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2023/02/14

ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart1~CSFはWBSみたいなものと捉える

経営戦略企画書やバランススコアカードに出てくるCSFとは一体何なのか?
CSFの使い道は何なのか?
ITコーディネータの先生に教わってようやく理解できた。
気づいたことをラフなメモ書き。

【1】CSFという言葉は知っていた。
CSFはCritical Success Factorの通り、目標達成の成功状態のことだ。
しかし、CSFはどんな時に必要なのか、CSFは何のために使うのか、腹落ちしていなかった。

経営戦略企画書において、バランススコアカードを作る時に、CSFはよく出てくる。
バランススコアカードでは、財務・顧客・内部プロセス・組織と成長のレイヤで、CSFや課題を因果関係や先行後続関係でつなげて戦略マップを作る。
たとえば、研修して人材を育成することで、営業や製造の体制が安定し、業務が効率化されたり、営業活動が活発になったりして、顧客満足度も上がり、原価も削減できて、最終的に売上拡大、利益増大を達成する。
そういうCSFの因果関係ができる。

【2】まず自分が勘違いしていた点は、CSFは成功状態であるから「~できる」という状態表現で書かれることだ。
なぜなら、目標が達成されて成功されたのだから、以前抱えていた問題は解決されて、達成「できた」という状態になるからだ。

一方、問題は「~できない」「~が難しい」という否定表現、課題は「~のために~する」という行動表現で書かれる。
どうやら自分は、経営課題とCSFを混同していたらしい。
本来は、問題に対し、経営課題が抽出されて、経営課題に対応するという対応策を実行すると、最終的に問題が解決されて、目標を達成できた、というCSFに結論付けられる。

他方、CSFは中間目標とも言われる。
最終的な経営目標に到達するためには、いくつかのマイルストーンをおいて、それらマイルストーンを全て通過して初めて最終ゴールに至る。
すなわち、CSFという中間目標は複数個存在するし、CSFの因果関係や前後関係が付けられることで、最終的なゴールへの道筋が明確になる。

すると、CSFの因果関係を元に、複数個のCSFをつなげて時系列に並べると、その図は経営戦略のロードマップになる。

【3】この考え方は、プロジェクト計画書におけるWBSとガントチャート関係と同じ。
WBSはプロジェクト実行に必要な作業全てであり、先行後続関係を付けて階層化された構造を持つ。
そのWBSは、時系列にマッピングさせればガントチャートになる。

同様に、CSFは経営目標を達成するための中間目標であるから、複数個のCSFには必ず因果関係が発生し、それは先行後続関係になる。
CSFの先行後続関係を時系列にマッピングさせれば、経営戦略のロードマップになる。
あるいは、経営戦略企画書のマスタスケジュールとして作られる。

【4】CSFは何のために使うのか?
CSFは経営戦略のロードマップを作成するために使われる。

経営戦略企画書に出てくるCSFは、プロジェクト計画書のWBSみたいなもの
プロジェクト計画書にあるWBSからガントチャートが作成されるように、経営戦略企画書のロードマップ、マスタスケジュールはCSFから作成される。

【5】そう考えると、バランススコアカードに出てくるKGI、KPIの考え方もスムーズにつながる。
なぜならば、経営戦略の最終目標に至る中間目標を達成できたのか、評価するために、KPIという業績評価指標を使って定量的に評価するわけだ。
CSFは「~できる」という状態表現でかかれるので、評価指標に落としやすい。

たとえば、「顧客満足度が上がっている」というCSFであれば、顧客満足度をアンケートで収集して採点して、以前と比較して上がっているかどうか評価すればいい。
「作業時間が短縮して業務を効率化できた」というCSFであれば、作業時間や作業工数を毎日記録して、該当の作業の時間が以前よりも減っているか測定すればいい。

そういう中間目標をブレイクダウンしていけば、組織や人材の観点のようにより低レベルな業務のKPIで測定するし、ドリルアップすることで顧客や市場、財務という観点のKPIが達成されて、最終的には経営目標であるKGIが達成される。

KPIやKGIという定量的な業績評価指標があるからこそ、毎月、四半期ごとに定点観測して業務プロセスを健康診断のように診断できる。
KPIが順調であれば問題ないが、KPIが落ちていれば、その原因を探り改善策を立てて、業務を見直していくことになる。
いわゆるPDCAが自然に行われることになる。

【6】CSFという概念を使いこなすことで、経営戦略のロードマップやマスタスケジュールが生成されて、KGIやKPIで定点観測して評価するという流れがベースにある。
この考え方は、プロジェクトマネージャよりもストラテジストと言われる立場で必要であると思う。

つまり、個別プロジェクトを切り盛りするプロジェクトマネージャではなく、より経営戦略に近い立場にいるストラテジストが常に考えているはずだから。

ストラテジストとプロジェクトマネージャの考え方の違い、役割の違いについては別で考察してみる。


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