アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

Lacrosse

2028年の6人制ラクロス

五輪競技の放送が男子がバスケが終わったらあとは延々水泳をやっていて、それもなんだか米代表選手たちが準決勝レースからふるわず。飽きてきて他はなにをやってるのかなとチャンネルを変えたらABCではプロ野外ラクロスPLLの放送をやっていました。

その放送中に何度も言及されていたのが次の五輪となる2028年のロス五輪で競技が復活するラクロスについての話題。男子競技としては20世紀序盤以来の復活。女子競技としては初めての五輪競技採用となります。ルールはLacrosse Sixesと呼ばれる6人制。通常の野外ラクロスは10人制ですがそれをスケールダウン。流れとしては15人制だったラグビーユニオンが7人制セブンスとして五輪競技になったり、より最近ではバスケットボールの3x3といった具合に伝統競技の簡素化・短縮化・コストダウン化に沿ったものでしょう。

その宣伝の言い方を借りると「あと2週間もすればパリ五輪は終わってあとはロス五輪に一直線。ラクロスの五輪登場へ向かって行くのが待ち切れない」とのことでラクロスコミュニティでは期待感が大きいようです。

ラクロスはアメリカとカナダが圧倒的に強い。これはたぶんLacrosse Sixesになっても事情はかわらないはずで、現実的にはその他の参加国が銅メダル狙いで戦うという競技になりそうです。五輪のルール上、ラクロスの世界では米カナダに次ぐ実力を持つイロコイ族=Haudenosauneeは出場が認められない可能性が高い。よってオーストラリア、日本、イギリス、イスラエル、プエルトリコ辺りまでがメダル候補か。

Lacrosse Sixesでの世界大会は次期2027年の世界選手権が初めてでそれがほとんどの参加国にとっては五輪前唯一のLacrosse Sixesでの実戦になりそう。

ラクロス内では五輪採用は大きな出来事でしょうが、今進行しているパリ五輪を見ても分かる通り新興スポーツが試合の放映や五輪報道で取り上げられることは稀。どれほどラクロスの五輪採用が北米外への露出向上に寄与するのかはわかりません。五輪競技になればそれだけで国家から強化予算がもらえるような国も世界にはあるようなのでそういう意味では意義はあるのか。

米国内ではどうですかね。例えばバレーボールのように長年五輪競技でもあり、NCAA競技でもあり、世界でも実力はトップに近いレベルの競技でも米国内で人気競技にはなれないままという例もあります。ラクロスが五輪競技化したぐらいで事態がどれほど変わるものか。

PLLのチーム名に都市名がついた

読者の方に1年前に書いたプロクリケットリーグ(MLC)発足の記事にコメントを付けていただいて、そういえばという話題があるので書きます。ラクロスのツアー型プロリーグであるPremier Lacrosse League(PLL)のチームに都市名が今年から付けられています。クリケットのリンク先の記事で書いたのは新組織のMLCのチームにはアメスポでおなじみの「都市名+チーム名」で名称が付いている。例えばSeattle OrcasとかSan Francisco Unicornsとか。ただしその都市での興行の実態はなくただ名称として使ってるだけという変則な状態でした。

その比較として当時書いたのはラクロスPLLでは都市名がなかった。別の記事で指摘したのは「ツアー型興行で都市固定のフランチャイズを持たないのでチーム名に都市名が付いていないのは正直ではあるんですが、見る側としてはとりあえずのとっかかりとして応援してみようというチームが決められないということになってます」というもの。

PLLはパンデミック前の2019年にリーグ戦を開始して今季が6シーズン目。上述の通りホーム都市はなくそのままRedwoods、Whipsnakes、Chaosなどという名称で全米各地に週末にツアーしながらリーグ戦を消化する形でした。別組織だったMajor League Lacrosse(MLL)を吸収したときもそちらでBoston Cannonsとして存続していたチームから都市名を剥がしてCannonsに変えてしまう徹底ぶり。

ところが今季ちらっとTVで見かけたらチーム名に都市名がついていました。アレ?と。PLLよりさらに後発のMLCがホーム都市での興行実態がなくても都市名を付けているのに感化されたのかなと。
調べてみるとPLLがツアーで行く都市名が付与されています。Boston Cannonsは元の名称に戻ってます。他の7チームのうち6チームにはCalifornia Redwoods、Philadelphia Waterdogs、Maryland Whipsnakesなど以前からのチーム名に都市名(Californiaは州名ですが)が加えられて新チーム名となっている。ツアー先で都市名の付いたところがそれぞれホームチーム扱いされていくということですね。

唯一名称が完全に変わったのが前年までChromeというチーム名だったチームが今季からはDenver Outlawsとなっています。Denver OutlawsというのはMLL時代に観客動員で突出していた西の飛び地のチームで、当時はホームゲームをNFL Denver Broncosの大型スタジアムMile High Stadium(現Empower Field at Mile High)でプレーしていた異色の存在でした。毎年恒例の花火大会の特別試合ではその大箱スタジアムに2万5000人規模で集客をしてその数字が反映してMLLの中では動員最大。花火大会を除いても動員では好成績を残していたチームです。MLLでは後発でしたが優勝3度。ユニフォームもなかなかかっこ良かった。
MLLが身売りの形でPLLの軍門に下ったためミニ名門チーム名であったDenver Outlawsの名称もPLLの自由になっているのでしょう。都市名を各チームに付与することになったこの機会にDenver Outlawsの名も復活ということですね。センスとしては悪くないのではないかと思います。

Pac-12崩壊でのフットボール以外での影響

Pac-12の崩壊が訴訟に発展しています。Oregon StateとWashington Stateの2校のみが2025年以降もPac-12に残る見込みになっているわけですが現時点では脱退予定校もメンバーのうち。よってPac-12の現行の理事会では脱退予定校が多数派になってしまっている。脱退予定の学校と残留の学校ではPac-12の運営方針についての意向はまったく異なりますが今のままでは脱退予定校の意向が優先されてしまう。それを阻止するために残留2校が理事会議決の緊急差し止めを求めて訴訟を起こしてます。放っておくと脱退予定校が都合の良いようにカンファレンスの財産を分割したり脱退金を引き下げたり無料にしたりといった事を議決してしまうことを恐れての訴えです。当面の権利保全の申し立て。最終的な財産分割などは時間をとって別途の話合い、それで決着つかなければ別の訴訟ということでしょう。
緊急性のある事態、一度起こってしまったら善悪関わらず元に戻せない事態でやったもん勝ちを未然に防ぐために裁判所が使えるというのはアメリカの社会システムの良いところの一つではあろうと思います。

崩壊後に行き先が決まっている学校は先の見通しが立っている上にPac-12の財産分割などでも多数派を形成して有利。逃げ遅れた2校は身の振り方すら決まっていないのに貰えるはずだった脱退金もチャラにされてしまいかねない危機。以前にもちょっと指摘したPac-12 Networkというカンファレンス手持ちのTV局の権利も脱退予定校が勝手に解体してしまいかねない。

移籍する学校のうち遠距離カンファレンスに加わった4校(Big TenへUCLAとUSC、ACCへCalとStanford)にも悩みはあるわけですが、それはたかだか各スポーツのスケジュール・移動の都合とそれに伴う学生リクルートでの不利ぐらいです。すってんてんになろうかというWashington State/Oregon Stateとは切迫感が違う。


カンファレンス再編の動きは全てフットボールが理由です。巨大なマネーマシンであるカレッジフットボールの稼ぎ出すお金で各校はスポーツ部全体を運営しています。他の競技の都合は二の次三の次。

その肝心のフットボールは週末土曜日が試合のほとんどですし巨大カンファレンスの西の飛び地となった各校は遠征は大陸横断の長距離になるわけですが、Pac-12内で戦っていたときも飛行機で移動していたわけです。Pac-12南のアリゾナ州から北西部の学校へアウェイに行くのは飛行時間だけで3時間以上かかっていたはず。大陸横断移動となれば4時間5時間のフライトとなりますがその差は大きくない。専用機でノンストップで行くわけですから機内での睡眠時間が2−3時間長くなるぐらい。日帰りでの遠征でしょうから時差もさして問題にならないと想像できます。それもせいぜい年4試合といったところのはず。

問題は週中の試合もあるバスケおよびマイナー競技の方。言われているのは1度の東部遠征で転戦2−3試合を消化する形にするというものです。ただそうなってくると時差の影響もより出るし学業にも影響する。マイナー競技は犠牲になれってことで済む可能性がありますが、バスケはリクルート面で不利が発生するかも。バスケのUCLA男子やStanford女子などは名門と言えますがいびつなスケジュールを嫌う選手もありえます。UCLAバスケの将来の弱体化につながる可能性が否定できません。

フットボールには劣るものの男子バスケは各校ともカネを生む側ですが他の競技のほとんどはフットボールの生む巨大予算の受益者。例えばStanfordの女子バスケのような伝統校でも黒字になったとしても金額はしれている。Pac-12に限らず例をあげれば例の8万人動員のNebraskaの女子バレーボールチームとかLSUの野球などが地元の人気はなぜか高く単体黒字ですがそういうのは例外に属します。それ以下のマイナー競技ではコスト面ではフットボールが稼いできてくれるお金に頼って運営されている。よってマイナー競技にはこの問題に限らず発言権は低い。ないに等しい。


別の話として男子バスケのCBS Sports Classicはどうするんでしょうか。CBS Sports Classicというのは毎年冬休みの時期に行われる中立地での特別試合。参加校はBig TenからOhio State、SECからKentucky、ACCからNorth Carolina、Pac-12のUCLAの4校での固定メンバーで3シーズンをかけて総当りをするという企画です。それが今回の移籍騒動でUCLAとOhio StateがBig Ten所属になってしまったので企画側からするとメンバー校の入れ替えをしないと全米から強豪を集めたという感じにならなくなります。
KentuckyはSECから動く可能性はゼロですがNorth CarolinaはBig Tenの拡大のターゲットと目されることもあった学校です。今回ACCも積極拡大策に舵を切ったのでACCが草刈り場になる可能性は低くなったようにも見えますけれど最悪の場合CBS Sports Classicの参加校4校のうち3校がBig Ten所属となる可能性もなくはなかったってことでそんなことになったらCBS Sports Classicという企画自体が根本的な練り直しを迫られたはずです。
CBS Sports Classicは今の4校のままで2026年まで継続すると昨夏に契約更新してますからそこまではしかたなくそのままでしょうか。

なおCBS Sports Classicが創設時に真似をした元のChampions Classicは参加校4校は今回のカンファレンス再編で影響を受けていません。Duke(ACC)Kentucky(SEC)Kansas(Big XII)Michigan State(Big Ten)とバランスよくこちらはこれからも続いていきそうです。ひょっとしたらMichigan Stateを切ってOhio Stateに乗り換える可能性が弱あるかもぐらい。


さて別の話としてひょっとしたらPac-12崩壊から得が発生するかもという種目があります。ラクロスです。
ACCとBig Tenの西海岸への拡張でラクロスは西進の機会を得たかもしれません。
過去に紹介したことがありますがラクロスという競技は普及が国の東側に極端に偏っています。その過去記事を書いたのは2012年のことでその後はBig Tenでラクロスが正式種目として採用されたりと10年以上前からは勢力圏を広げていたわけですが。それが今回のカンファレンス再編でBig Ten所属となった西のUSCやUCLAがD-Iラクロス部の設立に動く可能性が出てきたと思います。Big Tenには男女ともラクロスが正式種目として成立しLos Angelesの2校が加わったことではからずも一気にDivision Iラクロスが西海岸に到達したことになります。
同様にACCにもラクロスが強いDukeやSyracuseがいるのでCalやStanfordも参入がありそう。カンファレンス再編ではラクロスや他のマイナー競技に発言権があったわけもないんですが結果的にラクロスという競技のアメリカ大陸西進というテーマが勝手に進展したことになります。

ラクロス世界選手権で米代表が優勝

男子ラクロス世界選手権が終了。決勝戦では米代表がカナダを終盤に突き放して快勝10−7。二大会連続の優勝。米代表は1人を除いてPLLなどプロの選手で構成されていましたが唯一のカレッジ選手のBrennan O'Neillが5ゴールの活躍でなぜ21歳の彼がプロの大人たちに混じって選出されたかを証明した試合となってます。大会MVPにも選ばれてます。
O'Neillはまだ1年カレッジの資格が残っているのでたぶん来季もDukeでプレーするのだと思いますが、野外プロリーグPLL(や以前のMLL)のドラフトを見ていても知ってる選手がいたことはめったにないのですが来季のそれは微弱注目なのでしょう。

試合放送中に言っていたのですがまだ今でも2026年のロス五輪にラクロスが含まれる可能性が残っているんですね。この秋に決着すると話していました。五輪の種目決定はそんな時期まで引っ張られるものだったでしょうか。

どうですかね。どなたが決定権者か存じませんが今大会を見てラクロスを五輪でやろうってなるんですかね。大会は米代表が全勝で優勝。対カナダ戦2試合と対Haudenosaunee戦以外は圧勝の連続。カナダは対米戦2敗(5-7, 7-10)で5勝2敗で準優勝。3位はHaudenosauneeですがこれはIOCに認証されたNOCを持っていないのでHaudenosauneeのままでは五輪への参加資格がない。Haudenosauneeの地域は米加にまたがる地域でIOC視点のパスポートだとカナダがアメリカまたは二重国籍のはず。よって個人は米加の代表に加われば出場可でしょう。ただそれを潔しとしない個人もいるかも。いずれにせよ今大会3位チームのHaudenosauneeチームは五輪出場はムリ。4位となったオーストラリアは上の3チームに完敗してます。5位の日本は今大会では米加と対戦なし。6位イングランドは英国として五輪参加可能。実力は米加が他の想定参加国から飛び抜けています。

地球上の配置で言えば北米x2、オセアニア、アジア、ヨーロッパと特定の大陸に偏っていないという意味では五輪採用に有利な上位の顔ぶれとは言えるのかもです。
その下の7位以下も中東イスラエル、カリブ海ジャマイカ、欧州イタリアとなかなかうまくばらけています。10位のプエルトリコはアメリカの統治領ですが五輪には独立で選手を送っているのでこれも出場資格あり。もしラクロスが五輪採用されたとしてもあまり大所帯にはならないと想像できるのでこの辺までが出場資格を得るってことでしょうか。

余談になりますが私は個人的な知り合いで(あとから思えば)Haudenosauneeの地方の出身の女性の友人がいました。彼女の話だと彼女の育った家の裏に小さな石垣があってその北はカナダ、こちら側はアメリカだったそうです。子供の頃は毎日のようにその石垣を超えて遊んでいたとのこと。その話を聞いた当時は私の側にHaudenosauneeイロコイ族についての知識がなかったので彼女の所属部族などの情報は聞いてません。米加の国境の管理がそんな風になっているところがあるのかと驚いたものです。

Haudenosauneeについて簡単に説明すると北米先住民の6つの部族の連合(当事者の言い方では連邦)でアメリカとカナダの両国から独立性を保って居住を認められている自治特別地区ということになります。Haudenosauneeは訳をすると「長い家を建てた人」の意。経済的にはたぶん米加の支援保護に頼っていることが想像されますが精神的には独立性を維持しているようです。
それが行き過ぎてラクロスでは2010年の英国開催の世界選手権にイロコイ代表(当時の呼称)の選手たちがイロコイ自治政府発行のパスポートで英国に入国しようとして英国政府に拒否をされて不参加になるという騒ぎを起こしています。
Haudenosauneeが国家から独立して世界選手権に参加が認められているのはラクロスという競技自体が北米先住民のスポーツから発達したという点に由来します。2大会前まではイロコイの名で大会参加。

ラクロス日本代表が世界選手権5位

San Diegoで行われている男子ラクロスの世界選手権で日本代表がイングランドに快勝して5位を確保。大会概要は変わりえますが次期大会の最上位カテゴリ入りを決めているはずです。最終スコアは8-4。試合の最終局面はイングランドはゴールキーパーを引き上げてエンプティネットで臨んでいたので日本代表が望むならもっとたくさんゴールを上げることができましたがそうはせずパス回しで試合終了。スポーツマンシップをもってってことになるんでしょうか。TV解説の方は日本は優しいと評してました。他のチームなら咎めてもっとゴールを入れちゃうんじゃないかと。

しかしながら試合終了直前にイングランドの選手がヘルメットで日本の選手に頭突き、後ろ向きに昏倒して動かなくなるという危険な場面があり後味の悪い結末になってます(youtube)。救急車で搬送。
これ、そのラフプレーが撮影されていたのでさすがに処罰の対象にしないとまずいのではないか。撮影されていなかったらと思うと怖いです。アマチュア大会だとそんなことはいくらでもありそうです。イングランドはA組で完敗の連続で全敗。決勝トーナメントでも一回戦でプエルトリコに苦戦して延長戦勝利、そしてこの日の日本戦に敗戦で1勝7敗。フラストレーションのたまる大会だったかもしれませんが最後にラフプレーでさらにすっきりしない大会になってしまったような。

なお前項で書いた5位〜8位決定戦が元々の予定通りに行われなかった理由は私が見ていた範囲ではこの日本 x イングランド戦でもイスラエル x ジャマイカ戦の中でも説明がなかったと思います。
二試合とも実力拮抗の好試合。特にイスラエル x ジャマイカ戦は試合を通して接戦激戦。延長戦の末この試合中一度もリードをできなかったイスラエルがサドンデスゴールを決めて7位となってます。両軍に拍手。敗れたジャマイカも好チームで楽しめました。10位となったプエルトリコなどもそうですが大半の選手は米国在住でカレッジでの活動で鍛えられた選手みたいですね。

日本代表は6勝1敗で大会を終了。これで次回大会は最上位カテゴリで四強=米加豪Haudenosauneeとの対戦が保証されることになりそうです。現実的な目標とする世界四強入りのためのアップセット狙いのターゲットとなる対オーストラリアと対Haudenosauneeの二試合が保証されるという意味でもあります。

今大会では日本代表は対Haudenosaunee戦でサイズの差で苦しんで唯一の敗戦を喫したわけですが4年後までに何らか解答を見つけることができるでしょうか。TV解説の受け売りですが日本代表は意表を突くプレー、トリックショットを使わず正攻法のプレーで勝ち上がってきたのは素晴らしいけれど上の4カ国をアップセットするためには正攻法だけでなくそういう変化技のレパートリーも開発していかないと伍していけないのではないかということでした。私の見ていた限りの感想では運動量が豊富で試合の後半に相手のペースが落ちてきた時間帯にアドバンテージを広げていた印象でした。世界選手権の試合スケジュールでは夏場の連日の連戦が続くだけにスタミナ勝負も大きな財産でしょう。選手たちもそこに自信を持ってるようにも見えました。Haudenosaunee戦でも第3Q序盤に反転攻勢の意気を感じました。

明日大会最終日は決勝アメリカ対カナダ、三位決定戦のHaudenosaunee対オーストラリア2試合のみの予定。他の参加各国はすべての日程を終了してリラックスして試合観戦ということになります。あの宴の後風のスタンドの楽しそうな風景は見ているだけでも幸せになれます。

政治宗教がからむこと

今回の記事は憶測を多く含みます。
現在開催中の男子ラクロスの世界選手権大会。一昨日の準々決勝で敗戦した日本代表はその後5位決定戦ブラケット(4カ国)に編入の筈だったかと思いましたがなぜか1日空き日ができて日本対イングランドで直接5位決定戦に臨むようです。同じく準々決勝で敗戦したイスラエルとジャマイカはイングランドや日本と対戦の機会のないまま7位決定戦に進むようです。

ラクロスの世界選手権は優勝国を決める機会でもありますがそれ以上にラクロスの普及が大義でもあります。普段はほとんど機会のない国際試合をこの大会で数多く組んで世界の各国で地道に活動をしている選手たちに力試ししてもらうご褒美的な大会でもあります。よって敗戦がこんだ各国も成績の近い国同士で順位決定のプレーオフの試合を組む。出場する試合数は上位国も下位国も6試合程度はプレーできるように設計されています。

それで今大会で日本と似た立場の下位ブラケットのチーム(19〜22位決定ブラケットまたは27〜30位決定ブラケット)は4カ国でミニトーナメント形式で順位決定戦を消化しているのでこの5位〜8位のところだけが事後に変わってミニトーナメントが行われなかったように見えます。なにか変です。何か事情があったのでしょうが5位6位になる可能性があったイスラエルにはちょっと不公平な扱いになっているように見えます。

天候が原因ではない。何らかのイレギュラーな事態のように思えます。元々の制度設計の通りならイスラエル対イングランド、日本対ジャマイカの二試合だったはずでそれぞれの勝者が5位決定戦に進むはず。
対戦拒否があったのではないかと推測してみます。日本とジャマイカの間に因縁があるとは思えない。だとするとイングランドとイスラエルの試合が行われないことになったことでのスケジュール変更か。想像すると英連邦内にはパキスタンやバングラデシュというイスラム教国も含まれているのでそちらの出身者がイングランド代表に含まれていてイスラム教の敵国であるイスラエルとの対戦を嫌ったかもしれません。イスラエルとジャマイカはOKなのですからイングランド代表にこだわりがありそうです。ちなみにジャマイカも英連邦の構成国です。

もしそうだとするとボイコットの主体はイングランドの方のような気がしますからイングランドを無条件に5位6位決定戦へ、イスラエルをそれより下位の7位8位決定戦に送るのは少々問題を感じます。国際試合でイスラエルとイスラム教国との対戦が避けられることはしばしばあることとは思いますからその場合の処理は何らか通例の処理方法があるのかも知れません。
一応今回の4カ国の振り分けとしては今大会前の国際ランキングで当該4カ国を割り振るとイングランドと日本が上位、イスラエルとジャマイカが下位ということにはなるようです。より多くの試合を組むことを良しとしてきたラクロス世界選手権でこういうイレギュラーな扱いが出てしまうのは残念な気はします。イスラエルとの対戦を望まない選手だけを外して試合をするという手もないことはないのかもしれませんが、それをイングランドチームの選手が受け入れなかったとか、またはそれではイングランドチームの実際にプレーする選手数が足りないとかでしょうか。

以上憶測です。大会の公式サイトにも理由はなにも書かれていませんので憶測するしかない。明日の日本対イングランド戦を観戦したらTV放送でなにかヒントが出るのかもしれませんけど、センシティブな話題なので口をつぐむかもしれません。

政治的怨敵との国際大会での対戦いうと昨年秋のサッカーのW杯でアメリカとイラン、イングランドとイランが対戦したのが記憶に新しいです。試合はつつがなく消化されました。あれは政治的怨敵であり、宗教的にはそこまでわだかまりはなかったってことか。それともFIFAにタガネをがっちりはめられていて対戦拒否とかしたら次大会からパージを食いそうでそういう動きに出にくかったかも。
その例との比較を考えるともし本当に宗教的理由からの対戦拒否を言い出した国があったとしたらラクロスの大会運営が舐められたという面もあったかもしれません。普及が第一義のラクロスの国際競技団体が第一回大会から長く貢献してきたイングランドを一時的にでも制裁・締め出しするというのはなさそうではあります。

ラクロス世界選手権@San Diego

男子ラクロスの世界選手権が開催中。今ちょうどグループリーグが終了して決勝トーナメント部分が始まるところです。ラクロスは観戦スポーツとしてはマイナーではありますが一応米国内でプロリーグも形を変えつつ存続しておりTV放送枠も確保しているというまあまあの立ち位置。以前からときどき当ブログでも触れてきています。今大会の放映はESPN系列で米代表の主要試合はTV放送(ESPNU)、他の全試合がストリーミングのESPN+で見られるという形になっています。

この世界大会は毎回そうなのですが力量の差のばらつきが尋常でない30カ国以上(前回大会は46カ国)を一つの大会に組み込んで開催、その創意工夫と努力と熱意が感じられて私は好きです。
但し力の差が大きくて早々に大差になって勝負にならない試合が多いのもまた事実で実力拮抗カードを選んで見ないと初見で何だコレ状態にもなりえます。個人的には3大会前の英国開催の2010年大会から継続して見ているのでどのカードが好試合になりそうかの感覚はそれなりにあります。昨日A組の最後の試合でA組3位4位を争ったHaudenosaunee対オーストラリアが激戦となりこれは楽しめました。ラクロス観戦の能力が私にはないので技術的戦術的なことがなにも書けない良さを伝えられないのがもどかしいのですが。

今大会のグループリーグでは日本代表がB組で圧勝の連続で4戦全勝。決勝トーナメントでは一回戦のドイツ戦に勝てばA組3位のHaudenosauneeと二回戦=準々決勝で当たる山に入りました。日本代表の目標は4位以内、具体的にはHaudenosauneeまたはオーストラリアに準々決勝で勝つという意味です。健闘を期待します。

現在のラクロスの世界選手権の仕組みではA組に実力上位の5カ国が集うのですが、A組5カ国目のイングランドはA組でけちょんけちょんにされて大敗の連続のA組最下位となってます。
でこれがもし次回大会で日本とイングランドが入れ替わって日本がA組に行けるとやっぱり同じ目に遭いかねないんですよね。つまりは上位4チーム(米加豪Haudenosaunee)とその下の力の差が大きい。四強に迫れる次の国がもっと抵抗できるとおもしろくなるんですがなかなかそうはいっていなさそう。でそこの壁を破りたいというのが今回の日本代表の目標というわけです。なのでそれは日本代表にとっての躍進というだけでなくラクロスの世界レベルの底上げという意味で突破できれば時代が動くということになります。
四強にチャレンジしていくべき5位候補は日本イングランドに加えて新興のイスラエル(C組1位通過)とプエルトリコ(C組2位)あたりということになります。日本代表は2010年大会で4位に入ったのが最高成績ですがそのときはイロコイ(現Haudenosaunee)がパスポート問題で不参加だったためトップ4に食い込めたという事情でした。

最上位グループA組が今大会は5カ国構成で、前回大会では6カ国と大会の形式は常に揺れ動きながら各国の実力に合ったベストの大会形式模索しているという有機的な大会です。前回大会の最後5位決定戦での日本対イングランド戦で日本代表が7-0とリードしたところから大逆転負け(コメント欄)を喫したということがあって、当時は5位でも6位でも次回大会には関係ないのではと書いたのですが、今大会は最上位カテゴリが5カ国制となって前回大会の最後で日本は6位となったことでA組回避。それでB組に入って勝ちまくれたのですから士気には良いのでしょう。

ルールは前回2018年大会とほぼ同じようです。五輪採用も念頭に試合の短縮化などを目指した時期もあったはずですがそちらへはルールは動かず。プロリーグで採用されているショットクロックも今大会も採用されず。よって大差の試合の最後は時間つぶしになってしまう傾向もあります。上位国の試合だけでもとか試合中の時間帯を限ってとかどういう形でかショットクロックがないとつらいかなという気はしました。

放映権を持つESPNですがESPN.comを見ると今大会の報道がまったくないようです。ジャンルとしては男子プロリーグであるPLLのページは存在するのですが世界選手権の報道はない。残念ながらスポーツ報道最大手のESPN.com視点では推すだけの魅力がないと見切られてしまった感じなのかもしれません。地味なのはそうなんでしょう。大会形式では常に意欲的に新しいものを試しているのにルールでは保守的っていうのも少し考えものかな、一考しないと外に向かってのアピールがきつくなる可能性を少々感じます。

女子ラクロス世界選手権全試合放送

アメスポ夏枯れのこの季節にESPN系列はウィンブルドンテニスを大量中継してました。男子単女子単はたぶん全試合がESPN系列で放送されていたと思います。一部のトップ選手の試合はESPNで。大半はストリーミングのESPN+でですが。ダブルスも米国の選手やカナダの選手の出場している試合はたぶん全試合放送されていたような。いつも思うんですが、ESPN系列だけでいったいどれほどのすごいサーバー群を持ってるんだろうなと感心します。

同時期にESPN+が全試合を放送しているのが今回のテーマ、女子ラクロス世界選手権です。開催地は東海岸メリーランド州で29カ国・地域(当初30カ国参加予定)が参加して開催中です。以前も書いたのですがラクロスの世界選手権は最強国を決めるための大会という意味以外に、競技の世界普及、普及初期の国のチームに与えられた数少ない力試しの場という意味合いがあります。なので大会の仕組みの上では全参加チームに優勝の機会はあるものの、下位の国が優勝争いから敗退後に参加する順位戦を丁寧に実施して参加国が多くの試合(最低6-7試合)をこなせるように工夫されています。

先週末に見ていたら朝の7AMから中国対日本の試合がライブ放送されていたりもしました。私の住んでいるところと会場は時差がないのでこの中国対日本戦は朝の7時から試合をやってるんですね。アマチュアの大会って感じが満点。
自国のチームという興味以外で純粋に観戦スポーツとしておもしろいかというと問題はあります。試合開始から一方的、中国にポゼションを与えないうち数分で日本が3−0だか4−0になって最終スコア19−1で日本の圧勝。この手の勝負にならない試合がたくさん発生するのはラクロスの世界大会ではよくある話です。ラクロスは勝ってる方が得点後の試合再開時も含めてボールポゼッションを独占し続けることもできちゃう仕組みなのがキツいです。ショットクロックもない。
各国の実力の選別が進んだ大会後半のプレーオフの段階になると実力が接近した同士の試合が増えてあまりにも一方的な試合は減ってきてもう少し観戦に耐えるようになってきます。

こういうのを見ると他競技、例えば野球にせよバレーボールにせよホッケーにせよ10カ国程度またはそれ以上が優勝国に抵抗できるだけの実力をもっているというのは立派に多国間での優勝争いが機能していると言えるのだな、普及レベルが進んでいるのだなと再確認できます。


今日土曜日が大会最終日。雨の影響でフィールドコンディションは悪かったようですが滞りなく試合は消化されて米国が優勝してます。日本代表はイスラエルとの5位決定戦に勝って大会を終了。大会形式が変わらないのであれば次回大会の最上位グループ入りになりそうです。5位フィニッシュは過去最高タイ。今大会の戦績は7勝1敗で敗戦したのは最強の対米国戦のみ、現実的に望みうる最良の成績かと思われます。おめでとうございます。全勝優勝となった米国以外ではF組から躍進したチェコが7勝1敗で7位の好成績となったのが目立ちました。
試合放映中に日本代表の9番の方がカレッジに入るまではバレリーナだったとか紹介されていたり、米代表の誰それの母親が日本人で、日本代表にも元のチームメイトがいて云々。別の試合ではジンバブエ(今回不参加)から米国へ移民した選手の方がアナウンスを担当していて、母国にラクロスを布教努力して次回大会にはきっと出場できるはずなんていう話をまじえていたり。規模は小さくアマチュア的とは言え関係者の熱心さが染み出しているような放送だったかなと。こういう手作り感のあるのもまたスポーツの良さかなと思いました。
メモとして今大会から過去イロコイとされていたチーム名がHaudenoseaunee(スペルはバリエーションあり)と変わっています。


ところで以前にラクロスの五輪種目化というテーマがあって、6人制にするとか男女同ルールにするとかやっていたと思いますが、今大会は従来のルールのまま。五輪採用となる可能性のある2028年のロス五輪まであと6年ですがいまの世界選手権で従来ルールで開催しているともう多くの国にとって新6人制で国際試合をやる機会は次回大会(未定)の一回っきりってことになりそうです。

ラクロス カレッジシーズンからプロシーズンへ

恒例のMemorial Dayのカレッジラクロス決勝戦が開催。現在カレッジ界最強となっているMarylandが前半の大量リードを保って全勝優勝。Cornellが後半に強く抵抗、追われるMarylandがガス欠気味となり最後の1分までわからない好試合となりました。最終スコアMaryland 9−7 Cornell。
昨年2021年のこの大会を見た記憶がなく、一昨年2020年はパンデミックでカレッジ春シーズン終了できずで大会キャンセル。久しぶりにカレッジラクロスをしっかりと見られる機会となりましたが、そこでこの好試合。大変楽しめました。
久しぶりに観戦して、やはり他のどのスポーツとも違う味わいがあるなとよろこばしく思いました。2日前の女子の方の決勝も少し見ていましたがそちらも最終第4Qに7点差をひっくり返す大逆転試合となり、一度流れが傾いたら点差が短時間で吹っ飛ぶ競技性は類を見ないところがあります。


ところで試合以外の部分で興味深かったのはこの放送はカレッジの決勝戦ですがハーフタイムにプロのPLLの番宣を大きく組入れ、試合中も選手のPLLドラフト指名情報など、ほぼプロPLLの話題とカレッジの決勝を混ぜた番組構成になっていたことです。カレッジスポーツの放送がこれほど明らかにプロリーグとのつながりを強調するのは珍しいです。

ESPN系列は今季から4年契約で男子プロラクロスリーグPLLの放送を開始。来週末からシーズンがスタート、放映も開始予定でカレッジラクロスとプロPLLのシーズンをシームレスにつないでいく状態になってます。現状ラクロスに興味のある人口が狭い中、カレッジの試合を使ってのプロシーズンに誘導というターゲットマーケティングは正しいのでしょう。
ただNCAAがこのような明確なプロとの融合のような放送の仕方にOKを出しているのなら新しいなと思います。それともESPN側の独断措置か。

PLLシーズンのプレーオフを含む全47試合をESPN系列で放送。ほとんどの試合はストリーミングのESPN+での放送ですが、地上波ABCで3試合(プレーオフ決勝戦含む)、メイン局であるESPNでの放送は3試合などもありある程度のラクロスになじみのないスポーツファンにも露出がはかれるようです。


プロラクロスがどれほどのコンテンツとしての実力があるのか、またここから育つのかはわかりませんが、現状アメスポ4大スポーツ、その下となるサッカーMLSがあり、その次のチームスポーツとしてラクロス、バレーボール、ラグビーが候補だという話は当ブログで何度か書いています。ラグビーはW杯開催という大仕掛けの起爆剤が2031年に仕掛けられたところ。そこに向けてピークを持っていくべく動くことになる。ラクロスは来年にSan DiegoでWorld Championshipが開催予定となってます。ラグビーのW杯とは比較にならない小規模な大会ではありますが、ラクロスの米国内の全国的な普及に向けてはラクロスが弱い西海岸での開催の大事な大会でもあります。
その2023年大会(及び今年の女子大会+男子U21大会)はESPNが全世界放映権を獲得済みだそうで、継続的に放映している男女のNCAA決勝大会に加えて、男子プロPLLの放映権契約、World Championshipの放映権獲得と今年来年とラクロスがスポーツ最大手ESPNで全方位弱プッシュされうる態勢は整ったようでもあります。

マイナー競技ではありますが4年毎のラクロスのWorld Championshipは毎大会私は楽しみに見ています。他のメジャー競技の世界大会とは異なり優勝を争う国だけでなく有機的につながった普及レベルの国もプレーする仕組みのおもしろさもある。ESPNが完全に放映権獲得ということは下位ディビジョンの試合もESPN+で放映されるんでしょうから、それをツマミ見することができるのならそれは楽しそうです。
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