アメリカスポーツ三昧

アメリカ永住コースか、または第三国に出国か!?スリルとサスペンスの人生とは別にアメスポは楽しい。

Motorsports

今日Championship 4確定 Michael Jordanのチームにも勝機

今週がシーズンラス前のレース。次週最終戦の@Phoenixでのレースで年間チャンピオンが決定します。今週のレースで最終戦に進む4名のドライバーが確定する。既報のJoey Loganoが2週間前にどんでん返しで12強段階での敗退からChampionship 4一番乗りを果たし、先週は最終ラップにプレーオフドライバー3名が入れ替わり1位に立つ激戦を制してTyler Reddickが勝利してこちらもChampionship 4入り。よって今週残っている枠は2つのみ。それを6名のドライバーが争う戦いになります。

しかしながらその6名の前日のタイムが伸びていない。6人のうちポイント最下位で今週の優勝しかChampionship 4進出の目のないChase Elliotは2位、Ryan Blaneyは3位に付けてますが、他の4人のスピードが怪しい。この段階での車体の不調はレース前からの大きな不安材料となります。

ところで表題はChampionship 4に2番乗りをしたTyler ReddickがMichael Jordanが共同オーナーを務める23XI Racingの所属だからです。先週の終盤の激戦を制してReddickがChampionship 4進出を決めて会場に来ていたJordanはご満悦。Reddickは3週間前の12名から8名への足切りレースでぎりぎりのポイント争いをしのいで8強進出を果たしたんですが、8強シリーズの第2戦で勝利してChampionship 4進出。Michael Jordanにとっての初のNASCAR制覇が1/4の確率で手の届くところまで来てます。

Jordanは次週の決着戦が@Phoenixであることにもごきげん。JordanがChicago Bullsでの前期3連覇をしたときに@Phoenix Sunsの敵地で優勝を決めた故事(1993年)を持ち出してゲンが良いなどとうそぶいてます。

それ以外にももしTyler Reddickが優勝してしまうと来季のNASCARがディフェンディングチャンピオンなしで来季をスタートさせる可能性が出てくるところも見ものです。NASCARが強要したとされる来季の出走権を巡る合意書に23XIは署名をしておらず、来季の出走権が確定していないためです。その後法廷闘争に突入している。まだNASCAR側からの反論は出ていない段階で、また23XI(とFront Row Motorsports)が裁判所に求めている係争中の暫定的な出走権の確保についても裁判所の判断は出ていないため、もしReddickが次週勝ってNASCAR Cupシリーズチャンピオンとなっても来季出場ができるかどうかわからない。
こういう混乱は傍目には楽しいので来週のChampionship 4はReddickを応援して放送中にも何度も顔が抜かれるであろうJordanの姿でも楽しもうかと思っています。

先週敗退したはずのLoganoがChampionship 4一番乗り

NASCARのベスト8が開始。先週のレースが終了時点での順位で9位となり足切り対象となったはずだったJoey Loganoがレース後の失格者の発生で繰り上がりベスト8入り。先週のLoganoの車体は終盤のスピードが乗らずじりじり順位を下げて敗退になったはずが、レース後数時間で逆転ベスト8進出へ。失格したAlex Bowman側が自陣営のミスを認めてNASCARの下した処分が確定。

一度は諦めたはずのベスト8ラウンドの初戦でその繰り上がりのLoganoが終盤の最後の給油ピットを取らずに勝負。その戦術が奏功して、給油したチームのうちの最上位最速だったChristpher Bellが迫るのを抑えきってLoganoの勝利。シーズン最終戦のChampionship 4への進出一番乗りとなってます。一週間前のこの時刻にはベスト8進出失敗で残念モードだったのが、今は唯一のChampionship 4出場確定ドライバーというどんでん返し。

Bellの車体はこの日最速なのは明らかで最終給油ピットまでもトップを維持。全車がピットインすればBellの楽勝だった可能性の高いレース展開でしたが、LoganoとDenny Hamlinのプレーオフメンバー2人を含む4台がピット回避・を選択して燃料セービングモードで上位を目指すことを決意。その4台を追うBell。毎周回辺りざっと1秒のスピードの差を縮められればラス前ラップ辺りでトップに立てる計算で残り20周強。ただしこの日は周回遅れの車が多く微妙にあちこちで細かくBellのスピードが削がれ、計算通りに追いつけず、Bellは2位でフィニッシュ。
LoganoにせよHamlinにせよおとなしくピットインしていたら10位以内確保も危なかったので勝負に行ったのは勝ったLoganoはもちろんHamlinも好判断ということに。Hamlinの車はレース序盤から車速が出ずステージポイントも一切加点できない苦しいレースだったのをなんとか8位フィニッシュできたのは陣営のファインプレーでしょう。現時点ではHamlinはChampionship 4を目指すポイント争いでは27ポイント足切りの下ですが。


ちなみにレース後の失格でプレーオフから排除されたBowmanは失格当日自宅で失意。しかし容赦ない次々とかかってくる電話(マスコミ取材その他)にいらついて自分の携帯を自宅プールに叩き付けたとか。それが今の携帯ってある一定以上の衝撃があると自動車事故・転落事故その他を想定、自動的に911(日本の110・119番に相当)に電話をかける仕組みになっていますよね。で警察消防がBowman宅にやってきてしまいイライラもおちおちできないという失格の顛末だったようです。

プレーオフ8名への足切りレース後に失格者が発生

NASCARのプレーオフが進行中。昨日のレースはドライバー12名から8名への足切りのレース@Charlotte Rovalでした。リアルタイムでプレーオフポイントがアップデートされてレギュラーシーズンチャンピオンだったMichael Jordanの23XI Racingの45番Tyler Reddickが終盤に猛チャージ。プレーオフ獲得ポイントで足切りの下9位から順位を上げて8位だった22番Joey Loganoを逆転して次ラウンドへ進出。Loganoも惜しかったんですが車速が上がらず、前との距離、後ろにロードコースに強いShane van Gisbergenらに着かれてポイントをアップする機会は乏しく残念ながらここで敗退となりました。

現在のプレーオフ形式になってからレギュラーシーズンチャンプがベスト8に進出できなかったことはなく、Tyler Reddickはその初のケースになりかけのところからのまくりで汚名を回避してます。一方レース後のLoganoはいつもどおりではありましたがやるだけやった感のあるインタビューの受け答えでした。プレーオフでの強さで知られるLoganoですが今季はいろいろ苦しかったですね。

緊張感はあって好レースで楽しめました。
でそれはそれで次週だなあと思っていたらレース後にニュースが入ってきて、ベスト8進出を決めていたAlex Bowmanの車体がレース後の検査で最低車体重量に満たなかったとNASCAR側から発表。それに伴いBowmanのベスト8進出は取り消し。よって繰り上がりでLoganoがベスト8進出とのこと。Bowman陣営は抗告ができるのでその結果が数日内に出るまでは確定ではないものの現時点ではLoganoが代わってベスト8進出、史上最多のベスト4進出の可能性を残したことになってます。

レース後の検査トラブルはしばしばあることで、今季のレギュラーシーズン終盤にはDenny Hamlin陣営がレース後に車体をNASCAR検査に送るのを「忘れた」とかいうよくわからないミスがあってHamlinのポイントが大きく引かれるという事件もありました。それまではHamlinはプレーオフにも加算されるレギュラーシーズンのポイントで上位にいたのがこの事件でのポイント剥奪でいきなり苦しいポジションに下降したりしてます。

NASCAR側のBowman失格の発表はドライバーたちは既に会場から去ったあとのことなのでLoganoのコメントは出てないですが、あの残念そうな顔して喋っていたのが急転次週もプレーオフ生き残り。次週のプラクティスの日に報道陣に囲まれてニコニコして喋るLoganoを想像するとちょっと楽しいです。

結果としてJordanを呼び込んだことが

アメスポ4大プロスポーツがひしめく中、準メジャーのNASCARのプレーオフも残り5戦と生き残りに差し掛かっています。週末のレースではNASCAR史上台数で最大の28台を巻き込むビッグワンが終盤に発生する混迷のレースだったりしました。高速コースのSuper Speedwayはこれが怖い。ドライバーの腕よりも運任せの面のあるSuper Speedwayをプレーオフに組み込むことの是非はプレーオフの押し詰まった時期でないので許容範囲でしょうか。

レースの放送中にもさらっと触れられていましたがMichael Jordanが共同オーナーを務める23XI Racingと Front Row Motorsportsの2チームがNASCARを違法な強権的行為その他で訴えて法廷闘争に臨むことになっています。
以前にもチーム側とNASCARがモメていることは何度か書きました。その後NASCAR側が最後通牒をチーム側に突きつけて上記の2チーム以外はしぶしぶなのかどうなのかわからないですが契約を更新、来季の出走権を確保しています。原告となった2チームは契約更新を拒否。NASCARの独占による優位な立場を濫用していると訴えているのとともに、法廷闘争をしている間の暫定措置として来季の参戦を認めるように裁判所に申し立てています。

NASCARの御用マスコミからはこの訴訟について猛烈な拒否反応が出ていたり、過去に原告側弁護士を取材したNASCAR所有のラジオ局は一旦そのインタビューを放送した後に局のアーカイブから削除して視聴者がオンデマンドで聞けなくしたりと強い嫌悪感を隠していません。オンデマンドについては削除したことがSNSで拡散した後にまずいと思ったのか再び聞けるようになっています。

その原告側の弁護士というのはJeffrey Kessler。この方はNFL、NBA、MLBの各選手会をクライアントとして持っており、また米女子サッカー選手の対米サッカー協会の闘争でも強い役割を果たし例の男女間の賃金格差闘争で選手側の勝利を勝ち取った法曹チームの方です。

つまりはMichael Jordanが連れてきたスポーツ争議での選手側を弁護する最上のスペシャリストということになります。JordanがNASCARオーナーとして参戦したのは2020年、レースに参加し始めたのは2021年冒頭から。当時は
「知名度抜群のMichael Jordanの参入はNASCARにとっても大歓迎のようです。NASCARは既にアメリカのモータースポーツで最大の組織ではあるもののマーケットはほぼアメリカ国内限定で、かつ米国内でも人気のある地域が偏っています。アメスポ全体のジャンル別順列だと7−9位程度。そこに正真正銘のアメスポのスーパースターが参入することでのアメスポメディア内でいままでなかった形の露出アップが期待できる」

と思っていたのですがこうなってみるとNASCARを家族で所有するCEO Jim Franceから見ればメジャースポーツ他ジャンルの契約習慣までNASCARに流れ込んでしまい70年以上家族経営してきたNASCARに法的なメスが入ることになったとも言える事態でもあります。
NASCARの御用マスコミは「たった4年半前に参入した新参が70年以上の歴史を持つ体制を捻じ曲げようとしている」と口を極めて批判してます。ただし御用マスコミは法的な争点については一切議論しておらず、たぶん意図的に避けている。そういう意味で逆にNASCAR本体の強い危機感も感じられます。

アメリカの大物弁護士の料金というのはやたら高い(1時間当たり$2000とか)ので中規模チームの23XIやFront Row(それぞれCup戦2台態勢)だけでそのコストを負うのはリスクが高い。Jordan個人はお金持ちですがそれでもこの闘争費用は安くない。Jeffrey Kesslerが出しているコメントによれば勝算はごく高いかのように言ってますから弁護士費用は後払いでごっそりNASCARから取る目算でこの訴訟を引き受けた可能性もありそうです。訴訟に勝った場合のみクライアントの支払い義務が生ずるという弁護契約は訴訟の相手が大きな企業だとしばしば行われます。

NASCARは訴訟に応えるために60日間の猶予があるためたぶん今季シーズン中にはこの件は進展しないと思われますが、それまでは原告2チームの来季の出走権が確定しないという不安定な立場となる可能性もあります。そうなれば両チームのスポンサーも困るわけで原告側としてもギャンブルになる。暫定出走措置だけでも早く決まって欲しいところでしょう。

NASCARが批判に耐えきれず制裁発表

最終ラップにトップのJoey Loganoをスピンさせ、次いでインを抜けていったDenny Hamlinのテイルも故意にひっかけて3番Austin Dillonがレースの勝利を得た先週末のレースに珍しくNASCARがペナルティを発表しています。

レース自体はそのまま成立、Austin Dillonのレース勝利およびそれに付随する賞金・トロフィーなどもDillionは維持。ただし通常ならレギュラーシーズンのレースの1勝はプレーオフ進出が確定しますが、この勝利によるプレーオフ進出は認めないという制裁となってます。またDillionチームのスポッター(無線でドライバーと常時連絡する役)が「Wreck it! Wreck it!」と故意の接触でHemlinをスピンさせる指示を出していた音声が確認されたためそのスポッターは3レースの出場停止。今季のNASCARはレギュラーシーズンがあと3戦なのでスポッターは今季のレギュラーシーズンには関われないことに。

それとは別に故意のスピンでレース優勝を奪われてブチギレだったJoey Loganoが、レース後にAustin Dillonのピットエリアに行って怒りの示威行為をしたことに対して$50,000の罰金が課されました。

普段腰の重いNASCARにしてはスルーせずに制裁は加えたことは珍しい。NASCAR専門メディアだけでなく一般スポーツマスコミでも取り上げられていただけに何か制裁をせざるを得なかったようです。確かにレースの翌日となった月曜日はスポーツネタが乏しかったせいもあって一般スポーツマスコミ・スポーツトークショーもこぞって報道してましたからそれが圧力になった可能性は高い。

Austin Dillionはこの勝利でのプレーオフ進出は否定されましたが、プレーオフ進出のすべてが否定されたわけではなく残りのレギュラーシーズン3戦のいずれかで勝利すればプレーオフには出場可能です。出たところでLoganoとHemlinに恨まれているのでレース中どこで引っ掛けられるかわかったもんじゃないレースの連続になりますが。

レース勝利はそのままとされたことで今季2勝目が目前だったLoganoは1勝のまま。LoganoとDillionがからまっている隙に抜け出して今季4勝目が目前に開けたHemlinの勝利も消えて3勝のまま。4勝だとトップのKyle Larsonに並んで勝利数でトップ。NASCARのプレーオフの仕組みではレギュラーシーズンのポイントは持ち越しになって各ラウンドの順位争いに関係する。LoganoもHemlinも損をしたままでその部分はNASCARは放置したことになります。

Dillionの所属先のRichard Childress Racingは控訴すると息巻いてますが、「ぶつけろ!」とスポッターが言ってるのが音声で残ってるのになにを息巻きたいのか。記録上の勝利はDillionやチームの通算勝利数に加算されるのだし、賞金も貰えるのになにが不満なのか。私が読んだ制裁リストでは対Richard Childress Racingの罰金はないみたいですからあの無茶なドライビングのおかげでお金は儲かってる。今季32位(から先週末のポイント加算で31位へ浮上)、元々今季は失敗シーズンなので優勝賞金が儲かっただけでも良いじゃないかという気がします。

ブチギレのLoganoの方がお金の面では優勝賞金は逃すは罰金は食うわでよほど損しているわけで。Loganoの示威行為への罰金はもっと高い可能性も予想されていましたが、事情からブチギレる気持ちもわかると斟酌して比較的穏当な罰金額になったようにも見えます。

なお数年前から採用されている現行の通称Next Gen車体は前宣伝通り堅牢でこういう無茶なレースをやってもけが人は出てません。

Loganoブチギレ この接触での勝利はアリなのか

パリ五輪の裏でNASCARが再開。再開いきなりのレースが大遺恨のフィニッシュとなってます。最終ラップでトップの22番Joey Loganoを追う3番Austin Dillonが最後のコーナーでテールを引っ掛けてLoganoをスピンさせ、その内側から抜けようとしていた11番Denny Hamlinも返す刀で弾き飛ばしてフィニッシュ。当夜時点では反則はとられずAustin Dillonが勝者となってます。

スピンさせられたLoganoはレース後ブチギレ。当然でしょう。NASCARは車体の接触は許されているコンタクトスポーツです。最後の競り合いで車体がともに接触、押し合いながらフィニッシュラインに飛び込むのはNASCARの特殊な醍醐味ですが、今日のこれはさすがに一線を超えてるように見える。Dillionは通常のランでは抜けない差があるのでコーナーでLoganoを回すつもりでスピードを落とさずに突っ込んだように見えます。

ポイント状況で言うと16枠のプレーオフにはシーズン中に1レースでも勝てばイン(17名以上勝者が出る可能性もありますからその場合は事情が変わりますが現実的にはそういうケースはこれまでない)。Loganoはもう今季1勝しているのでプレーオフには進出できますが、プレーオフに入ってからの立場もあるから2勝目も当然欲しいところ。Austin Dillonの方はポイントランキングではとてもプレーオフに届かない30位前後だったところで、つまりは今日を含め残りのレギュラーシーズンのレースでの勝利のみがプレーオフへのチャンスだった。そういうのもあってこれが今季唯一のチャンスだからと博打に行ったということでしょう。

NASCAR幹部は「あらゆる映像・音声・データを精査してペナルティがあるなら火曜日に発表する」としてます。ただし「歴史的に言ってレースの結果を変えることは過去ほとんどない。でも精査してから」とも言ってますからこれが通ってしまうのか。
いまは各車の操舵操作の詳細がデータとして残っているのでドライバーの意図はデータからかなり読めるはず。よってDillionの最終コーナーでの尋常でないスピード超過は明らかになりそうなんですけど、それを反則とするかどうか、反則だとしてどのようなペナルティを与えられるものかは不明。

反則なしで通してしまったらAustin Dillonは確実にLoganoから報復を受ける。それもプレーオフに入ってから。NASCARもそれはわかってるからLoganoに事前警告もするでしょう。Logano陣営が自重して今季のプレーオフで報復しなければ来季にやるでしょう。遺恨確実。
と言って勝利取り消しとして誰を勝者とするか。

このフィニッシュでのもう一人の被害者のHamlinの方はレース直後はあまり怒っていない。ライブの最中は何が起きたかわからなかった模様です。Hamlinは今季3勝でランクでも2位につけておりその面でも余裕があります。

苦し紛れでリアリティ番組をボイコットか

この週末のアメスポ関連で一番おもしろかったのはWWEのPLE Summer SlamでのDominik Mysterio最低男ぶりだったんですが、それはほとんどコメントを付け加えることがないぐらい完璧にサイテーで、書きたい気もするものの文章がうまく書けません。なのでその話題は書くのを諦めてNASCARの内輪もめの話にしたいと思います。

NASACARの本部と参戦しているチームとの間の収入の分配の交渉が進んでいないことは1ヶ月ほど前に書きました。現在はNASCARは放映権を持つNBC系列が五輪放送に全力投球中でもあり夏休み中。このタイミングではなにもないだろうと思っていたら、意外にもこんな時期でもモメているという話が浮上しています。

Netflixで放映している「NASCAR: Full Speed」というリアリティ番組があるんですが、チーム側がこれへの出演をボイコットする構えを見せているとか。交渉がろくに進んでいないし、以前にも指摘しましたがざっとの話NASCAR本部の方が交渉が有利な立場であるため、チーム側としては交渉に使えるカードとしてNASCAR: Full Speedへの出演を辞める可能性をちらつかせているという話になってます。

アメリカのストリーミングサービス中、加入者数で最大のNetflixはスポーツが苦手。Netflixは元々貸しビデオ屋からスタート、進化していまのビジネス形態になっている。映画やTV旧作が元々の得意分野だったためスポーツコンテンツは弱点であり、遅ればせながらそちらもケアしようとWWEと大型放映権を結んでみたり、来月に放映されるホットドッグ早食いの伝説のチャンピオン対決を企画してみたりしてます。WWEにせよ早食いにせよスポーツかと問われると微妙なのですが、Netflix的にはスポーツ寄りのコンテンツでしょう。

そういうところでNASCAR: Full Speedも放送されていると。それなりに好評なようです。私は見たことがない。これまで一番番組に協力的なのがMichael Jordanが共同オーナーをつとめる23XI Racingなんだそうです。同番組での露出も23XI Racing関連の選手・オーナーが目立つのだとか。

一方23XI RacingはNASCAR本体との交渉について公に批判的な発言をするチームでもあります。Michael Jordanも盛んに発言をしていて「こんなことをしていたらNASCARは死ぬ」と過激発言もしています。ただNASCAR自体がニッチジャンルなのでJordan的には過激発言のつもりなんでしょうがNASCARファンの外にはそんな発言も届かない。NASCARファンの間でもそんなレース以外のことを気にしてるかどうか疑わしい。NBAのレジェンド、アメスポのレジェンドでもNASCARという異郷に入ればただの後発レーシングチームの共同オーナー。その上NASCARは白人度がやたら高いのでJordanは異端。

ついでに23XI Racingのドライバーであり現在唯一のCup戦の黒人ドライバーであるBubba Wallaceも異端。その辺の黒人をBlack Lives Matterで荒れた時期に擁護したもう一人のオーナーのDenny Hamlinは南部の古いタイプのNASCARファンからは憎悪の対象となりレースの現場ではブーイングばっかり浴びている。23XI Racing自体がNASCAR内で孤立しがち。
ところがその方がNetflix辺りで非NASCARファンに露出するにはちょうど良いようでもあります。

とまあそういう難しい立ち位置の23XI Racingが、NASCAR: Full Speedボイコットという新手を考え出したのではないかという憶測ができそうでもあります。

一番モメてるのは当面のカネの分配もそうですが、チャーター(出走権)を現行チームに7年間(新放映権契約期間にマッチ)に限って与える=7年後以降はまたチャーターをチーム側が買わなくてはいけないという仕組みをNASCARが譲らないところです。
他のプロスポーツならそれぞれのチームをオーナーが所有してそれは保有資産なわけですが、NASCARが今主張しているのはチャーターは期限のあるライセンスだという。資産ではなく時が経てば消えてしまうモノだと。チーム側からしたら譲れないのはわかるんですが、譲らないとどうなるかの緊急落とし所もないんですよね。
そんな事態の中、チームオーナー側がほとんどない交渉のチップとしてNASCAR: Full Speedボイコットを編み出したのではないかという話です。23XI Racingが主導してその案を編み出したのではないかというのは憶測の域を出ませんが。

NASCARはバイデン撤退ニュースを退けて地上波放送維持

NASCARのCup戦@Indianapolis Motor Speedwayが開催。ちょうどこのレースのスタート直前のタイミングで大統領が選挙戦から離脱という速報が入り放送がつぶされるのかな?と心配でしたがNASCAR放送はそのまま。他のチャンネルだと女子ゴルフを放映予定だったCBSは政治特番に差し替え。FOXも緊急特番ですね。NASCARは無事NBCで放映でした。そのまま全編放映できそうだったのですがレースの最後の3周の時点で多重クラッシュが続いてレースの終了時刻が伸びて午後6時を過ぎることになり、6時というのはアメリカ的にはニュースの時刻として定着しており、NASCAR放送の方は「今日起こったニュース報道のため6時からは(系列ケーブル局の)USA Networkに移動します」として地上波放送は打ち切りになりました。
NASCARファンは共和党支持者との重なりが大きいからでしょう、「今日起こったニュース報道」が民主党側の大統領候補の交代というのは放送内では一切言わずに。政治に関わる話をすると荒れるので言わないってことですね。

最初にNBCがNASCAR放送を強行したのは、次週から始まる五輪の独占放映権を持つ局で五輪のヘビーローテーションな放映態勢に入る直前。なのでNASCARは向こう3週間は脇に寄せられる。その直前週のレースである今日のレースの地上波放映はNASCARにとっては重要で急な事情では外しにくい契約になっていたかもなと。先週のトランプ銃撃事件ほどバイデンの離脱はセンセーショナルなニュースではないですし。

でも最後のUSAへの移行するときに「今日起こったニュース報道」として口が裂けてもバイデン絡みだとは言わないところを見て、あーこれはもしバイデンの大統領選挙からの撤退が理由でNASCARの放送をやめていたら大半の共和党支持者の視聴者ファンからバイデンごときで我々の楽しみを奪うのか的な総叩きに合う可能性があったからか、と考え直しました。とってもありそうです。


レースの方は最後の最後で上位のうち1位Brad Keselowskiがガス欠寸前、2位のRyan Blaneyもカツカツ。Keselowski陣営はギャンブルで給油せず勝利を目指していたんですが、終盤の立て続けの事故のイエローフラッグで周回が増えた(NASCARのルールで延長戦でレース再開後3周で決着)ためリスタートの時点で諦めてピットイン。リスタートの直前にピットに舵を切ったためKeselowskiの真後ろにいた第2列のKyle Larsonが最前列に移動。2位だったBlaneyはKeselowskiがいなくなった瞬間に1位に繰り上がったはずでリスタートを始動できる立場になったのですが、Keselowskiの離脱を予想できていなかったようでリスタートのダッシュに失敗。第1列に急遽繰り上がったLarsonが即トップに立ってそのまま逃げ切ってます。

道中も今季際どい競り合いが目立つLarsonとDenny Hamlinが終盤に直接抜き合いになったりなかなか楽しいレースでした。

NASCARチャーターバトルが決着つかず後半戦へ

NASCAR版の労働争議に近い契約問題がこじれています。今季を最後に現行のカネの分配ルールが期限切れ。来季の見通しが立たないままで今季の後半戦に向かうことになっています。混沌としていて着地点が見えない。NASCARという準メジャージャンルのため大手スポーツマスコミからは注目されないままで危険水域に入ってきているようにも見えます。

まず大雑把な状況から。NASCARは昨年から順調に2025年シーズンからの7年間の放映権契約を締結。これまでのシーズン前半をFOX系列が、後半およびプレーオフをNBC系列が放映するという態勢から大幅にグレードアップ。FOXとNBCに加えて夏場にAmazon Primeが5週間、TNTが5週間の短期集中で放映をするという4局態勢へ。下部シリーズのXfinity Seriesも別途地上波のThe CWが放送となりそれも含めると現在の2局態勢から5局態勢へ拡充。個人的にはこの放送態勢は目先が変わって良いのではないかと思っています。
それでNASCARが得た総額が7年$7.7 Billion。NASCAR自体の人気は00年代に既にピークを打ってるのですがそれでも好舵取りでアメスポ準メジャーとして収入面では好ポジションを確保しているというふうに見えます。

それでNASCARへ入るお金は決着しているのですが、そのお金をNASCAR本体・各チーム・開催レース場へ分配する分前の交渉が膠着していて現行の契約があと4ヶ月ほどになってもまとまっていない。チームとNASCAR本体の意向の隔たりは大きく歩み寄りの様子も見られず過去最悪の険悪な状態であるともされます。

それに嫌気が差したのか大手のStewart-Haas Racing(SHR)が今季を最後にNASCARから撤退すると突然表明。手持ちの4枠のチャーター(出走権)も売り払う意向と伝えられたのが1ヶ月ほど前。2023年にはチャーターが$50 millionほどで売買されていたのが、急にSHRの廃業でチャーターが大量に売りにでることになり価格が半額かそれ以下に下がっているとされます。一度に4枠も出せば値が下がるのはSHRもわかっていたでしょうがそれでもNASCARから撤退という大きな決断をしたのですから、SHRから見てNASCARとの交渉がさらにこじれてチャーターの価値が半額以下に下がっていく未来を悲観したという可能性もあります。

人気絶頂とは言えないまでも安定した人気を維持しているNASCARだけにチームとの交渉が来季開幕までにまとまらずシーズン冒頭の大レースDaytona 500のスケジュールに影響が出るようなことは避けたいはずですが双方の主張は平行線で夏まで来てしまってます。

現行のカネの配分はNASCARの収入の10%をNASCAR自身が、レース場が65%、チームが25%という配分になってます。但し開催されるレース場の多くはNASCAR自身が所有しているレース場なので実際はNASCAR自身の取り分は10%どころではない。
チームの取り分を増やすという方向ではNASCARも同意しているがその増額幅でチーム側と大きく隔たりがある上に、チャーターの有効期限を新放映権契約と合わせて7年間に限るとしているのがチーム側が受け入れがたい点となっています。

もともとNASCARのチームは儲かっていない。チームの年間予算に占めるチームのとってきたスポンサー契約は9割とされ、つまりNASCARからの分配金(ざっと1割)だけでは経営はまったく成り立たない。こんな構造では続けられないというのがチームの言い分で分配金を増やせと。しかしその増額の幅で差がある上に7年後にはチャーターを取り上げられてしまうかもしれないという交渉なのでとてもチーム側は同意できないってことなんですね。

比較として野球MLBだとざっと各チームの予算収入に占めるスポンサー契約は10%程度とされます。入場料収入やら物販、放映権料やらがメイン。NASCARはそういう仕組みになっていません。モータースポーツはスポンサーに頼る面が強いのはNASCARに限らないんでMLBみたいにはけっしてならないのはともかく9割をチームの自助努力のスポンサー獲得でというのはしんどい経営ではあるんでしょう。NASCARの方が年間収入が$1.1 Billionという景気の良い話があるのでその分前を我々にも回せというのはまっとうな交渉かなあとは思います。

アメスポではしばしば労働争議が起こりロックアウトやストが起こってきたわけですが、そういう労働法に基づいた紛争処理がNASCARとチームの場合には適用されないという点でチーム側に不利という側面もあるようです。各種労働法や労働争議法は労働者の権利擁護のためにある法律ですが、今回のNASCAR対チームの争いには守るべき「労働者」が存在していないんですね。企業対企業なので。なのでチーム側は出走を取りやめた場合に労働者がストをしたときのような法律上の保護が期待できないらしい。そうなるとカネと運営権を握ってるNASCARが圧倒的に有利な交渉になってしまうとかなんとか。

その辺りまでの先も睨んでSHRはこりゃダメだと急遽今季中のNASCAR離脱を決めた可能性もあります。昨年の相場よりは安くてもいまならチャーター1枠当たり$20-$25 millionぐらいでは売れそうだ。チームとNASCARのいざこざがさらに悪化すれば将来チャーターが無価値に近くなる可能性だってなくはないという読みもありうるんですよね。

まさかNASCARも突っ張りきってカタストロフィを招くような交渉はしないと常識的には思えるんですが昨年中には妥結すると言われていた交渉がいまに至っても乖離が大きいとなるとこれは本当に交渉期限ぎりぎりの時期までチキンレースをするつもりを決めているのかもしれない。
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