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ビーチサイドの人魚姫
俊樹

2019年9月Nikon D700で一眼レフデビュー。カメラは独学。2020年4月、Nikon D810へアップグレード。いつか写真展を開く為、日々精進。勿論、詩、小説、エッセイ、作詞は継続中。2021年夏、Nikon Z7Ⅱへと更にアップグレード。2022年10月、3回目の心臓手術に耐え抜き現在に至る。2023年8月ペースメーカー植え込み。

オペレッタ「赤ずきんちゃん」in 静岡音楽館Aoi。

2016年04月07日
ライブ 25
赤ずきんちゃん

 万年筆の記事をアップしたその夜、息子の勇樹から電話があった。「万年筆、読んだよ。ところでお願いがある…」「うん?なんだ」「4月3日だけどミュージカルに出演するから是非とも観に来て欲しいの」「ええーっ!本当に?」「うん、しかも準主役なの」「そうか、ちょっと体調と相談して出来るだけ行くようにする」。
 行くと即答出来ない自分の身体が情けなかったが、その日からこの日の為にコンディションを整え、体重を64キロから62キロに落とした。僅か2キロであるが病んだ心臓への負担は随分と軽くなり息切れもあまりしなくなった。
 落語披露の時は体調が悪く行けなかったので、今回こそはと言う思いと「ステージに上がるのはこれが最後」と言う息子の言葉が後押しをしていた。息子がどんな演劇を見せてくれるのか、新幹線の車窓から流れる景色を見詰めながら心が踊った。
 静岡の地に足を下ろすのは2011年11月以来5年ぶりの事。会場である『静岡音楽館Aoi』は静岡駅北口から徒歩数分の所にある。ステージ正面にはフランス・ストラスブール\アルフレッド・ケルン社によって建造された高さ8.5m、幅9.5mの巨大なパイプオルガンがあり、その音響効果は最高レベルと世界的な音楽家たちから認められるなど折り紙つきで、クラシックオペラなどを鑑賞するには理想的なホールとなっている。
 開場は13時半だったが、その前から大勢の人の列がビルの外にまで連なり、このコンサートに対する関心の高さが伺えた。チケットが当日購入出来ない可能性があった為、息子が事前に確保してくれていた。開場時間と共に8階へ移動し電話を入れると、「お父さんですね?」と女性の声。その直後に若い女性スタッフが笑顔を振り撒き駆け寄って来て、「勇樹さんからです、お父さんが来てくれると大喜びですよ」とチケットを渡してくれた。
 開場から30分も過ぎると館内は1,2階ともほぼ満席。おそらく客数は600人を超えていると思われた。開演14時になると、このコンサートの主幹でピアニストの『呉 恵珠』さんご挨拶。そして第一幕、ソプラノ:渋谷文規による『日本の歌、こころの歌』が始まった。詩人・星野富弘氏の作品に曲を付けた歌曲集である。
 呉 恵珠の流れるピアノと透き通るようなソプラノが館内全体を優しく包み込む。マイクなど電気機材を全く必要としない生のステージは初めての体験であった。続いて金子みすゞの詩に曲を付けた童謡歌曲集。ソプラノが五井野百合子に代わった。『こだまでしょうか』など幾つかの作品は私も良く知っていたので、眼を閉じその魂を揺さぶる歌声に聴き入った。
 そしていよいよ息子が登場する第二幕、オペレッタ『赤ずきんちゃん』の始まりである。それまでステージ中央に設置されていたグランド・ピアノが隅の方に移動。若い女性のフルートと円熟味のある語り手の登場で劇は幕を開けた。
 テンポよく流れるようにストーリーが展開して行く。キュートなバレリーナのステップがステージを一層華やかに盛り上げる。赤ずきんちゃんを演じているのは3人の女の子たち。そして息子が準主役と言う『』の登場であるが、なんと1階客席横のドアから登場となった。これには観客も予想していなかっただけに、館内が一瞬どよめいた。私はてっきりの着ぐるみかと思ったが、そんな事はなくユーモアたっぷりの尾っぽが可愛かった。
 台詞に時々アドリブを交えるなど、その演技には余裕すら感じられたが、本人曰く「満席の観衆を眼の前にしたら心臓がバクバク」だったらしい。そのステージは私の予想を良い意味で裏切り、非常に完成度の高い舞台で、自信を持って人にお勧めする事が出来るほどであった。
 館内は携帯・カメラは禁止の為、演技中の撮影が出来ず残念であったが、舞台終了後にロビーにて記念撮影が始まっていて、大勢のファンが息子を取り囲みもみくちゃになっていた。ファンから贈られた花束やプレゼントは腕に抱えきれないほどで、まるで芸能人を見ているようだった。
 息子に話しかけようとしたがとてもそんな余裕はないようで、次々とカメラを向ける人たちの応対で舞台より緊張しているようにも見えた。ソファに腰掛けてそんな息子の姿を見ている私に女性スタッフが声を掛けて来る。「勇樹さん、人気者ですから」。その人気を支えているのは、人との繋がりを自分の事より大切にする息子だからと納得していた。
 ロビーから人影が消え静寂が訪れると、漸く私の時間がやって来た。スタッフに声を掛け息子について尋ねた。「お父さん、勇樹さんとまだお話ししてないですよね?」「楽屋の方にいますので、今案内致します」。楽屋は7階にあったが、出演者たちで溢れかえっておりとても中で話せる状態ではなかった為、廊下で待った。
 暫くすると普段着に着替えて汗だくになっている息子が姿を表す。5年ぶりの再開だ。「父さん、ありがとうね、ホント嬉しかったよ」そう言いながら私の手をがっちり握ってくる。「母さんは来なかったのかな?」「うん、多分ね。確認出来なかったけど」。「素晴らしいステージで感激したよ、とても初めてとは思えない」そんな親子のやり取りを5分ほどして音楽館を後にし、ミュージカルの余韻に身を預けながら帰路についた。

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俊樹
この記事を書いた人: 俊樹
本名/神戸俊樹
静岡県藤枝市出身。
19歳の時に受けた心臓手術を切っ掛けに20歳から詩を書き始める。
2005年3月詩集天国の地図を文芸社より出版、全国デビューを果たす。
うつ病回復をきっかけに詩の創作を再開。
長編小説「届かなかった僕の歌」三部作(幼少編・養護学校編・青春編)父を主人公にした(番外編)を現在執筆中。
詩、小説、エッセイ、作詞など幅広く創作。
2019年9月、一眼レフデビュー。Nikon D700を使用。
2020年4月、Nikon D810にアップグレード。
2021年夏、ミラーレス一眼 Z7Ⅱへと更にアップグレード。
2022年10月3度目となる心臓手術を受け、大成功を収める。
2023年8月徐脈性心房細動で心停止(失神)したため、ペースメーカーを植え込む。

コメント25件

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ネリム

こんばんわ
ステージに上がれるのは凄いことだと思います。

2016年04月07日 (木) 17:04

くんざん

親子の間にこんな感動があるのでしょうか、親父が体重を2kgも落として息子の晴れ舞台を見にいく・・・舞台上のストーリーと親子の流れが同時進行でした

2016年04月07日 (木) 17:31

鈴子

ミュージカル〜♪

俊樹さま

こんばんは。(^_^)
お身体は大丈夫でしょうか‥。

先日は息子さまのミュージカルを観に行かれたんですね。
体重を2キロ減されて大変でしたねー。
でも 素晴らしいミュージカルだったようで、おめでとうございましたぁ。

赤ずきんちゃんの狼さん!(≧∇≦)
尻尾がリアルで可愛いかったですね。

人と人との繋がりを大切にされるって素晴らしいし、優しい息子さまですね。
万年筆が いつも側にあるからお守りになってますよ〜♪
守ってくれてますね!
そして 離れていても 心はいつも繋がっているんですね。

2016年04月07日 (木) 18:08

yokoblueplanet

良かったですね!

こんばんは。
息子さんの舞台も「お父さん」がその舞台を観に行けたことも、どちらも最高に密度の濃い時間になって良かったですね!

2016年04月07日 (木) 18:22

双子パンダ

(*´∇`*)

息子さんの晴れ舞台を観にいけてよかったですね♪
息子さんもとっても嬉しかったと思います(*^▽^*)
優しい息子さんですから、たくさんのかたに
愛されていらっしゃるんですね☆

2016年04月07日 (木) 19:13

koyuri

良かったですね

その調子で、体調を整えてお子さん達のタメにも、より元気になって下さいませ。

2016年04月07日 (木) 22:56

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2016年04月08日 (金) 01:30

孝ちゃんのパパ

こんばんは。

鷹の子どもはやはり鷹でしたね!
僕のようなトンビは鷹を残すことは出来ませんでした(笑)

公演の成功、おめでとうございます。

2016年04月08日 (金) 01:51

sado jo

子供ミュージカルっていいですね^^
大勢の人前で何かをやるって、礼儀や気後れしない精神を養い、自信に繋がります。
最近、引きこもったり、人との交流が苦手な若者が多いですが、小さい頃から勉強ばかりでなく、どんどん外に出して人付き合いを学ばせるべきだと思います。

2016年04月08日 (金) 12:53

よっチ

こんばんは

息子さんのミュージカル成功、よかったですね。
5年ぶりの再会ですか?なんだか読んでいる
方の心が温まるいいお話ですね、ありがとう
ございました。

2016年04月08日 (金) 17:16

KOrOKO

無事に行けてよかったです!
親子の互いに優しく思いあう情があちらこちらに感じられます。

2016年04月08日 (金) 19:56

ichan

こんばんは。

5年ぶりの再会。
そして、ご子息のミュージカルの成功。
終了後の親子の会話。
滅多にこれだけの条件が揃った再会は
無いと思います。

ともかく、おめでとうございました。

2016年04月08日 (金) 21:25

みゆきん

息子ちゃんお父さん似だね
ソックリ
素晴らしい息子がいてほっこり
親子の愛情が見れて心が軽いわ♪

2016年04月08日 (金) 21:58

野津征亨

こんばんは。
楽しげな観劇だったご様子、ようございました(^^)
息子様との会話もできて、きっとよい思い出になったことと存じます。

2016年04月08日 (金) 22:41

日々安穏

御無沙汰です

およそ一月ぶりの復帰に
こんな幸せな御様子を伺えて とても嬉しいです
これからも 体調管理がんばって
お忙しそうな息子さんですが できる限り 交流なさってくださいね

 

2016年04月09日 (土) 12:00

まるまりもマルマリ

こんにちは。

舞台で準主役ってすごいですね!
とっても活気に溢れた舞台だったようですね☆
楽しそうな雰囲気が写真に漂っていますね。

2016年04月09日 (土) 15:27

青空

こんばんは

息子さんの晴れの舞台!

何とも嬉しかった事でしょう・・・

幸せイッパイですね 

私も何か 嬉しいです (´▽`*)

2016年04月09日 (土) 21:12

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2016年04月11日 (月) 13:37

鈴子

目が覚めましたぁ(ーー;)

俊樹さま

お疲れさまです。
お身体は大丈夫ですか‥。
5年振りの再会は本当に涙が出るでしょうね。
私もつられ泣き〜。
・°°・(>_<)・°°・。
これからは体調が良い時に 度々 逢えたらいいですね。
万年筆を使ってらっしゃいますかぁ?
俊樹さまの自筆を是非 見てみたいデス。

2016年04月12日 (火) 01:14

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2016年04月12日 (火) 01:26

鈴子

言い忘れました。

おやすみなさい。m(_ _)m 💤
ラベンダーの香りで ぐっすり眠れますように‥
お出かけの時はペパーミントかユーカリオイルをマスクに一滴。
ご自分も看護師も(いい香りっ!♡)って
心 いやされます。

2016年04月12日 (火) 01:32

よしお

こんばんは

いい感じになったようで良かったですねぇ(^。^)

2016年04月12日 (火) 23:50

なになにこ

良かったですね。
こちらまでなんだか嬉しくなりました^^。

お体ご自愛ください。

2016年04月14日 (木) 19:42

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2016年04月14日 (木) 23:56

AKI

No title

素敵な息子さんですね!
AOIは私の好きなホールです。私も舞台に携わる人間として息子さんのオペレッタの大成功とても嬉しく思います(*^_^*)

2016年05月29日 (日) 21:56