あなたの視線。
背中に刺さる
あなたの視線が痛い
振り向けない
私の心にそっと語り掛け
そよ吹く風のように
合図を送る
あなたが優しす過ぎるから
私はここから
一歩も動けない
この人物写真は、隅田川テラスへパンジーの撮影に行った帰りの工程で撮影したもの。一眼レフを始めたばかりの頃、ポートレートと言う言葉をよく見聞きする事はあったが意味を理解していなかった。私はご存知のように風景写真をメインとしているが、人物撮影に興味がない訳ではない。寧ろ機会さえあれば積極的に撮影したいと思っている。写真愛好家の皆さんにはそれぞれ得意分野というものがあり、それに合わせてレンズの種類などを揃えているだろう。私の場合は色んな被写体に興味があるため、レンズの種類もそれに沿って本数も増えて来る。
この女性を撮影した時、タムロンSP90mmのマクロレンズだったが、90mmは中望遠としても使えるため、少し離れた所から背景をぼかしつつ、女性の後ろ姿を際立たせての撮影が可能。
その日の撮影予定を終えてしまえばカメラをバッグに収めて帰り支度をするのだが、電車に乗るまでの間に思わぬ被写体と出会う可能性があるため、私はいつも時間ギリギリまでカメラを仕舞う事はしない。この時がまさにそれで、私より数m先を二人の女性が足早に歩いていた。その時点ではまだ撮影と言う気持ちはなかった。赤い服を纏った女性が街灯の下で立ち止まり、もう一人の女性は暗闇の中に消えて行った。街灯の明かりに照らし出され浮かび上がった女性の後ろ姿が妙に魅力的だったため、私は咄嗟にシャッターを切った。
写真は言うまでもなく光と影で構成されている。これらを絶妙なバランスで組み合わせ一枚の写真を完成させる。それが写真家の仕事であると思っている。私はプロではないが、写真を撮る度に新たな世界と可能性を手に入れている。それが向上心へと繋がるのだと信じているから。