アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

Sports Business/ジャンル比較

WNBAがストをするかもという話

Dodgers関連でチャーター機の話が出たときに思い出したのですが、女子バスケのWNBAが先日終了したばかりのシーズンの途中から全チームがチャーター機で移動することになったという話がありました。選手たちがチャーター機内でご満悦みたいな写真も多数ネット上に流れていました。

ということはそれ以前、今季序盤までは一般客と同じように移動していたってことですよね。直行便がある都市間ならともかく全ての移動が直行便でまかなえていなかったとしたらビジターチームは相当に不利な気がします。そういう接続の悪い移動だけはチャーターがあったかもしれませんが。バスケは少人数なのでチャーター機と言っても小型機。カレッジバスケでも有力校はどこもチャーター機で移動している。WNBAも例のCaitlin Clark効果で潤ってカレッジ上位に追いついて全チームが快適な移動ができるようになったってことです。

シーズン中にも何回か触れましたが今年のルーキークラス、特にCaitlin Clarkに対しての嫉妬らしきごちゃごちゃした状況が何度か発生したりもしましたが、とにかくWNBAとしては過去27シーズンで売上TV視聴者数その他で最高のシーズンになったことは間違いないわけです。それで移動の待遇が向上したって話なわけですが、それだけでは満足せずWNBA選手会が現行の労使協定から離脱を画策、サラリーアップを目指して来季ストライキをするかもという話が出てます。
WNBAのシーズンは基本的に男子NBAのシーズンの行われていない5月から9月がシーズンとなります。

コート上では目立ったルーキー選手たちに嫉妬丸出しのような行動も多かったのにそのルーキーたちの露出力で儲かったとなったらそれを皆に回せとストを企画、という風に表現するとちゃっかりしてんなとか負のイメージにもなりかねない。

以前にも解説してますがWNBAのサラリーは安い。ルーキーは最高額が$64,154、3年目以降だと$76,535が最低保証額。普通にオフィスワークしていても稼げる金額です。シーズンは短いので多くの選手はオフシーズンに海外リーグでプレーしたりしてますがその席も限られるので関係ない仕事をオフシーズンにしている末端の選手も多いんでしょう。カレッジではNIL制度が開始されたためカレッジのスター選手の方がWNBA選手のサラリーより稼げているはずです。

WNBAが過去単体赤字(詳細非公表ですが)潰れずに存続できたのは経営母体を同じとする男子NBA側が稼ぐカネからの補填があったからなのは事実。2024年のリーグ創設四半世紀を経てのブレイクで収入増だからと言ってそれを即選手への分配に回せるのかというのは経営側も言いたいことはあるはずです。


前例としては男子サッカーのMLSが創設以来赤字続きでもオーナーが赤字をかぶりリーグ活動を継続してほぼ20年を経てやっと単年赤字から脱出したと推定されています。しかし長年多額の累積赤字があることを理由にMLSは経営環境が改善した時期の選手会からの大幅な賃上げ要求を突っぱねたということがありました。MLS選手会も労働争議には踏み切れず。

MLSの場合は経営環境が大きく好転したのはリーグ拡張がブームとなり後から参入したオーナー(及びそれを後援した都市)が支払った加盟金が高騰したことが大きい。なのでそれでMLS全体は潤ったのは確かですが一時的な収入であることも事実。現行29チーム、2025年にSan Diegoが参入して30チーム化予定。拡張は限界にそろそろ近くなってきています。

その後AppleTV+が後発で放映に参入したのでこれも収入増としては大きかったですが、加盟金もAppleTV+の放映権料もビジネス主導、ファンが増加しているかとかTV視聴者が増えているかという部分だとあまり増えていないのが特徴となります。つまり消費者主導での黒字転換ではないという脆弱さがあります。
そんなこんながあってMLSの若手の最低保証額は今も$89,716。25歳以上なら$71,401。年齢が行くと最低保証額が低くなるというのはなかなかエグいです。MLSはレギュラーシーズンが2月から10月、プレーオフは12月まで。拘束期間がレギュラーシーズンだけで9ヶ月以上と長い(アメスポ最長)ことを勘案すると安い安いと言われる女子バスケWNBAより安いとも言えます。

バスケはチームの人数が少ないので経営効率が良くサラリーを上げやすいという構造上の差はあり、男子でもNBA選手のサラリーは他のメジャースポーツより高くなりがち。ほぼ30人を抱えるサッカーMLS。サラリーキャップもあり、MLS自体が1つの会社という仕組みもあってオーナー側の結束は構造上これ以上ないほど固くMLSの選手会は賃上げ闘争で強気に出られないままになっていると言えます。

そういう先例があるところで出てきたWNBAの待遇改善要求問題。風向きはどうでしょうか。外部環境で言うとまた女性大統領候補が敗退するという事態が発生して女性の権利向上という面では風向きは良くない時期でもあります。たった1年のブレイクでいきなりストかよというのは2024年に急にWNBAを見るようになった層には興ざめでもありましょう。ただでさえシーズンが短いWNBAがストなんてやっていて良いのかという事情もあります。

MLSの先例に倣うなら労働争議でごちゃごちゃやってるよりも今の勢いをWNBAのリーグ拡張の好機と捉えてより強固なネットワークを築いたほうが得には見えますがどうなりますか。

ヒスパニックも世代を重ねればアメスポファンか

昨日の大統領選挙の結果を受けてメディアでは様々なトランプ返り咲き勝利の要因が語られています。現政権化の4年間でインフレが進行したことや移民排斥というわかりやすいポイントはあったものの、私から見るとそれらの政策云々以前に、有権者の一般市民と同じ言語を話すトランプのコミュニケーションスキルが深い部分で共感を得ていたことが最大のポイントだと思うんですよね。政治家たちの使う特殊なもっともらしい言い回し自体が不信任を受けていると思うわけです。ところがそれを指摘する政治メディアは私が耳にした限りでは一つもない。

敗戦したハリスの演説の下手さを指摘するメディアもないのもちょっとした驚きです。候補が入れ替わった時点での勢いがその後全部消えたのは彼女の喋りがおそまつだったからだと思うんですけど。同じ民主党の大統領候補でもオバマとかビル・クリントンとかやたらディベートや聴衆を乗せる演説がうまかったものですが。ヒラリー・クリントンでもハリスよりはずっと喋りはうまかった。


どうもあまりピンとこない結果解説が続いていたんですが、その中でひとつおもしろいことを言っていたのが気になりました。ここからスポーツの話題につなげます。

ヒスパニック住民は過去は民主党支持者が多数を占めていたのが今サイクルではトランプ支持に流れているという分析結果が出てます。トランプの最初大統領選挙は8年前なので多産のヒスパニック住民の若い人(生まれながらの米国籍かつ英語教育バイリンガル)はその頃はまだ有権者年齢でなかった人も多いはず。ヒスパニックは大半はカソリックなので妊娠中絶反対に流れるという面での共和党との親和性はあるんですが、他の部分では人種マイノリティに手厚い民主党支持者が伝統的に多かったはず。それが今回はそうならずそれでトランプの快勝の一因となったという。

ではなぜそうなったかという話なんですが、米国生れで情報を取るのも英語で取ると人種がヒスパニックでも考え方は他の従来のアメリカ人とあまり変わらなくなるからだという解説がされてました。ああそれはあるかもなと。ヒスパニックは多産かつ子どもを産み始める年齢も早いので生まれながらの米国籍のヒスパニック人口って日に日に増えているはずなんですよね。約20%のヒスパニック有権者は今サイクル初めて有権者になった若者だとされ人種内構成も他の人種よりも早く変わっている。なので今回に限らず次のサイクルでも民主党はヒスパニック人口をアテにできなくなりそうだという推測にもつながります。

で。それを聞いていて、あーそれだとヒスパニック移民一世二世辺りはサッカーを見ている割合が高いのが世代が下がるとアメスポの方に取り込まれていく可能性もやっぱりありそうだなということを改めて思いました。過去にもその可能性は当ブログで書いたことがありますが、政治でもスポーツでもありそうな話。政治では今回の選挙ではっきりそれが結果として出たということになってます。
別の記事でサッカーMLSの消費者レベルでの人気が伸びないのはなぜかという話を下書きをしているんですけど、そういうのも米国生れのヒスパニックのアメスポ傾倒が理由のうちかもです。

話題性がなくてもNFLは強し

日曜日の夜の放送だったMLB NLCSの最終試合となった第6戦の視聴率の数字が出てます。FS1とスペイン語放送のFOX Deportesの合計で680万人。裏番組にNFLのSunday Night Footballがあり、さらには今季ブレイクした女子バスケWNBAのFinals最終第5戦が重なっていました。

地上波NBCでの中継のNFL New York Jets@Pittsburgh Steelers戦が1,746万人視聴。WNBAのFinals Minnesota Lynx@New York Libertyが215万人。
WNBA視点で言えば裏に大都市圏同士のNLCS決着戦と、NFLでは全国区の人気が高い部類となるSteelersの試合の真裏で215万人はWNBAは大いに健闘したと言って良いはずです。特にNew Yorkは同時刻にNLCSにMetsが、JetsがSNFに出ていて同市のスポーツファンはそれらを優先する理由がある中での215万人ですからなかなか価値がある数字ではないでしょうか。
ちなみに同日、時刻は昼で上のアメスポイベントとはかぶっていない時刻のサッカー英Premier LeagueのChelsea x Liverpool戦という好カードは71万人視聴となってます。WNBAがざっとChelsea x Liverpoolの3倍です。


WNBAの決着戦はNew York Libertyの初優勝で終わったんですけど、Libertyのエース格の2人=Breanna StewartとSabrina Ionescuが全然当たっていない苦しい試合。なんとか延長戦の末に勝利。時間帯はちょうどNLCSが中盤の膠着した時間帯がWNBAの最終盤に当たっていたので見やすかったです。

Ionescuは今年の2月のNBAのAll Star WeekendでStephen Curryとサシで3ポイントチャレンジをやっていたあの選手です。当然ながら3ポインターが売りの選手なんですけどこの日は終盤に1本決まるまで8本だか9本だか外しまくり。2ポインターも入らず1/19という酷い内容。

いま時期外れに書いてしまいますがあのAll Star Weekendでの男女のサシの勝負なんていうStephから見たらなんの得もない企画をやさしく受けてくれるところがStephen Curryの人の良さですね。Ionescuは勝つ気満々で臨むもStephの勝利。
男女の3ポインター対決っていうのはカレッジでは毎年やっていてときどき女子が勝ちます。

NLCSは第3-5戦がFS1で放送

NLCSは場所をNew York Metsの本拠Citi Fieldに移して今夜第3戦。三夜連続でケーブル局のFS1での放送。第5戦までFS1なんだなあというのがこのスケジュールを知ったときの感想でした。FS1の力がかなり落ちているのではないかというのが危惧です。
第4戦での決着は少ない(今季のNLCSに関してはもうない)のでまあ良いとして決着戦となる可能性が増える第5戦もFS1なのかという。

FS1はFOX系列のスポーツ専門局でcable cuttingが進行する前はESPNの対抗局としての地位を持っていたんですが、cable cuttingで特に比較的若い家庭がケーブルTVやサテライトTVと契約しなくなった時期以降かなり露出力が落ちている。ストリーミングベースのプロバイダだとESPNはあってもFS1はないというパッケージが増えていると思います。

FS1の朝の人気スポーツトークショーだったUndisputedも解体され、共同ホストだったShannon SharpeはESPNに移籍。Undisputedは別の元選手を起用して延命を図りましたが失敗。
他でもつい最近サッカーMLSのSupporter's Shield(レギュラーシーズンチャンピオン)のトップを走る2チームInter Miami CF@Columbus Crewの直接対決試合がFS1で放送されて驚きの76,000人視聴という数字を出したばかりです。Inter MiamiはMessiも出場、Miamiが3−2で勝ったという試合なのですがまったく話題にもならず、数字も桁違いの低さの76,000。ここまで酷いかと驚かされました。

同じ試合はFOX系列のスペイン語スポーツ局である FOX Deportesでも放送されておりそちらが81,000人。そちらと併せて考えれば15,7万人。この時間帯の裏番組はMLBのLDSだったんですけどそれにしてもここまで低いかという数字になってます。 FOX Deportesを見ていた(たぶん)熱心な在米アルゼンチン出身者のお陰で英語放送の倍を全体では確保できましたが、アメスポ全体特に英語話者の間では無視されたに等しい。この試合Messiは2ゴール。ちょっと前にも書きましたがMessiがアメスポの混み合う10月に活躍しようがそれはアメスポ市場では昨年夏のように話題になることはない。MLSの首位攻防戦でも話題になることはない。そういう現実です。

ただひとつだけ擁護できる要素があるとすれば放映がFS1だったことですね。上述のようにFS1は近年チャンネル全体として露出力が大きく落ちている。FOX系列もはっきりそれは理解しているようで、例えば土曜日のカレッジフットボールの午前中のプレショーも地上波のFOXの方に移行してしまっています。MLSの素の露出力が低いところへ力の落ちたFS1での放送では一般スポーツファンには届きにくかったかと。

そういう昨今の成り行きがあったのでNLCSが第5戦までFS1での放送なのかというのは不安材料な気がします。プレーオフの放映スケジュールを組む段階では野球どころのNew York Metsと豪華打線話題豊富なLos Angeles Dodgersというベストカードになるとは想定できないわけですから地上波FOXのプライムタイムを明け渡すわけにはいかなかったということでもあるんでしょうが。

NFLの真裏でLCS開幕

今夜からMLB NLCSが開幕。New York Mets@Los Angeles Dodgers戦。時刻で真裏の番組となるNFLの日曜夜の試合はCincinnati Bengals(1-4)@New York Giants(2−3)という大したことがないカード、もっと有りていに言えばそれぞれの地元以外ではクソカードと呼んで差し支えないカードなのでMLBにとっては視聴者の取り合いでは好都合。
NFL側から見れば当初はCincinnatiがこの時期に既に脱落になっているとは思っていなかったはずです。

翌月曜日のNFL Monday Night FootballとALCS第1戦Cleveland Guardians@New York Yankees戦も含めてどのぐらいの視聴率結果になるか。
NFLのMNFはBuffalo Bills@New York Jets。つまり日曜夜も月曜夜もNFLはNew York市を本拠とするGiantsとJetsが登場。さらにはビジターもニューヨーク州のBillsが登場なのでMLBのスケジュールを見込んで全米でも数少ないNFLがMLBに劣るマーケットであるニューヨーク関連チームを意図的にここへ集めているという風に考えて良いのでしょう。日曜日はほぼ同時刻にMLBとNFLの試合が始まりますが、月曜夜はMLB ALCSの方が7:30PM試合開始、MNFは8:15PMキックオフ予定となってますから同時スタートの日曜日よりはMLBに若干有利。

ところでいまどきは二画面以上で見るお宅も多いのだろうと推測するのですがその場合の視聴率の数字ってどうなるんですかね。

10月に活躍したってダメなんですよMessiさん

10月。NHLが開幕。NBAも既にプレシーズンマッチがスタートしてます。アメスポ最強NFLとカレッジフットボールもシーズンたけなわ。MLBもポストシーズンが始まってます。個人的にはNASCARのプレーオフも8人に絞り込まれる段階に入ってきて佳境。10月はアメスポが最も混み合う時期です。今年はさらに今年になって急激に人気を伸ばした女子バスケのプレーオフなんかも今やってます。

昨年夏にInter Miamiでゴールを量産して大いに話題になったLionel Messiがケガから復帰後の5試合で5ゴールだそうで、出場すれば相変わらずMLSでは無双状態のようです。しかしながらメディア露出はない。表題にそのまま書いてしまいましたがアメスポが一年で一番込み合うこの時期にMLSで活躍してもダメなんですよ。昨年露出が確保できたのは夏場のMLBのレギュラーシーズンぐらいしかメジャースポーツのない暇な時期だったからであって、今の時期では。

Messiはこの夏のCopa America米国大会にアルゼンチン代表として出場。その前後のMLSへの出場は見送り。お歳37歳ですからCopa Americaで真夏に散々走り回ったのでケガという名の休養はなんら問題ないとは思いますが、MLSのアメスポ内での地位向上というテーマで考えるなら2年目のMessi効果はかなり限定的になってしまったなという感想になります。

以前から何度も書いてますがMLSのアメスポ内での立ち位置はなかなか上がっていかない。一昔前のようにいつリーグが潰れるかというような時期は既に過ぎて経営の安定は確保しているのですが、ではメジャースポーツの枠組みに届く勢いがあるかと言うと、昨夏のMessi効果はあったもののMLS全体としてのTV視聴率は伸びていない。逆に落ちている。
AppleTV+での放送分はAppleが視聴者数を公表しないので謎のままですが、地上波FOXなどでの視聴率は苦戦。過去30万人程度は確保していたのが20万人台の下の方という試合が今年は発生して明確に低下。MLS Season Passという年間見放題プランにコアなファンが移行して地上波で見るカジュアルなファン数が減っている可能性もありますが数字としては見栄えは悪い。

外部事情としては英Premier Leagueその他のサッカー放送が拡充しておりそれでMLS放送が侵食されている可能性が指摘されています。時刻としては欧州サッカーはアメリカ東部時間の午前中から午後早くまでが放映時間帯で、MLSの放送は夕方で重なってはいないんですがそれでもさすがにEPLを朝から2試合見てさらにMLSを見る酔狂なサッカーファンの数は限られているという可能性はありそうな話です。

もう一つの外部事情としては今年何度も書いてますが女子バスケのWNBAが視聴率で3倍増、動員でも爆上げという成長をした点が響いてる可能性があるかないか。WNBAの今年の爆上げ以前ではWNBAとMLSのTV視聴率はほど近いレベルでした。WNBAの2023年シーズンの平均視聴率は50万人で前年比21%増。MLSの2023年の平均は34万人で前年比ほぼ横ばい。つまりWNBAの方が昨年のまだCaitlin Clark効果が出る前の時点で既に上昇傾向だったわけです。ざっとの話、6大メジャースポーツジャンル(NFL/NBA/MLB/NHL/カレッジフットボール/男子カレッジバスケ)があり、その下に準メジャーとしてゴルフやNASCARがありその辺の括りでWNBAもMLSも準メジャーと認識される場合が多かった。それがWNBAが2024年春に一気に抜け出して準メジャー内で上位に昇格しました。

女子バスケが国内男子サッカーの視聴率を食うか?という疑問は真っ当な疑問なんですが、今年に関してはあったかもなあという気がします。そこはアメリカサッカーの特殊性もあるし。サッカーってアメリカ国内ではLGBTQ+フレンドリーなジャンルなんですよ。女子サッカーのNWSLはもちろんのこと、男子のMLSの試合でもスタンドで虹色旗が目立つのはアメリカサッカーの特徴でもある。
その層がCaitlin Clark効果に当てられて春先は女子のNCAAトーナメントで毎試合のように視聴率記録を更新し、そのまま間を置かずにWNBAシーズンに流れ込んだのに貢献していた可能性はあっても不思議じゃないように思えます。Clarkが指名されたドラフト番組が200万人視聴。NCAAトーナメント女子決勝は男子の決勝を史上初上回って1870万人とTV視聴率が出ないこのご時世に桁違いの数字を出してます。これだけ極端な数字を叩き出すということは普段女子バスケを見ない層が大移動していないとこうならない。その中にはサッカーで虹色旗を振っていた層もかなりいそうな気がするんですよね。それがそのままWNBAの定時放送の3倍増に貢献していたらサッカー放送が割を食ってる可能性はあるかと。

そんなこんながあった中、Messi効果は今年はほぼ不発。外国人であるMessiにとってはアメスポ市場が10月に混み合うかどうかは思慮の外かもしれませんがMLSが準メジャーから上に行くことの障壁は上のメジャージャンルではなくそれより手前の競争相手の方かもなと思わせます。

DirecTVがESPNを失う

ESPN.comのサイトに抗議広告が載っていて知りました。サテライトTVプロバイダの大手DirecTVがESPNおよび系列の地上波ABCの放送ができない状況になっているようです。カレッジフットボールとNFLというアメスポ2大人気ジャンルの開幕の時期。さらにはテニスの全米オープンも進行中。このタイミングでのESPN系列の視聴ができないのはDirecTVの契約家庭にとっては大きな問題で、急遽ネットベースのプロバイダに契約を切り替えるなどドタバタしていそうです。
日曜日からこの問題は始まった模様。日曜日の一番の目玉だったスポーツコンテンツのLSU x USCの激戦は地上波ABCでも放送していたので地上波をキャッチすれば視聴可能であったはずですが、DirecTV経由でも見られたはずの部分は不可になっていたと。DirecTV経由でのHuluの視聴も止まってるようです。

理由はDirecTVとESPNの親会社Disneyとのライセンシング契約のもつれから。金額その他どの部分で具体的にモメているのかは未公表。DirecTVも危ない橋を渡っている感じになってます。チキンレースです。

DirecTVは過去にはNFL Sunday Ticketを独占、域外のNFLの試合を全試合見られるのはDirecTVだけという大きなアドバンテージがあったので契約家庭数で業界最多を誇ったのですが、その肝心のNFL Sunday Ticketの権利はYouTube TVに移ってしまっておりDirecTVのアドバンテージは消滅。残ったのは業界一高かった月額料金だけ。
それでも元々高額な料金を払うことを厭わなかった契約視聴者は細かいことは気にせずに契約を続けていた可能性はある。テックに弱い高齢の消費者もそのまま契約を続けていた可能性もある。過去数年のCable cuttingのトレンドは金額に敏感な消費者を抱える比較的安価なTVプロバイダの契約者に顕著であったろうとは想像ができるからです。

しかしESPNが見られないとなると鷹揚だったDirecTVの契約者もこれは何事かと気づかざるをえない。このままDirecTVを含むサテライトTVプロバイダという業種は斜陽産業となっていくのか。


話が逸れますがチームの大量離脱で2校になってしまったPac-12は今季も一応カンファレンスとして存続しているようです。おもしろいのは残ったWashington StateとOregon Stateの大半の試合の放送がマイナー地上波局だったThe CWで放送される予定になっていること。大量離脱でPac-12が昨季まで持っていたTV放映権の支払いを拒否され別の放映チャンネルが必要となったPac-12がThe CWと急遽組んだという弱者連合状態と言えます。
しかしながらThe CWは地上波なのでこの記事の前半で書いたような放映権者とプロバイダの確執に巻き込まれることなく全米の大半の消費者に届くことになります。The CW側から見ると同社はACCフットボールの放映権を持っていたところへ弱体化したとは言えPac-12を加えることもできてこの時期のスポーツコンテンツの充実に成功。

The CWはマイナー地上波ネットワークだったのがこれでLIV Golf、NASCAR Xfinityシリーズ、WWE NXT、ACCフットボール&バスケットボール、Pac-12など一流以下のコンテンツながらスポーツ放送で一定の力を蓄えてきています。ケーブルTV局というジャンルが緩慢な死に向かっているように見える現在においてそこから漏れてくる各種コンテンツの受け皿として存在感を増しています。

今回最大手TVプロバイダだったDirecTVのトラブルの発生と、細かく拾って地位を上げるThe CWに業界の変化を感じさせられます。

メジャースポーツのない2日間

過去から長く言われてきた言い回しとしてMLB All-Star戦の翌日はアメスポメジャースポーツがない唯一の日とされてきました。アメスポには4大スポーツがありますが夏場にシーズンが行われているのはMLBのみ。伝統的にはMLBはAll-Starブレイクが短くレギュラーシーズンをホームランダービーの前日まで開催。ホームランダービーがあって翌日にAll-Star戦があってその翌日だけが空き日で、そのさらに翌日にはレギュラーシーズンが再開でした。

長年の習慣でそうなっていたんですがさすがに過酷、特にオールスター戦に出場する選手は休みもない。夏の暑い盛りにAll-Starに駆り出され休みもろくすっぽないのは前時代的。
他のメジャースポーツでオールスターブレイクでの休みが長めに確保されていった経過もあって後手ながらMLBもオールスターブレイクが延長され、All-Star戦が火曜日、レギュラーシーズンの再開は金曜日でオールスター戦に出た面々も水木と丸2日は休養になるということになってます。たった1日伸びただけですけど。

それで以前はMLB All-Star戦とレギュラーシーズン再開の間の1日がアメスポメジャーのない空白の1日と呼ばれていました。1年365日でアメスポメジャーがない唯一の日だったわけです。それが2日に増えたと。

で、過去には後発零細だった時期サッカーMLSがその空白の1日にMLSのオールスター戦を入れてみたり、その後はESPNがスポーツ大賞的番組であるESPYの放映日にしていたりしました。
しかしながら今年のESPYは既に先週終了。ああもう空白の日を狙うのはやめたんだ、と。MLSのオールスター戦は次週でMLSオールスター対メキシコLiga MXオールスターというカードが組まれています。

じゃあ今日明日ってスポーツ放送最大手ESPN系列は何を放送しているんだろうと興味が湧きました。番組表を見ると今日水曜日の生のスポーツ番組ではNBAのSummer Leagueの試合が多数放送。加えて女子WNBAのIndiana Fever@Dallas Wingがプライムタイムに。以前から書いているバスケの夏侵攻ですね。それに今季は女子のWNBAも援軍、それもCaitlin Clarkというニュースターのチームの試合で実戦力として加わってることになります。

他系列では男子サッカーMLSが14試合を開催しています。MLSは29チーム構成なので14試合は一日にスケジュールできる最多。空白の日を狙って週中の試合を一気に持ってきたという意味です。放映はすべてApple TV+なので集中開催してもどれだけの視聴があるのかは疑問ですが。Copa Americaに出場していた選手たち(Inter MiamiのLionel MessiやLuis Suárezを含む)も当然出場しないでしょう。MLSのApple TV+での囲い込みの是非についてはまた別途に議論します。
他では水曜日はプロレスのAEWの定時放送の日。空白の日にここのところ苦戦している視聴率の数字を伸ばせるのか。

翌木曜日はMLSもWNBAの試合もなくほぼNBA Summer Leagueだけみたいですね。他系列まで探しきれませんからなにかあるかもしれませんけど。

$2.6 Billionで元カレッジアスリートと和解判断

NILという形で学生アスリートへのカネの流れを合法化したNCAA。現行の学生たちは才覚次第で稼げることになったので良いとして、つい数年前までは学生アスリートがその地位と名声を利用して利益を得ることは違反行為とされていたわけです。NIL施行前後で事情がころっと変わってしまった。

2005年のハイズマン賞受賞者だったRB Reggie Bush (USC、後NFL New Orleans Saintsなど)が金銭の授受の違反でハイズマン賞を事後に剥奪されました。それがNILが施行されて当時の金銭の授受も現行ルールなら違反に当たらないと事情が変わったこともありハイズマン賞受賞の事実が再度確認されてます。以前に一度返還した同賞のトロフィーも正式にBushの手に戻されています。
ハイズマン賞の場合、元受賞者は毎年の実質のカレッジフットボールの最優秀選手賞であるハイズマン賞の選出に関わるし、受賞セレモニーでも(存命で可能なら)登壇できるという伝統になっています。Bushは剥奪期間中はそういう受賞者としての名誉ある活動もできなかったのでご本人も復活できて喜んでいることでしょう。

Bushの場合はプロではあまり活躍できませんでしたが、それでもSaints在籍時代にSuper Bowlリングもゲットしてます。引退後はFOXのカレッジフットボール解説で職を得て幸せなフットボール人生になっています。喋りはまあまあ。FOXの解説陣にはUSCでBushと組んで数々の名勝負をやった当時のQBのMatt LeinartもいてBushからすれば居心地の良い職で好き放題喋れて生活ができるんですから。その上ハイズマン賞の名誉回復も果たしてます。


Bushはそれで良かったのですが、他にも小金をスポンサーやらブースターやらから貰ったことで出場停止を食ってプレータイムが削られた選手や、NIL的ルールがあれば稼げたはずのビジュアル抜群の選手や、疑惑が持ち上がって転校都落ちを余儀無くされた選手たちも無数にいたはずです。これをどう救済するかという問題があって、その救済措置への総額が表題で書いた約$2.8 Billionになるというのが新しい報道です。支払う主体はNCAAおよびPower 5カンファレンスとなってます。

誰に幾ら払うのかはまったく不明。NIL施行直前の選手たちは含まれるのでしょうが何年前まで救済対象いなるのかも、どのスポーツの選手も貰えるのか、スター選手補欠でいただけの選手も貰えるのか中身はまったく不明です。$2.8 Billionというと今の円ドル相場だと4400億円ですか。桁が外れているので間違っていたらすみません。4400億円ってすごいような気もしますが、救済対象となる人数が多い可能性も高い。大雑把な話、救済対象元選手が28万人いたら1人頭 $1万、150万円程度でしょう。いまとなってはただの人になっている元選手がほとんどですから$1万でも貰えるなら貰うんでしょうけど、いまのNILで荒稼ぎしている選手たちの稼ぎっぷりからすると残念な額。

救済対象を絞れば一人頭の金額は増えますがどうするのか。当時のルールのせいで稼げたはずのカネということで言えば10年前のフットボールやバスケのスーパースター選手たちに手厚く還元するほうが合ってるいるようにも思えるし、全員公平にとマイナースポーツの補欠選手もスーパースターも同額とするのか。さらに男女同権問題が絡んでさらにやっかいな分配議論となりそうに見えるニュースです。

あとこれは微細な話になりますが支払い主体がPower 5カンファレンスとなってます。しかしPac-12は既に崩壊して今季を最後にほぼ活動停止になります。意味あんのかなという。いまちらっとPac-12の公式ページを見ましたが2023−24シーズンのことだけ書いて所属校の大量離脱の様子はパッと見には目立たない状態になっているようです。


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