音楽が時空を超える時。
五月晴れの空が足音を立てて近づきつつあった4月も半ば過ぎの4月21日。わたしは池袋駅北口から徒歩10分程度の所にあるライブハウス(RED ZONE)へと向かっていた。
その日は前日の小春日和とは打って変わり、季節が2ヶ月逆戻りしたような冷たい北風がビルの谷間を行き交い、街ゆく人々を震え上がらせていた。
冬物の服は既に箪笥の奥へと仕舞い込んでしまったから、春物を何枚か重ね着して風邪を引かぬよう用意万端整えてそのライブ会場へと急いだ。
「林利樹と愉快な仲間たち」と銘打ったそのライブ情報を知ったのは、「下町の台所ごはん」管理人のマムチ(TAKA)さんのブログであった。彼女とはブログを通して何度かコメントのやり取りをしている内に、彼女が「ピンクサファイア」の元ギタリストだと言う事を知り、益々興味が湧いて来た事もあり是非そのライブを観に行きたいと思った次第である。
ピンクサファイアと言えば、1989~1990年に渡りバンドブームの火付け役となった人気番組「イカ天(イカすバンド天国)」からデビューした4人組の女性ロックバンドである。
このオーデション番組はわたしも大好きで、深夜番組にも関わらず毎週欠かさず見ており寝不足に悩まされていた事を懐かしく思い出す。
マムチさんの話によると、彼女自身はその当時ピンクサファイアのメンバーではなく、違うバンドで出演しており、その後デビューが決定していたPSにスカウトされギタリストとして参加したようである。
彼女は野村義男率いるバンド「FUNK ROCKET」に在籍していた事もあり、ギタリストとしての実力は言うまでもなく折り紙付きである。
彼女の一声で始まったこのライブであるが、リハサール等は殆どしておらずまさにぶっつけ本番の「日本版ウッドストック」と言ったら褒め過ぎだろうか(´∀`*)。
ライブは前半後半の2部構成になっており、1ステージに出演する筈だったバンドがアクシデントにより出演出来なくなり急遽駆け付けたバンドが「RE:VIBE」であった。
予定で行けば18:30分開場、開演19:00であったのだが、ライブハウスに駆け付けたファンが余りにも多く、遠くはアメリカからこのライブを観に来たと言う熱烈なファンもおり、日本全国にPSのファンがどれだけ多く存在しているかが頷ける。
開演から約30分ほど遅れてライブは始まった。RE:VIBEのVo「江田智樹」さんを聴いた時、どことなくB'zのヴォーカルと重ね合わせてしまったのはわたしだけだっただろうか?
そして彼らの2曲目でわたしは全身に鳥肌が立つのを覚えた。それもその筈でステッペン・ウルフの大ヒット曲「ワイルドで行こう」を披露してくれたからである。この曲は歌詞を丸暗記していた事もあり、あれから数十年の時を経てもしっかりと記憶の底に留めていた。
そしてあの映画のワンシーンが走馬灯のように脳裏を掠めて行った。1969年に公開され、アメリカン・ニューシネマの代表作となった「イージー・ライダー」である。ピーター・フォンダとデニス・ホッパーがチョッパーハンドルのハレーに跨り、荒野を疾走して行くあのシーンを今でも忘れない。そして余りにも衝撃的な予想外の結末に心が震えたものである。
この曲の歌詞内容に「ヘヴィ・メタル・サンダー」という部分が出てくるが、実はこれが切っ掛けとなり「ヘヴィメタル」と言う音楽ジャンルが誕生したと言われている。
ピンクサファイアのメンバー4人は全員揃ってはいたものの、4人全員がステージに上がる事はなかったが、TAKAさんの熱い想いとラブコールがメンバーとそしてバンドの仲間たちを一堂に集結させ、ファンの心を再び鷲掴みした事は言うまでもない。
2ステージで姿を見せたTAKAさん、そして一夜だけのコンビ復活となったPSのヴォーカル「AYA」さん。二人はどんな思いでこのステージに立ったのだろうか。それはおそらく不可能と思われた長年の夢を再び実現させたと言う万感の思いで一杯だったに違いない。
音楽は時として時空を飛び越える…まさにこの言葉がぴったり来るライブだった。披露された曲はオリジナルやカバーも含めて10曲ほどだったと思うが、ラストにレッド・ツェッペリンのロックン・ロールなどを持って来るところなどは、まさにファンへのサービスを重視した彼女と彼らの思いやりと優しさに満ちた熱く心揺さぶられるライブだったとわたしは思う。
その中でわたしが取り上げた曲が、always gonna love youであるが、わたし自身この曲には思い入れがあり、まさかこの会場で聴けるとは思っておらず、イントロが流れた時、やはり全身鳥肌で感動しきりであった。
偉大なロックギタリストの一人であったゲイリー・ムーア。僅か58歳と言う若さでこの世を去ってしまった。80年代を代表する天才的ギタリストに敬意を表してこの曲を選曲した次第である。
ライブに参加してくれたバンドの皆さん、そしてTAKAさん素敵なライブの一夜をありがとう。参加メンバーは次の通りです。
TAKA・マムチ(G)・AYA(Vo) 、岩佐友晴(Vo)ex RABBIT、江田智樹(Vo)RE:VIBE、芝越康裕(B) ex RABBIT、村上貴洋(B) RE:VIBE、林利樹(Dr) ex RABBIT、橋爪ノリユキ(G) G.D.FLICKERS、サポート滝上修幸(G) RE:VIBE。
PS:マムチさんのレシピ本が主婦の友社より出版される事が決定しております。出版された折にはまたお知らせしたいと思います。
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