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韓国で影響力を強める、市民記者の投稿によるニュースサイト

韓国のネット新聞「オーマイニュース」を調べ下記URLより引用。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20030521204.html
2003年5月17日 2:00am PT

欧米でジャーナリスト気質のある人は、ウェブログを立ち上げて日々の出来事に関するニュースやコメントを掲載し、その欲求を発散する。だが韓国では、何かを公表したいという本能は直接巨大な共同オンライン新聞へと向けられ、その結果、国内で最も影響力のあるメディアが出来上がった。『オーマイニュース』(OhmyNews)は「市民ジャーナリズム」における他に類を見ない試みだ。このサイトに登録した人は誰でも、記者として報酬を得ることができる。

 オーマイニュースの開設者で編集者のオ・ヨンホ氏(写真)は、「オーマイニュースを提供することで、人々が保守的な主流メディアの視点だけを通して物事を見ていた20世紀のジャーナリズムと決別したいと考えた」と語る。「われわれの主要コンセプトは、市民は誰でも記者になれるというものだ。われわれはすべてを提示し、読者は自分たちでその真偽を判断する」

3年前にスタッフ4名で開設したオーマイニュースは、40名を超える編集者と記者を抱える規模にまで成長し、1日当たり約200本の記事を掲載している。だがそのニュースの大多数を書いているのは、2万6000人を超える登録制の市民ジャーナリストだ。彼らの職業はホテルの客室係からプロの作家まで多岐にわたる。

 このサイトは1日約200万人の読者を集めており、進歩派といわれる韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の当選に一役買ったとして広く信頼を得ている。イギリスの『ガーディアン』紙は、オーマイニュースを「自国内の影響力という点では、ほぼ間違いなく世界で最も力を持つニュースサイト」と称している。

 

 ある韓国の外交員はガーディアン紙に対し、次のように語っている。「オーマイニュースはどの新聞にも負けない影響力を持っている。このサイトを無視できる政治家などいない。韓国は自分たちでも信じ難い形で変わりつつある」
 オーマイニュースは2000年、固定化し保守的な国内メディアに対抗する形で、ベテランの調査報道記者だったオ氏によって開設された。オ氏の目的は、読者が感嘆して姿勢を正すようなネタを掲載するというものだったので、このサイトには「オーマイゴッド!」(Oh my God!)をもじった名前がつけられた。資金のないオ氏にとって唯一の選択肢が、アマチュアに記事を書かせるウェブサイトだったというわけだ。

 「ニュースのゲリラ組織」を自称し、「すべての市民が記者だ」というモットーを掲げるオーマイニュースは、『ドラッジ・レポート』と『スラッシュドット』に、伝統的だが機動力のある新聞を混ぜ合わせたような、荒っぽくて気まぐれで予測不可能なサイトになった。
 オーマイニュースは反企業・反政府・反米になりがちだ。記事は主観的なものが多く、感情がにじみ出たり、奇妙で個人的な話が盛り込まれたりする。しかし同時に、情熱的で、詳細にわたり、豊富な知識をもって書かれているものもある。このサイトはスポーツから国際政治に至るまで、従来の新聞が載せているものはすべて網羅しているが、そこには溢れんばかりの個性が盛り込まれているのだ。

 オーマイニュースを毎日訪れているという韓国系米国人の読者、ドン・パークさんは、「これは面白いし、心に染みるし、気遣いを感じる」と語る。「これはウェブログのようなものだ。個人的な面や感情的な面があって、人間らしい手ざわりがある。従来のニュースのように退屈でも客観的でもない。確かに偏りはある。プロの仕事ではないが、読者は事実を手にする……。私は信頼している」
 パークさんは、米国にもオーマイニュースのようなサイトが登場することを期待していると話す。米国メディアの型にはまった客観性に飽き飽きしているパークさんは、行間を読んだり、記事の脚色を割り引いて判断したりするほどには世慣れている。
『ワシントン・ポスト』紙ほどではないかもしれないが、オーマイニュースもかなりの量のスクープ記事、読者の目を引く目撃者の証言、大量アクセスを獲得する特集記事のコメントなどが掲載されている(昨年のオーマイニュースの投稿が発端となり、韓国の名誉を傷つける記事を書いたとして『ジャパンタイムズ』紙のスポーツ担当編集者が解雇された)。
 オーマイニュースの記者たちは、政府の各省庁や民間機関への立ち入りが許可されていて、プロの記者たちと同等の立場で取材できる。政府の高官は次第に、オーマイニュースの記者に独占インタビューを許可するようになっている。この先例となったのは、盧大統領が選挙後の最初のインタビューをオーマイニュースに行なわせたことだ。国内の大手メディアに対するこの冷遇は衝撃的だった。
 オーマイニュースの記者たちは、好きなことを何でもサイトに掲載できる権限を与えられている。条件はただ1つ、実名を使うことだ。このサイトは投稿者たちに対し、掲載した内容に全責任を負うことになると警告している。著作権はオーマイニュースと記者で共有するので、記者はその記事をどこにでも再掲載できる。

 原稿料はゼロから約16ドルまでと幅があり、編集者が記事につけるランク「基本」「ボーナス」「特別」によって決まる。
 制作工程は通常の新聞とほぼ同じだが、作業は密室の中ではなく、開かれた場所で行なわれる。サイト上の討論フォーラムで、記者と編集者は市民投稿者たちと記事のアイディアについて吟味できる。アイディアに読者を引きつける力があれば、市民記者の誰かがそれを取り上げ、自分の時間と費用を使って記事にする。

 記事はウェブのインターフェース経由で入稿され、掲載前に編集の順番待ちに入る。オ氏によると、すべての記事は事実をチェックされ、プロの編集者によって編集されるという。これまでに名誉毀損訴訟につながった記事は2本しかないと、オ氏は語る。
 このシステムは完璧ではない。それどころか少々軽率なようにも映る。オーマイニュースは、偽のCNNニュースサイト(日本語版記事)に掲載されたビル・ゲイツ会長暗殺などのでっち上げ記事を掲載したことがある。こうした記事はすぐに取り下げられたが、記者とサイトとの利害衝突といった、明かされていない継続中の問題もある。

 「企業のマーケティング担当者や活動家がジャーナリストのふりをして、自分たちの製品や思想を売り込むことも可能だ」と、韓国の大手新聞『朝鮮日報』の上級編集者、チェ・ジュンソク氏は述べた。「オンラインメディアの質には、大きな問題がある」
 確かに、『ニューヨーク・タイムズ』紙の不良記者、ジェイソン・ブレア氏の捏造・盗作が証明しているように、正確性と誠実性の問題はオーマイニュースのようなサイトに限ったことではない。これを受けて、オーマイニュースは現在、寄稿者に銀行口座の詳細の開示を要求し、身分を偽っているメンバーを排除しようとしている。

 どんな問題があるにせよ、このサイトは韓国の文化に多大な影響を及ぼしつづける。韓国はおそらく世界で最も「ネットにつながっている」国だ。国民の約70%がブロードバンド接続でインターネット環境にアクセスしていて、韓国の日常生活の多くの局面がネット上で行なわれており、政治的な意見の表明もこの例にもれない。韓国は世界で最も進んだ「ウェブ政治」(Webocracy)の国と呼ばれている。

 韓国の盧大統領は用心したほうがいい。盧大統領とオーマイニュースとの短い蜜月はどうやら終わったようだ。今週ワシントンDCで行なわれた米韓首脳会談で、盧大統領がブッシュ米大統領と親密な間柄を築こうとしたために、オーマイニュースの記者たちは盧大統領を攻撃しはじめたのだ。

 「盧大統領はブッシュ大統領にペコペコしていた」と、ある寄稿者がオーマイニュース特有の感情的なコメントを同サイトに掲載していた。この革命的なメディアは、盧大統領の当選を後押ししたように、大統領を失職させる際にも一役買うことは確実だ。

(この記事にはAP通信が協力した)
[日本語版:天野美保/高森郁哉]

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