メインコンテンツにスキップ

人工原子を利用した安定的な量子シリコンチップの開発に成功(オーストラリア研究

記事の本文にスキップ

24件のコメントを見る

著者

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る
UNSW

 シリコンチップの上に作られた人工原子は、量子コンピューターの新しい基礎となる可能性を秘めている。

 こうした人工原子を安定させる方法が発見され、そのおかげでより一貫性のある量子ビットを作り出すことができるかもしれないのだ。

広告の下に記事が続いています

本物の原子のように規則的な電子殻を持つ人工原子

 原子の周りでは、電子が原子核を取り囲む3次元軌道の中を飛び回っている。この3次元軌道のことを「電子殻」という。

 一方、「人工原子」や「量子ドット」と呼ばれるナノスケールの半導体結晶は、電場によって電子を電子殻の中に補足することができる。

 オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ大学の研究グループが実証したのは、ゲート電極でシリコンに電圧をかけて量子ドットを作り出し、さらにシリコンの余った電子を量子ドットに引き寄せられるということだ。

 ゲート電極で電圧をかけると電子が誘引され、それらが複数の電子殻を持つより重い原子の真似をするようになる。こうして作られた人工原子の電子殻は、本物の原子と同じように、規則的で予測できる。

この画像を大きなサイズで見る
CIPhotos/iStock

「1」と「0」と「重ね合わせ」で情報を処理する量子ビット

1か0かで情報を処理する従来のビットとは違い、量子ビットは、電子のスピンを利用することで、1と0のほか、同時にその両方の状態(重ね合わせ)を取ることができる。

 このことは、連続した処理だけでなく、並列計算が可能になることを意味している。量子コンピューターが強力なのはこのためだ。

 水素、リチウム、ナトリウムは、電子殻にたった1つしか電子を持たない元素だ。研究グループがこれらの元素に相当する人工原子を作ると、その単一の電子を量子ビットとして利用できたという。

 じつは、この研究グループは2014年にもシリコンチップ上に量子ビットを作り出したことがある。しかし、このときは原子レベルで量子ビットの振る舞いが破綻してしまうという欠陥があった(それでも99パーセント以上の情報処理精度が実現されていた)。

 今回の成功によって、エラー発生率を最小限にまで抑えられるかもしれないという。

この画像を大きなサイズで見る
Vladimir_Timofeev/iStock

より堅牢な量子ビットの開発へ

本物の原子でも人工原子でも、電子が完全な殻を形成すると、その極が反対方向に並んでしまい、系内のスピン総和はゼロになってしまいます。

このために量子ビットとしては役に立ちません。ここにもう1つ電子をくわえて新しい電子殻を作ってやると、これがスピンを持ち、量子ビットとして使えるようになります。(アンドリュー・ジュラック氏)

 今回の研究によって、人工原子の外殻にある電子のスピンをコントロール可能で、これによって信頼性の高い安定した量子ビットが得られることが証明されたとのこと。

 1つだけの電子では非常に不安定だが、5個、13個、あるいは25個の電子を持つ人工原子ならば、より堅牢な量子ビットとして利用できるかもしれないそうだ。

 この研究は『Nature Communications』(2月11日付)に掲載された。

References:scimex/ written by hiroching / edited by parumo

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、24件

コメントを書く

  1. 写真が胡散臭い。テレビアンテナケーブブルに付いてる部品みたい。

    1. ※2
      周波数が高くなればなるほど、こういう構造にしなきゃなんないのよ
      アンテナケーブルも周波数が高いわけ
      USBとかはべつの方法でクリアしているけどね

    1. ※3
      そうでないとリチウムやナトリウムで「一個」って言葉は出てこないね。
      水素、及びアルカリ金属類元素の最外殻の事だろうねぇ。
      カリウム、ルビジウム、セシウムだとそもそもの安定性が低くなるのかな?
      希ガス類が重くなるたびに化合物を作る可能性が出てくるように

  2. 小さい半導体に正電圧を加えると電子が軌道を回りだすってことなんだろうか それでスピンの信号を取り出すためにはどうするかということ? だけど、極低温じゃないとできないのかな・・・

  3. 成人ゲームが更なる飛躍を遂げる
    その時が来たというのか……

  4. 量子コンピュータこそ、今の進歩のボトルネックかつブレイクスルーかもしれない。

    今の文明の行き詰まりを突き詰めると、AIの未熟さ、そして、処理能力の未熟さ、かも。

  5. 高校科学の時から止まってる脳みそ的に、陽子と中性子1~2個の違いで全然違う物質になるのに、なんで安定してるのか、何故ガッチリ決まった軌道を持って電子を抱えてるのか謎なんだぜ…
    電場によって電子を電子殻の中に補足できるって、人工的に軌道を作ってあげられるってこと?謎原子ってこと?

  6. 具体的にこの装置がどれだけ計算が速いのか書いてくれないと判断に困る。

  7. つまり、電場が制御できるようになれば原子が不要になる?

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

知る

知るについての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る