、それが寒波の引き金になっているという。

地球は暑くなっているのに冬が寒いのはなぜか?

 近年、夏の記録的な暑さが繰り返しニュースになる一方、冬には極端な寒波が襲来し、アジアや北アメリカ各地を異常な寒さで震え上がらせている。

 リンカーン大学の気候科学者エドワード・ハンナ教授は、この奇妙な気候について次のように述べている。

強力な地球温暖化が続いているにもかかわらず、ここ10~20年ほどの間、ユーラシアや北アメリカの北半球中緯度地域は驚くほど厳しい寒気に見舞われ、社会も経済も大きく混乱しています

「温暖化が進んでいるのに、なぜ冬が極端に寒くなるのか?」と疑問に思うのは当然のことです(エドワード・ハンナ教授)

 この矛盾するような現象の背後には、「成層圏極渦」の働きがあると考えられている。

 これは冬に北極上空に出現する冷たい空気の渦巻きのことで、北と南の温度差が大きくなることで形成される。

この画像を大きなサイズで見る
極では顕著な温暖化の傾向が観測されるが、中央東部アメリカ(北緯30~50度、西経91~106度)の寒波に関しては一貫した傾向が見られない/Credit: Environmental Research: Climate (2024). DOI: 10.1088/2752-5295/ad93f3

北極上空の気流の乱れが冷たい空気を南下させているから

 ハンナ教授らは今回、この成層圏極渦に関するこれまでの研究をレビューし、最近の冬の異常な寒さもまた温暖化の影響であることを確認している。

 そうした研究からわかるのは、成層圏極渦が弱くなると、それよりもっと低いところを流れるジェット気流が乱れるということだ。

 これが「ブロッキング」という気象現象を作り出し、北極の冷たい空気をいつもよりも南下させる。北半球の各地域が強烈な寒波に見舞われるのはこれが原因だ。

 こうした成層圏極渦の弱まりは、これまでも周期的に起きていた。

 だがハンナ教授らは今回の研究を通じて、近年ますます増えている渦の弱まりは、北極の温暖化によって説明できるだろうことを突き止めたという。

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

 北極は日常生活にほとんど無関係な場所だと思われるかもしれない。ところが、地球の自然は相互につながりあっているため、北極の変化は北半球の人々の暮らしに大きな影響を与えているのだ。

 ハンナ教授は、「こうした傾向を逆転させるためには、大胆かつ迅速に行動し、大気に熱を閉じ込めるガスの蓄積を削減しなければなりません」と語る。

 ただし、そのためにはまず私たちがその意思を持たなければならないと同教授は訴える。

 またハンナ教授は、このように極端な気象傾向に関する研究を今後も続けるべきだと主張している。

 とりわけ大気の最下層にある「対流圏」とその上空の「成層圏」の相互作用を、最新理論や次世代気候モデルを用いて分析するべきであるという。

 それを通じて、北極の冷たい空気を突発的に南下させるさまざまな要因や、極端な気象をもたらす大気の変化を明らかにできるかもしれないとのことだ。

 この研究は『Environmental Research: Climate』(2024年12月10日付)に掲載された。

References: Study finds Arctic warming tied to severe cold spells in UK, Europe

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、8件

コメントを書く

  1. 地球温暖化が原因の大寒波は映画「ザデイアフタートゥモロー」でも描かれていたね
    現実の話として他にも、
    ・太陽の活動低下
    ・インドネシアやカムチャッカの火山噴火で巻き上げられたエアロゾル
    ・世界的な不景気で諸国の工場が止まっていることが理由の二酸化炭素排出削減
    などなど地球寒冷化の原因がいっぱい出てきた。注意したほうがいいだろう

    1.  マイナスついちゃってるけど、賛成です。
       太陽の活動は今は極大期に入っているみたいですが、ちょっとでも陰ると地球は冷え込んじゃうから大変なことになりますね。 角度を加味するともっと差は大きいですが、東京で夏の日照時間と冬の日照時間を比べると冬は夏の 2/3 になってこれだけでかなり寒くなるのですから日光が少ないほうにちょっと変動すればあっというまに氷河期です。 まぁ、注意して何ができるかはわかんないですが、直接・間接的に使わないで済む化石燃料はなるべく使わないようにするくらいかなぁ。

  2. つまり北極と低緯度地域との気温差が小さくなると
    北極の寒気を抑え込んでいる気流が弱まるので
    寒気が低緯度地域に降りてきやすくなるわけか。

  3. >北極上空の気流の乱れが冷たい空気を南下させているから

    答えになってない

    じゃあ夏は北極上空の気流の乱れがないのか?

    1. 乱れているよ。近年夏場に頻発的に起きている豪雨災害は
      北極付近で長期間にわたり居座る高気圧が
      低緯度に長期にわたり低気圧を発生せることが原因だそうです

  4. 寒気ぃ~ あふれる~ ユ~二ホ~~ム~♪

  5. 「きょくうず」もう少し良い言葉なかったんか

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る