写真撮影はリハビリの一環である。
昨年の6月下旬、撮影中に転倒し右脚に全治4ヶ月の大怪我を負った。一ヶ月間は腫れと痛みで撮影を断念し治療に専念。撮影許可が出たのは7月下旬だった。満を持して出掛けた場所が竹芝埠頭。都営大江戸線・大門駅から徒歩10分も掛からず、幾つかの撮影スポットが点在するこの場所が私は好きである。
勿論、右脚の違和感は残ったままなので、出来るだけ体重を掛けず引き摺るように歩いた。東京湾を渡って来る潮風に吹かれながらシャッターを切る。カシャ、カシャ、その音が実に心地よく、溜まりに溜まった写欲が迸るように悠然と拡がる青い世界を捉えて行く。心臓病や慢性腎不全など大病を患っていると、自分が取る行動の殆どがリハビリの一環となる。
思い起こせば2019年の3月下旬、掛かり付けである三井記念病院の裏にある公園で桜の写真を撮った事が私の撮影本能に火を付けた。それ以来、写真の世界へと深く深くのめり込むようになった。レインボーブリッジを徒歩で往復したり、最もハードだったのは自宅のある西台から荒川の上流にある『彩湖』まで徒歩で往復した時の事。2万5千歩を超えていたと記憶している。そんな無謀な行動が出来たのも只管、写真を撮りたいと言うシンプルな気持ちだけだった。カメラはスマフォだったので重量など気にする必要もなかった。そうして一年が経った頃スマフォカメラの限界を感じ、どうしても一眼レフが欲しくなった。中古のNikon D700を2万9千円で手に入れた。
生まれて初めて一眼レフカメラに触れた時のあの胸踊る高揚感は今も忘れない。分厚い取説なんぞは邪魔臭く、好き勝手にカメラをいじりまわし、自己流でカメラのイロハを覚えて行った。被写体に向かう時は好きな人を口説くようにシャッターを切った。
循環器の主治医が言った。「神戸さん、カメラ始めてから調子いいみたいだね」。「はい!先生、撮影している時は病気の事や悩みなど一切忘れる事が出来るんですよね」主治医は笑って「うん、うん」と頷いた。
カメラと出会っていなかったら私は相変わらず心不全に悩まされ、入退院を繰り返す人生を送っていただろう。「病院のベッドが恋しい」と冗談を言っていた頃が懐かしい。帰港中だった東海汽船の『さるびあ丸』に乗って、いつか太平洋の船旅に出て、小笠原諸島の自然をカメラに収めてみたいと思っている。
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